01


――逃げろ!!
――嫌!助けてっ!!!


身体をビクリと反応させてから女性は目を覚ました
最初に映ったのは白い天井、そして横を見れば自分の心音が表示された機械が側に置いてある
自分の部屋でない事がわかる。痛みを感じながらもゆっくりとベッドから起き上がって近くにあった鏡を見る
頭や頬に手当てをされた跡がある、自分の頬をゆっくりと撫でたと同時に部屋の扉が開かれて一人の男が入ってきた
女性の姿を見た男は少々目を見開きながらも微笑んで声をかけてきた

「気がついたんだなナナ」
「………誰なの?」
「……俺の事がわからないのか?」

男に聞かれてナナは頷いた
その様子を見た男は重く息を吐いた後ベッドに戻るように言った
素直に従ってベッドに戻れば男がまた口を開いた

「自分の事は覚えてるか?」
「……何も…」
「何故ここにいるのかもわからないか?」
「……わからないわ、何も思い出せない…っ……あなたは誰なの?」

頭を抱え込むナナに顔を上げさせるように言うと男は優しく微笑んだ

「俺の名前はレオン・S・ケネディ。君の恋人だ」
「恋人……?」
「そうだ…とりあえず先生を呼んでくるから待っててくれ」

安心させるようにナナの頭を撫でてからレオンは部屋を出て行く
彼が出て行ったのを見送ってから再び周りを見渡した
先生、と言っていたからここは病院なのだろう。しかし自分がどうして怪我をしてここにいるのか思い出せない
恋人と言ったレオンの事も思い出そうとしても頭が痛むだけだった


* * *

「記憶喪失ですね」

ナナの診断を終えた医者が重そうに言った
レオンも辛そうに目を閉じた後ナナの背中を優しく擦った
記憶喪失…と言われてナナも混乱していた。親も友達も思い出せない
自分が何をしていたのかどこに住んでいたのかさえも思い出せなかった

「怪我の方は一週間ほどで治るでしょう…記憶の方はゆっくりと時間をかけていくしかないですね……」
「ありがとう先生…少し話があるんだ。ちょっと外にいいか?」

レオンは医者を連れて部屋を出た
扉をしっかりと閉めた後レオンは口を開いた

「明日にでも彼女を連れて帰りたいんだが…いいか?」
「明日ですか?2、3日は様子を見た方が…」
「駄目だ…この病院には"犯人"もいるんだろ?そんな危ないところにナナを置いておきたくないんだ」
「彼なら一番奥の個室にいますし警察が24時間体制で見守ってるから大丈夫ですよ」
「それでも駄目だ。彼女がこうなったのはアイツのせいなんだぞ…もう目を覚ましたのか?」
「いいえ……わかりました特別に許可を出します」

許可をもらえた事にレオンはお礼を言うと再びナナのいる部屋へと入っていく
入ってきたレオンの腕を掴んで彼女は少し興奮した状態で口を開いた

「どうしようレオン…私色々思い出そうとしたんだけど何も思い出せないのっ…親や友達の事も…あなたの事も…自分の事でさえも思い出せない…怖いっ…!」
「大丈夫だ。落ち着いてナナ」

最後には涙を流しながら言うナナの肩を掴んで落ち着かせると自分の方に顔を向かせた
彼女の目から零れだしそうな涙を親指で優しく拭ってやるとレオンは優しく微笑む

「俺は…何があってもナナの記憶を取り戻すまで側にいる。時間はあるんだ…ゆっくりと思い出して行こう」
「レオン……ありがとう…」

後頭部を引き寄せられてナナは目を閉じた


130804


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