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12月24日
世間ではクリスマスイヴだというのにBSAAにとってはそんなもの関係なかった
大半の人たちが家族や恋人と過ごすであろうこの日にクリス率いるBSAAのアルファチームはイドニアの戦場に来ていた
隊員たちの中にはやはり恋人とケンカして来たものもいるようだった
そんな会話を聞きながらピアーズは辺りを見渡していたクリスに声をかけた

「ナナさんやクロエちゃんが寂しがってるんじゃないですか?」
「…まぁな、だから早めのクリスマスパーティをしてきたんだ。それにニューイヤーは絶対に過ごすって決めたからな」
「……さっさと終わらせないといけませんね」

ピアーズが微笑めばクリスも同じように笑みを返した


* * *

隊長を守れなかった

ナパドゥの攻撃を喰らい大怪我をしたクリスを背負いながらピアーズは病院へとやってきた
クリスは目を覚ます様子もなく眠っている
医者から命に別状はないと言われているのだがピアーズはものすごく後悔していた
そう、ナナから彼を守ってくれと言われたのに守る事ができなかった
彼女に連絡をしなければならない。だけど電話をするのが怖い
きっと彼女は泣く、悲しむ、彼女の笑顔が大好きなのに

「あ…ピアーズ君、どうしたの?………クリスは?」

電話をかけて出てきたのはもちろんナナだった
勘のいい彼女はクリスからの電話ではなくピアーズからの電話で何かに気がついたようだ
クリスが電話をかけられない状況になったということに
状況を伝えればナナはすぐにこちらへと向かってくるので空港に着いたら迎えに行くので電話をくれと伝えて電話を切った
病室に戻ったピアーズは眠っているクリスに声をかけた

「隊長…ナナさんがこちらに向かってきてるそうですよ。よかったですね…今の隊長のその姿を見たらナナさんきっと泣きますよ、目を覚ましたらどうです?」

当然クリスからの返事はない
ふっ、とピアーズは笑うと片手で自分の両目を塞いだ

「なぁ…アンタじゃなきゃ駄目なんだよ。俺じゃ彼女を笑顔にさせることはできないんだ」


イドニアに着いたとナナさんから連絡が来て迎えに行き、再び病院に戻れば
隊長の姿はなかった
泣き崩れる彼女を見て俺の胸はますます痛んだ
隊長を見つけるためにできることはすべてやろうと決めた
地元の警察にも協力を頼んで見つけてもらう、そしてチームも隊長が戻るまで俺が引っ張っていく

「ナナさん、隊長は必ず俺が連れて帰りますよ」
「ピアーズくん…」
「それじゃあ俺は行きます」

無事に隊長を見つけて連れて帰ったら、打ち明けてもいいだろうか?
昔…あなたがいた花屋に行った事があると
あなたが好きだったと


* * *

一軒の店でクリスを見つけた後、ピアーズは彼を射撃場に連れてきていた
銃を渡されたクリスはどうやって使うのだという目でピアーズを見つめたのだが彼はただ顎で早く撃てと言うだけだった
本当に何も覚えていないのか?だが身体は覚えているかもしれない
ピアーズが思っていた通りクリスの目つきが若干変わると的に向けてすべて当てる事ができていた
弾の入れ替えもしっかりとできていた

「銃の腕は衰えていないようですね」
「…勝手に動いた。俺はこれからどうなるんだ?」
「……本当は家に帰してあげたいですが中国でバイオテロが起こったんでそこに向かいます」
「そうか……」

クリスは頷いた後そのまま握り締めていた銃を見つめていた
そんな彼にピアーズは思い切って口を開いた

「ナナさんやクロエちゃんの事…覚えていないんですよね?」
「…自分の事すらも覚えてないんだ。知らないな」
「……そうでしたね」

せめて声だけでも聞かせてあげたいと思ったが覚えていないのなら電話に出しても仕方がない
本当は中国に連れて行かずに家に帰してあげたいのだがそうもいかなかった
だが必ず彼は連れて帰る自分の命に代えてもだ



記憶を思い出してからの隊長は酷い有様だった
エイダへの怒りに捕らわれていて周りが見えなくなっていたのだ
このままではさすがにまずいと思った。下手すれば命を落としてしまうかもしれない
何度言葉をかけても聞いてくれもしない
こんな酷い姿、彼女が見たらどう思うだろうか?
悲しむに決まっている。こんな姿
またこの人は彼女を悲しませるのか、泣かせるのか

俺はこのとき思った
この人が変わらないのであればナナさんを泣かせるのであれば
俺が彼女をもらう、と


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