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「クリス」
「ジル」

ドミニクに事情を話してきたクリスは自分のオフィスへ戻ろうと廊下を歩いているとジルに声をかけられた
彼女の方を見れば何やら怒ったような顔でこちらへ向かってきていた
そのままジルはクリスへと詰め寄ると彼の頬を思い切り抓った

「ジ、ジル!?」
「どういうこと?」
「な、何がだ?」
「…ナナと付き合ってるんですって?」

そう言うと彼女はクリスの頬から手を離して腕を組んだ
そういえばジルにはもうナナの事は諦めたと言ったままだった。しかし付き合い始めたのは昨日なので報告しようとは思っていたのだ

「どうして知ってるんだ…ちゃんと言おうと思ったよ…」
「さっきドミニクに言ってるところ聞いちゃったのよ。何よ、私にはもう諦めたって言ってたくせに……全部説明してもらうからね」

彼女の凄みのある詰め寄り方にクリスはわかった、と観念したように言って一度オフィスに戻ってからすべて説明する事にした


* * *


「ふーん…全部クリスの誤解だったわけね」

呆れたように言うジルにクリスは何も言えなかった
全部自分の誤解だった事は事実だからだ

「私もナナに兄がいるって事ちゃんと伝えるべきだったわね」
「いや…ジルのせいじゃ…全部俺が悪いんだ」
「……まぁいずれにせよ付き合えたんだからよかったんじゃない?」

そこでいつものジルの微笑が出た、クリスもつられて同じように微笑んだ

「大事にしなさいよ」
「あぁ」
「おいクリス」

話をしているとバリーが入ってきた
どうした、と尋ねれば彼が自分の拳銃を出してニヤリと笑った

「もうすぐ署内の射撃大会があるんだが…お前出るだろ?射撃の腕はお前が一番いいんだしな」
「あぁ、もちろんだ!」
「そういえば今回は一般の人たちにも公開するんでしょ?ナナを呼んだらどう?」
「え…?」
「ナナって花屋の娘か…?いい機会じゃないかクリス、惚れさせるチャンスだぞ」

ナナを呼ぶ
改めて思う、もうナナは自分の彼女なのだから呼んでもおかしくない
彼女が来てくれる自分の得意な事を見てもらえるというのは嬉しい事だ

笑うバリーにジルは首を横に振った

「違うわバリー、ナナはもうクリスの彼女なの。もう惚れてるわ」
「そ、そうだったのか…」
「どちらにしろ仕事が終わったら誘ってみるよ」



* * *

仕事が終わったクリスは車でナナの店へと向かった
店に着いて中に入ってみれば奥で花の手入れをしている彼女の姿が見えた
ナナはクリスの姿に気がつくと微笑んで手を振った

「お疲れ様クリス、仕事終わったの?」
「あぁ早く終わらせてきたんだ」
「そう、コーヒーでも飲む?」
「頼むよ」

コーヒーを淹れに奥へと入っていったナナを見送ってからクリスは近くの椅子に腰をかけた
彼女の店に来るたびに思うが、本当にいい匂いがする
花なんて男の自分には無縁な物だったのだが…
カップを持ってきたナナがクリスに渡す、お礼を言って彼は受け取った

「さっきジルから電話があったの」
「え!?な、なんて…?」
「えーと…クリスは頼りになるけどちょっと抜けてるからよろしくね、って…」

ジルのやつ、とクリスはコーヒーに口をつけた
ナナはふふっ、と笑った

「何でも完璧すぎる人よりはちょっと抜けてる方が可愛いよね…逆に私の方がクリスとは釣り合わないんじゃないかって思うけど」
「そんな事ない…俺の方が釣り合わないんじゃないかって思う。君みたいにモテる女の子が俺みたいなのと…」
「…クリスは優しいじゃない、私初めて会ったとき彼女いるんだろうなって思ってたよ。だから合コンで貴方と会った時ちょっと驚いたし…ドリーに詰め寄られてる貴方を見て嫉妬もした」
「ナナ……」
「誤解したり嫉妬したり…似たもの同士ね、私達」

そう言って笑うナナにクリスも同じように微笑んだ
そして益々彼女が愛おしくなった
ふとクリスは自分がここにやって来た目的を思い出して口を開いた

「今度の日曜日…空いてるか?」
「日曜日?」
「あぁ…実は射撃大会があって俺出るんだけど…一般の人たちも見れるからナナもどうかと思って…」
「クリスが出るなら行かないとね」
「!あ、ありがとうナナ…俺、君の為に優勝するから」
「…期待してる」

クリスはナナを抱き寄せて唇を重ねた


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