05


これは今朝見た夢の続きなのだろうか?
今自分の部屋の前にナナがいる、心配そうに自分を見つめる彼女の姿に今朝見た夢の中の彼女の姿が重なる
変な気を起こしてしまいそうになる

「ど、どうしてここに?」
「ジルから連絡が来たの、熱を出して家に帰ったって…様子を見てきて欲しいって言われたから住所を教えてもらって来たの」

ジルのやつ…とクリスは内心思いながらため息をついた
そのため息が風邪のしんどさから来ているのだろうと勘違いしたナナはクリスの背中を押して部屋の中に入るように促した
と、同時にナナも部屋の中に入ってくる

「え…?」
「スープの材料買ってきたからキッチン借りるね」
「え…あ、ちょっと待ってくれ!部屋ちらかってるし…そこまでしてもらう義理はないよ」
「気にしないわ、それに…風邪引かしちゃったのは私の責任でもあるから」

そうは言ってもクリスの部屋は相当散らかっている
一度クレアが遊びに来たときにも怒られたぐらいだ、昔から生理整頓がどうも苦手だった
ナナが気にしないと言ってもクリスは気になるし、好きな女に自分のだらしない所を見られるのは嫌だった
部屋に入ってきたナナは言ったとおり部屋の汚さを気にした様子はなくズンズンと部屋の奥へ進みクリスをベッドに寝かせてシーツをかけてやった

「ナナ…」
「熱が上がったら大変だからおとなしく寝ててね」

子供に言い聞かせるように言うと彼女はそのままキッチンへと向かう
さっそく戸棚を開けて鍋を探している音が聞こえてきた、鍋を使うのなんて何時以来だろうかとクリスは考える
ベッドから起き上がってそっと扉の隙間からナナの様子を見つめた
自宅から持ってきたのかエプロンをつけている姿にまた心臓の音が大きくなる
そこから鍋を洗って材料を切る彼女の姿に妻がいれば毎日あんな光景が見れるのか、とクリスは口の端を上げた
その時ナナと目が合い、彼女は少し怒った様子で手に持っていた包丁を置くとこちらへやって来た

「クリス!寝てなさいって言ったでしょ!」
「いや…すまない…」
「ほら早くベッドに行って!」
「ちょっ…そんなに押さなくても…うわっ!!」
「きゃっ!!」

下に落ちていた雑誌に躓いてクリスがベッドに倒れこんだと同時にナナも彼の上に倒れこんだ、ふと見れば至近距離でナナと目が合った
途端に頬を赤くさせる二人、急いで彼女はクリスの上から退いた

「ぁ、と…ごめんなさい…」
「い、いや…こっちこそ…」
「……」
「……」
「……スープ作ってくるね」

部屋を出て行く彼女の背中を見つめながらクリスは己の胸に手を置いた
心臓がうるさいぐらいに鳴っている、そしてナナの顔を間近で見てとても綺麗な顔をしていると改めて思った
そしてあんなにも体が軽くて細いのかと…守ってやりたくなる


* * *

スープが出来上がったらしくクリスは起き上がってじっくりと見つめる
ナナが作ってくれた手作りの料理
嬉しさがこみ上げてきてさっそくスプーンを手に取ると口をつける
野菜の味が口の中に広がりとてもおいしかった

「うまいよナナ、ありがとう」
「よかった…早くよくなるといいね」
「あぁ…けど大分熱は引いてきたような気がするよ」
「そう……それじゃあ私そろそろ帰るね」

ナナが鞄を持って玄関へと向かう、その背中にクリスは声をかけた

「また店に行ってもいいか…?」

クリスの言葉にナナはふっ、と微笑んで頷くとそのまま部屋を出て行った


121012


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