05


「はぁ…はぁ…」

荒い呼吸が病室に響き渡る
男の足元には彼を見張っていた警察官が気絶していた
部屋を出ようとした男は倒れている警察官の懐を探って拳銃と車のキーを奪って部屋を出て行った


* * *

ゆっくりと身体を起こしてナナは隣で寝ているレオンに目をやった
彼はぐっすりと眠っているようだった、髪の毛を優しく撫でてから起こさないようにベッドから抜け出すと洗面台へと向かう
ふと鏡に映った自分の姿を見た。首筋の辺りにやたらとレオンにつけられた跡がたくさんあった
他人に見られたら恥ずかしいが愛されている証拠でもある

「おはようナナ」

後ろから声を掛けられて振り向けばレオンがそこに立っていた
微笑んで彼に近づけば腰を引き寄せられて唇を塞がれた

「もう身体は大丈夫なのか?」
「ちょっと腰が痛いけど…平気」
「そうか…おいで朝食にしよう」

ナナの足を持ち上げて姫抱きにする、急な浮遊感に悲鳴をあげた彼女だが嬉しそうに微笑むとそのまま彼の首に両手を回してしっかりとしがみついた
ソファーの上に降ろされてそのまま唇を塞がれた

「ん…昨日もシたじゃない…」
「こんな格好でフラフラしてる君が悪い」

ナナ自ら唇を塞ぎレオンはその間彼女のタンクトップの中に手を入れた瞬間、携帯の音が鳴り響いた
唇を離して泣けるぜ、と呟くと携帯に出た
数回会話をしてからレオンの表情が一気に変わり会話を終えると携帯を切った
ただ事ではない様子のレオンに声をかけた

「どうしたの?」
「……犯人が病院から逃げたそうだ」
「え…!?逃げたって…ま、まだ見つかってないの?」
「あぁ…」

自分を記憶喪失にした犯人が逃げた
怖くなって身体が震えてしまう、レオンは大きな鞄を持ち出してきてソファーの上にそれを放り投げた

「すぐに荷物をつめるんだ」
「え…ど、どこに行くの?」
「犯人がここに来るかもしれない。別の場所に逃げよう」
「でも…警察が守ってくれるでしょ?逃げなくても…」
「病院でも警察が見張っていたにも関わらず逃げてきてるんだ。信用できん…それに犯人は必ず君を狙ってくるはずだ、犯人から君を守らないと」

レオンの言う事も一理ある
犯人はそのまま逃亡するパターンもあるのだが自分にストーカー行為をしてきた男だ
また自分を狙ってくるだろう
部屋に戻ってクローゼットからたくさんの服を出してきて鞄に詰めた
自分の分だけでなくレオンの分もだ
鞄につめている間に隣の部屋からどこかに電話をしていたのかレオンが出てきた

「どこに電話してたの?」
「部屋を用意してもらえるように頼んだんだ」
「そう……あ、ねぇレオン。犯人の特徴とか教えてくれる?」
「……どうしてだ?」
「どうしてって…私が一人で買い物に行った時とかに犯人の事知ってれば逃げられるでしょ?」
「そんなもの必要ない。君を一人にはさせないし俺が必ず側にいるから大丈夫だ」

早く準備するんだ、とレオンは玄関へと向かう
彼の言葉にナナは疑問に感じた
教えてくれるだけでもいいのに、何故犯人の事を教えてくれないのか?
胸にモヤモヤした感情を抱きながら二人で部屋を出て駐車場へと向かった
トランクに鞄を乗せたレオンはまだ車に乗っていないナナに声をかける

「早く乗るんだ」
「………どうして教えてくれないの?」
「え?」
「…犯人の事どうして教えてくれないの?まさかあなたも犯人の一味なの?」
「何を言うんだ…」
「犯人の事教えてくれないのは犯人の事庇ってるからなんでしょ!?あなたも本当はストーカーなんだわ!!」
「ま、待て!!」

突然走り出したナナの後をレオンは慌てて追いかける
そのときレオンは彼女に向けて走り出してくる車に気がついた
急いで彼女に追いついて後ろから飛びつくとそのギリギリを車が走った
驚いてナナは身体を起こした
するとまた車がこちらに向かってきていたのでレオンは自ら囮になった
ボンネットの上にレオンの身体が乗りそのまま地面に倒れると車はそのまま走り去った
身体を痛ませるレオンに慌ててナナが近づいた

「レオン!!大丈夫!?」
「君は…平気か…?」
「私は大丈夫…待ってて救急車を呼ぶから!」

携帯を取り出してナナはすぐに連絡を入れた
血だらけになっているレオンの手を力強く握り締めた

「ごめんなさいレオン…私が早く車に乗ってればこんな事にはならなかったのに…っ!」
「いいんだ……君を守れて俺は幸せだ……」

薄く微笑んでレオンはゆっくりと目を閉じた


130825


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