06 結婚式


綺麗に化粧をされて純白の、女なら誰でも一度は憧れるウエディングドレスを着たナナがそこにいた
隣にはタキシードを着たピアーズも車椅子に座っていた
ナナはそんな彼に微笑んで話しかける

「かっこいいよ、ピアーズ」

きっと彼にこういえば照れたように微笑んでありがとう、と言うのだろう
だが今の彼は何も答えない
その時扉がノックされて部屋にクリスともう一人男が入ってきた

「クリス」
「結婚おめでとうピアーズ、ナナ」
「ありがとう…後ろの人は?」
「彼がジェイクだ」

後ろで腕を組んで壁にもたれているジェイクにナナはあぁ、と頷く
彼の抗体のおかげでピアーズは助かったのだ
ナナはその彼にどうしてもお礼が言いたくてクリスに探してきて欲しいと頼んだのだ

「貴方が…ジェイク?初めまして私はナナ……ピアーズを助けてくれてありがとう」
「別に俺は何もしてねぇよ…大体そいつの事は性格が合わなくて大嫌いだしな」
「……」
「……けどまぁ…いなくなったらいなくなったでつまんねーだろうがな」

ジェイクはそう言うとそっぽを向いた
あぁ、そうか彼も口ではああ言いながらピアーズの事を気にかけてくれているのだと理解した
まだ20そこそこの年齢では大人といえども子供っぽさもある

「ありがとう、式にも出てくれるでしょ?」
「……出なきゃうるせぇだろ?」
「ふふっ、わかってるじゃない」

ナナが微笑めばジェイクも口の端を上げてかすかに笑う、その二人の様子をクリスも目を細めて見つめピアーズを見つめた


* * *

ピアーズの病室でささやかながら結婚式が行われた
クリスはあの日ピアーズを含めて共に戦った仲間達を呼んだ、レオン、ヘレナ、ジェイク、シェリー……そして新しいBSAAの部下達を
年取った牧師が口を開く

「ナナ…貴方はピアーズを夫とすることを望みますか?」
「はい、望みます」
「順境にあっても逆境にあっても、病気のときも健康のときも、妻として生涯、愛と忠実を尽くすことを誓いますか?」

ナナは目を閉じた
ピアーズと初めて出会ったとき、酒場で絡まれていたところを助けてくれた。それから付き合うようになって彼が体調を崩したときもずっと看病して一緒に暮らすようになってからも仕事で疲れている彼を支えた
そして今も、ピアーズがきっと帰ってきてまた笑顔で話しかけてくれる事を信じて、これから先もずっと彼を支える

「はい、誓います」
「では誓いのキスを」

少し屈んでピアーズの唇にキスをすると、周りから拍手が鳴り響いた
みんなに祝福されている、ピアーズと結ばれたこの瞬間はとても幸せで、ナナは涙を流した




* * *

「結婚式…よかったね」

式が終わり、そろそろベッドに寝転んでいるピアーズに声をかける
今日は特別にナナもピアーズのいる病室に泊まる事になった

「どんな形であっても…私は今すごく幸せ……貴方の妻になれた」

ピアーズは相変わらず天井を見つめたままだった
ナナは彼の手を握り締める

「私…ずっと側にいるから、ナナ・ニヴァンスとして……死ぬまで一緒にいるからね。あ、でも…死ぬ前に一度でいいからまた貴方に名前を呼んで欲しいなぁそれから私の作ったステーキをおいしいって言って優しく微笑んで欲しい。貴方の笑顔とても大好きだから…」

それだけ言うと彼はピアーズの頬にキスをして部屋の明かりを消した


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