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クリスが席を外してからもナナは客席から他の選手の活躍も見続けていた
あの警察官は町ですれ違った、とか道端で取締りをしていたな、と見覚えのある顔も何人かいたのだ
その時ドミニクが現れてナナは心臓がドキリと鳴った
彼もなかなか男前でファンがいるのか女の子何人かが悲鳴を上げた、ドミニクはそれに答えるように手を上げる
そして銃を構えるとクリス程ではないのだがちゃんと的に命中しており彼も2回戦への切符を手に入れた
すごい、とナナが見ていると彼がこちらを向いて手を上げてきたのだ
何故自分がここにいることがわかったのだろうか?いや、自分は彼とはもう何の関係もない。ナナは立ち上がってその場を抜け出した



「何なのかしら…さっきの…」

まるで自分の恋人と同じように手を振ってきたドミニクに混乱していた
クリスはちゃんと話してくれたのだろうか?真面目な彼の事だきっちりと決着はつけてくれているはずだ
それともただの悪ふざけなのだろうか?

「どうして無視するんだい?」

後ろから聞こえた声にナナは慌てて振り返るとドミニクが立っていた
ドキドキとなる鼓動を抑えながらべつに、と顔を背けた

「クリスと付き合ってるんだって?」
「…そう、よ…知ってるのよね?」
「……あぁ合コンの次の日にクリスに言われたよ。ナナと付き合うことになったからって……でも手を振り替えしてくれるぐらいはいいんじゃないか?浮気じゃないんだし」
「私はクリスを応援しに来たの、貴方を応援しに来たんじゃないわ」

これ以上この男に構う必要はないだろう、とナナは客席に戻ろうとした時だった
ドミニクが彼女の手首を掴んで壁に押し付けるとそのまま唇を塞いだ

「!っん……いやっ!!」

パンッ!
乾いた音が廊下に響き渡る、ナナがドミニクの頬を叩いたからだ
彼から逃れようと走り出した彼女の背中にドミニクが声をかけた

「クリスに言うのか?あいつは真面目だから君の仇を取ろうと俺を殴りに来るだろうなぁっ!!けどそんな事したら射撃大会も仕事もなくなるだろうなっ!!」
「っ…!!」

構わずにナナはその場を走り去る、ドミニクはふんっと鼻で笑うとその場を去った

がむしゃらに走り続けて角を曲がったところで偶然にもクリスとぶつかった
ぶつかった相手がナナとわかったクリスは微笑んだ

「走ってたら危ないぞ」
「クリス…!」

ぎゅう、と力強くナナはクリスに抱きついた
彼女からの力強い抱擁に少々驚いていたのだが自分を求めてくれているのだとクリスは嬉しくなり同じように抱きしめ返した

「どうしたんだ?ナナ」
「……なんでもない、1回戦突破おめでとうクリス」
「ありがとう、そろそろ2回戦が始まるんだ…客席まで送るよ」

クリスから離れると一緒にさっきの場所まで戻った
先程ドミニクにキスをされた廊下まで戻るとナナは思い出して胸が痛んだ
何も知らないクリスは口を開く

「じゃあ俺は行くよ」
「……クリス」
「ん?」
「私……」

ドミニクにキスされたの
という言葉が出掛かって彼女は口をつぐんだ
もし言ってしまったらどうなるだろう?ドミニクの言うように怒りを露にして彼に殴りかかりに行くだろう
そうなったら射撃大会どころじゃなくなって問題になってしまう

「どうしたんだ?」
「………私、クリスが優勝する所を見たいから…"何があっても"必ず優勝してね」
「何だよ、優勝するって約束しただろ?大丈夫だ」

優しくナナの頭を撫でるとクリスはそのまま彼女の唇を塞いだ
煙草の味がする、だけど今は苦くも何ともないクリスのキスだ
離そうとしたクリスの後頭部を押さえつけてナナはより深く長いキスを自分からした
ようやく離されてクリスは驚いたように彼女を見ていたが嫌ではなかった

「頑張ってねクリス…」
「ナナ…?」

客席へと戻っていく彼女を見つめながらクリスも準備をしようと会場へ向かった


121201


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