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怒りに囚われてエイダを追うことばかり考えていたせいか、罰が当たったのか
最後まで残っていたマルコもエイダの投げた注射器を撃たれてしまいB.O.Wへと姿を変えた。銃を構えたピアーズを止めようとしたのだが「こうなってしまった以上、倒すしかない」と返された
そんな事はわかっていたはずだった。今までもそうだったのだ
洋館事件から、ウィルスに感染してしまった者たちは助けられなかった
殺すしかもう道はないのだ


通路を進んでいたクリスは怒りを込めた拳を思い切り壁に叩きつけた
気づいたピアーズはクリスにそっと声をかける

「クリス、落ち着いてください」
「お前はここまでされて何とも思わないのか?あの女のせいでどれだけの仲間が…」
「そんな事はわかってる!だけどそれはただの恨みだ!…あんたがもう少し冷静になって行動していればここまでの犠牲は防げた」
「黙れ…」

痛い所を突かれた。自分が怒りに囚われて判断力を失っていた事は確かだったからだ
ようやく言葉を搾り出したクリスにピアーズは容赦なく攻め立てた

「BSAAの使命なんかもうどうでも良くなったんだろ!?」
「黙れっ!!!」

大声を上げてクリスはピアーズを壁に押し付けた
押し付けられたピアーズだったが彼も負けじとクリスの肩を掴んで言い返す

「俺たちの希望だったアンタはそんな奴じゃなかったはずだ!あんたを信じて死んでいった仲間たちが哀れで仕方ない……そんな姿フィンたちや…ナナさんに見せられるかよっ!!!」

半年前に失った仲間たちの事やナナの事を言われてクリスは掴んでいた肩を離した
家族を信じろと言っていたあの時の自分、そしてそれを信じて着いてきた仲間たち
自分の帰りを信じて待っているナナやクロエ

「俺はエイダを追う……HQエイダの場所を「俺も行きますよ。今のアンタは危なっかしすぎる」

着いてくると言ったピアーズにクリスは勝手にしろと言った様子で先に歩き出した
他の隊員なら着いていけないと呆れて彼を見捨てるかもしれない
それだけは絶対にしたくない。クリスはBSAAに必要な存在だ失ってはならない
それにナナとの約束もあった


* * *

「エイダっ!!!」
「あら、怖い兵隊さんね」

走って逃げていくエイダをクリスとピアーズは追いかける
他に誰か来ている様だったが二人は気づいていない、目の前の獲物を追い詰めることに必死だった
二手に分かれてようやく追い詰めたクリスはアサルトライフルをエイダに向ける
しかし追い詰められたにも関わらずエイダは変わらず笑みを浮かべていた
引き金を引こうとしたとき持っていた武器が弾き飛ばされた
自分の邪魔をしてきた男と争い投げ飛ばしてやれば男は銃を構えてきたのでクリスも同じように銃を構えた
荒い息を吐きながら男の顔を見ればそれは自分の知っている人物だった
向こうもクリスに気がついたようで息を整えながら声をかけてきた

「クリス…」
「レオン…!?何故お前がここに…」
「銃を降ろせクリス、彼女はこのテロの証人だ」
「証人!?この女はテロの首謀者だ!!」

信じられないといった様子でクリスは銃を更に突きつけた
だがレオンは首を横に振る

「違う。首謀者はシモンズだ…合衆国大統領補佐官だ」
「この女は部下を見殺しにした!!」
「俺たちは大統領と7万人のアメリカ国民を失った!!」

レオンも同じように声のトーンを高くしてクリスに言い放った
レオンの後ろで不敵に笑うエイダをクリスは睨みつけながら口を開く

「ネオアンブレラだぞ…俺たちにとってこの名が………どうあってもこの女を信じるというのか?」
「…あぁ、信じる」

二人の気迫にピアーズもヘレナもそちらに目を奪われる
その隙を突かれてエイダは閃光手榴弾を地面へと放り投げた
4人の目が閉じられた時、エイダはフックショットを使って移動する
ピアーズがマシンピストルを放ったのだが上手く交わされる
追いかけていくピアーズにクリスもアサルトライフルを拾うと自分も続こうとしたのだがレオンに止められる

「クリス…俺たちの戦う目的は同じだ。違うか?」
「……あぁエイダはBSAAが追う。お前たちはシモンズを追ってくれ」
「お前を信じるぞ」

レオンに頷いてクリスはその場から立ち去った


用意していた車に乗って逃げていくエイダに銃を撃つが当たらずに逃げていく
クリスが来たことに気がつくとピアーズは側にあった軍用車両に乗るように促した

「エイダは軍港方面へ逃走!追いかけましょう!」
「ピアーズ」

冷静な声でクリスはピアーズに声をかけた

「俺は…お前の言うようにすべての事から目を背けていたのかもしれない」
「隊長…」
「追いつけるか?」

半年前、フィンたちに見せていたようにクリスは微笑んだ
いつもの隊長に戻ったのだとピアーズは感じると、同じように彼に微笑んだ

「追いついてみせますよ!…エイダを捕まえて全部終わったらナナさんにすぐに連絡入れてあげて下さいね」
「あぁ…」


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