08


クリスは内心混乱していた
よりにもよって会いたくなかった相手とまさかここで出会うなんて
驚いて見つめあっている二人にケビンが声をかける

「なんだよクリス、知り合いか?」
「あ…その…」
「えぇ、お店にも来てくれた事があったわ」

戸惑うクリスの代わりにナナが答えた
それに周りが頷くとケビンが始めるぞー、と声をかけた
ナナは微笑んでクリスの正面に座るのだが彼はとても複雑だった
彼氏がいるのにどうして合コンに参加しているのだろう、しかもよりによって自分が参加しているこの合コンに

「じゃあ自己紹介ねー私がコニー、こっちがドリー」
「よろしくね」
「そして…奥がナナよ」
「うんうん、みんな可愛いじゃねぇか」

デレデレとしながら頷くケビン
女子の自己紹介が終わると今度はケビンが自己紹介をする

「俺がケビン、でこっちがドミニク…そして奥がクリスだ」
「警察官なんでしょ?悪い人を捕まえたことあるの?」
「そりゃな!」

かっこいい、と盛り上がっているのだがクリスとナナだけは取り残されてしまった
なんて声をかけたらいいのかわからない
しかしこれはチャンスでもある、思い切ってあの男性との関係を聞ける

「あ「クリスはな…こう見えても特殊部隊S.T.A.R.Sに所属してるんだぜ」
「きゃー!!すっごぉい!!!」
「ニュースで見たことあるわ!この間強盗を捕まえたんでしょ!?抜群のチームワークだって聞いた」
「え…あ…」

女子に質問攻めに合ってしまい、クリスはナナに話しかけるチャンスを失ってしまった
ケビンの奴、と彼は心の中で舌打ちをした
ナナは相変わらず二人の女子とは違って静かにカクテルを飲んでいた
そんな彼女にドミニクが声をかけた

「ナナは静かな女の子だね」
「そうなの、この子花屋をやってるのよ。花注文したかったら彼女の店に行ってあげてね」
「へー花屋か!女の子らしくていいね」
「ありがとう…」

ドミニクに微笑みかけられナナは遠慮がちにお礼を言う
どうやらドミニクは彼女が気に入ったらしくやたらと話しかけるようになった
クリスはクリスで相変わらず女子の質問攻めに合っていた


酒も回り大分気分がよくなって来た所でケビンが話を切り出した

「なぁ…今夜俺と一緒に過ごしてくれるって子はいるか?」
「やだー!エッチー…でも私貴方みたいな面白い人は好きよ」
「じゃあ終わったら…いいだろ?コニー」

ケビンとコニーがいちゃついてる中、クリスはドリーに話しかけられていたが彼はナナが気になって仕方なかった
見れば酔ったのだろうドミニクが馴れ馴れしく彼女の肩に手を回して話しかけている
その様子にクリスは自然と眉間に皺が寄る

「ねぇ……私、貴方に興味があるわ。今夜ウチに来ない?」
「明日は仕事があるんだ…悪いが…」
「もう真面目なんだから…でもそこが魅力的よね」

その時だった、ナナがドミニクにキスをされそうになっていてそれを見てクリスはすぐに立ち上がる
彼はドミニクを突き飛ばすとそのままナナの手首を掴んで立ち上がらせた
周りは呆然となっている

「悪いが俺達は失礼する、彼女も俺もそれぞれ仕事があるしな」
「お、おいクリス…!?」

ケビンが声をかけるがクリスとナナはその場を後にした


* * *

自分の車にナナを乗せて彼女の店へと送る
助手席に乗せられた彼女は口を開いた

「あの…さっきは助けてくれてありがとう」
「いいんだ、ドミニクの奴には明日言っておくから」
「うん……」

信号が赤から青に変わり再び車が走り出す

「…やっぱり断っとけばよかったな、私…本当はああいうの苦手なの」
「……彼氏がいるんだって断ればよかったじゃないか」
「彼女達は親友だもの、そんな嘘ついたって無理よ」
「嘘……?」

クリスは車を端に寄せて止めた
突然止められてナナは驚いたように彼を見つめる

「彼氏…いるんだろ?」
「まさか!いないわ」
「この間栗色の髪をした男と抱き合ってたじゃないか」
「栗色…?あぁ…それ兄さんだわ」
「兄さん?兄がいるのか?」
「えぇ…そうよ」

この間抱き合っていたのは彼氏ではなくナナの兄だった
道理であんなに嬉しそうに抱き合っていたのか
すべて自分の誤解でナナには彼氏などいなかったのだ
クリスは心からホッとしていた、そして思わずハンドルにもたれかかるようにして顔を埋める

「……クリスこそ、合コンに参加するような人とは思わなかったわ」
「あ、あれは!ケビンに数が足りないからって言われて仕方なく…」
「それでも断りそうな人に見えたから………その……」

ナナは突然口ごもってしまった
クリスも本当はヤケクソになって合コンに参加した、なんて言えなかった
自分の誤解で勘違いしていたなんてカッコ悪くて言えない

「その……」
「ん?」
「……その、私がドミニクに何もされてなかったら……クリスはドリーの所に行ってた?」
「え…」

ナナが頬を赤く染めてこちらを見た

「答えて…」



121108


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