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追いかけてくるハオスから逃げ続けるクリスとピアーズ
巨大な右腕がクリスを掴もうとしたのだがそれに先に気がついたピアーズが彼を押して自分の右腕が掴まれた、宙高く持ち上げられる中で骨の割れる音が響く
悲鳴を上げるピアーズの腕を掴んでいるハオスの腕に向けてクリスは銃を乱射する
撃ち込まれた事に悲鳴を上げたハオスはピアーズを投げ飛ばした
投げ飛ばされた先に鋭く尖った鉄片があり投げ飛ばされたピアーズの右肩がそこに刺さった
絶叫を上げるピアーズの元まで駆けつけるクリスなのだがハオスは容赦なくピアーズの方に向けて大きな瓦礫の破片を投げるとピアーズの右腕が押しつぶされた
もう少しの所でクリスはハオスに掴まり必死に拳を握り締めて腕を叩くのだがビクともしない

「ぐ…っ…!」
「た、いちょ…う……」

彼を助けなければ
自分の右腕を引きちぎりながらピアーズは瓦礫の隙間から脱出した
床に叩きつけられたピアーズの隣にCウィルスの注射器が転がり落ちた
それはエイダを追いかけて空母まで行った時、彼女が持っていたアタッシュケースの中に入っていた注射器だった
注射器を左手で拾うと自分の右肩に刺した
すると異形の腕が生えてきた、今まで自分が出くわしてきた化け物たちと同じような腕が…
力を込めるとハオスに向けて電撃を撃ちはなった
攻撃を喰らったハオスが悲鳴を上げてクリスを放すとサナギ化した、彼はすぐにピアーズの元へと駆け寄り変異した彼の姿を見て眉間に皺を寄せた

「ピアーズ……」
「隊長…まだ終わりじゃ…ないです…」

サナギ化したハオスからまた生まれる
クリスは銃を構えてハオスに向けて発砲する
ピアーズは再び右腕を構えて電撃を放てばハオスはまたサナギ化したのだがまたすぐに生まれてきた
何度やってもキリがない、生まれてくるハオスを睨みつけながらクリスはハオスの心臓部分に気がついた。それはピアーズも同じだった様だ
ありったけの力を込めて電撃を放つ、悲鳴を上げたハオスに近づいたクリスだが暴れるハオスの腕が当たり地面に叩きつけられた
限界だったピアーズは彼を助けに行く事ができずに地面に膝をついた
荒い息を吐きながらもクリスは何とか立ち上がりハオスに近づくとナイフで心臓部分を突き刺した
ハオスは倒れて動かなくなった
クリスは急いでピアーズの元へと駆け寄った

「ピアーズ!気をしっかり持て!大丈夫だ!」
「すみません…隊長…BSAAを…未来を…」
「……大丈夫だ、何も心配いらない」
「…あんたさえいれば…っ」
「それ以上言うな!!お前も一緒だ!!!」

力強くクリスは言ってピアーズの後頭部を掴んだ
真っ直ぐな瞳に見つめられてピアーズはゆっくりと頷いた


緊急脱出路を走り続けていた二人はようやく脱出ポッドのある場所へとたどり着いた
ピアーズを壁際に座らせてクリスは優しく話しかける

「見えるか?もうすぐ脱出できるぞ…必ず助ける」

脱出ポッドを操作するクリスを見つめてピアーズは己の右肩についたBSAAのワッペンを力強く握り締めた

「よし…行けるぞ!!」

嬉しそうにクリスは言うとすぐさまピアーズに駆け寄って立ち上がらせると脱出ポッドへの入り口へと向かった
だがピアーズはそんな彼の手を振り払った

――こうなってしまった以上、倒すしかない

ふとピアーズの言葉がクリスの脳内を過ぎった
この言葉はマルコがB.O.Wへと姿を変えてしまったときだ、仲間を撃つ事に躊躇していた自分にピアーズが言った言葉だ
ピアーズはクリスの身体を力強く押して脱出ポッドに乗せると扉を閉めた
急いで立ち上がってクリスは何度も扉を叩きつけた

「ピアーズ!何をしてるんだここを開けろ!!!」

だがピアーズはゆっくりと歩き出してレバーを押した
脱出ポッドが動き始める
やめろ、と訴えるクリスをピアーズは無言で見つめた

「諦めるなピアーズ!時間はまだある!!二人でここを出るんだ!!」

ピアーズは一歩も動こうとしなかった
脱出ポッドが動き始めた

「ピアーズ!!!!!」

彼の姿が見えなくなるまでクリスは名前を叫び続けていた
脱出してすぐの事だった、倒したはずのハオスが再びクリスの乗っている脱出ポッドに向けて襲い掛かってきた
こちらへとやってくるハオスを睨みつける
脱出ポッドを掴んできたハオスだが海底基地から光が放たれそれがハオスの身体を貫いた
貫かれたハオスはそのまま海底基地の方へと沈んでいったと同時に基地が爆発しそれに巻き込まれた
無事に海上へと出たクリスは脱出ポッドの扉が開き、久々の外の新鮮な空気を吸い込んだ
ふと自分の右腕に何かあることに気がついた
それはピアーズの右腕についていたワッペンだった
力強くそれを握り締めて迎えに来たBSAAのヘリの音を聞いた


* * *

「つぎ!このえほんよんで!」

3冊目を読み終えたところでクロエは次の絵本をナナに渡してきた
ずっと読み続けていたので彼女の喉はカラカラだった

「ねぇクロエ、一旦休憩しておやつにしよっか」
「うんっ!」
「待ってて準備してく……」

立ち上がってキッチンへと行こうとした時だった
クリスがそこに立っていたのだ
目を見開いてクリスを見つめるナナ、クリスの姿に気がついたクロエは顔を明るくさせてすぐに彼の所に駆け寄った

「パパっ!!!」
「…ただいまクロエ」

しゃがんでやればクロエはすぐにクリスに飛びついてきた
嬉しそうに目を細めて彼女は大好きな父親の頬に何度もキスをした
そのままクロエを抱き上げて立ち尽くしているナナに声をかけた

「ただいま…ナナ」
「…クリス…っ…!」

涙を流してナナはクリスに抱きついた、クリスは左手で彼女を力強く抱きしめて唇を塞いだ
ナナとクロエ…大切な家族で宝物
ピアーズが自分を探しに来なければ失うところだった
彼女の身体を少し離して口を開いた

「…今度東欧に行こう…」
「東欧?…イドニア?」
「あぁ……アイツが上手いって言ってたステーキの店があるんだ、それから海にも行こう……アイツに会いに…」

クリスの言葉を聞いていたナナは涙を流してそのまま洗面所へと姿を消した
その背中を見送ってクリスはクロエを降ろしてやった

「ママの所に行ってあげてくれないか?」
「?うん」

父親に言われたとおりに素直にクロエはナナの後を追いかけた
そのままクリスは壁にもたれてゆっくりと腰を降ろした後…片手で自分の両目を塞いだ


One more time, One more chance
(ありがとう、時間をくれて。ありがとう、気づかせてくれて)


130717


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