03


「あー…終わった」

仕事を片付け終えたクリスはうーんと背伸びをする
自分の左腕につけている時計に目をやれば時刻はすでに夕方の18時だった
ナナの店は何時までやっているのか知らないが寄って見ようと考えていた

「クリス、今から食事にでも行かない?」
「…あ、あー…今日は遠慮しとくよ、またな」

ジルからの夕食の誘いにクリスは断って上着を羽織るとそそくさと出て行く
その背中を見つめながらジルは不思議そうに首を傾げた



「すごい雨だな……」

車を走らせながら思わず声を上げる
周りを見れば数人しか人は歩いておらず、傘をさしていてもまったく意味がない様子だった
一体いつの間にこんな大雨になっていたのかワイパーの速度を強めてナナの店へと走り出す
店に着いたときにクリスはすぐにナナの姿を見つけた
彼女は傘もささずに店の外に置いてある花たちを中へと必死に移動させているようだった。クリスはすぐにベルトを外して外に出ると彼女に声をかけた

「大丈夫か?手伝うよ」
「え!?あ、あなたは…クリス…さん?」
「クリスでいい、中に運べばいいのか?」
「え、えぇ…」

突然現れたクリスに驚いていたナナだったのだが、今はこんな事をしている場合ではない。一刻も早く花を中に運ばなければならなかった
二人で協力して大雨の中花を店の中へと運び出す。20分もすればすべて中に運ぶ事ができた



「ありがとう…これ使って」
「あぁ、助かるよ」

花を運んでいたらお互い濡れてしまったのでナナはクリスを中へと招き入れた
そして奥からタオルを持ってきてクリスに渡す

「今コーヒー淹れるから…砂糖はいる?」
「いや、なくていいよ」

ナナは頷いて奥へと入っていく煙草が吸いたくなり胸ポケットから取り出すのだが雨でずぶ濡れになってしまいとても吸えそうになかった。1箱無駄にしてしまった事にクリスは苦笑した
そしてナナが再びやってきてマグカップをクリスに渡す、お礼を言って彼は受け取った

「本当にありがとう手伝ってくれて、私一人だったらいくつか花を駄目にしてたわ」
「気にしなくていいさ、よかったな全部無事で」
「えぇ…ところでどうして店に来たの?」

クリスの肩がピクッと反応する
君に会いたくて来たなんて答える事はできない

「た、たまたま店の前を通りかかったんだ。そしたら君の姿が見えて」
「そっか……っくしゅん!」

その時ナナが大きくくしゃみをした、先程の大雨で体が冷えてしまったのだろう
風呂に入らなければ風邪を引いてしまう
クリスは慌ててマグカップを置いて立ち上がった

「早く風呂に入ったほうがいいよ、俺はもう帰るから」
「え…あ、でも…」
「いいんだ。風邪引かないようにな」

彼は優しく微笑むとそのまま店を出て行く
残されたナナはクリスが置いていったタオルを手に取り握り締めた


121009


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