第8話


「何やってるんだお前たち……」

二人の状況を見つめながらピアーズは静かに口を開いた
ナナは今の自分のこの体制を見てゆっくりと頭の中で整理した
当然ピアーズには先ほどジェイクに持ち上げられてバランスを崩して倒れたことなど知らない
完全に自分がジェイクを押し倒した姿に映っているだろう
ちゃんと説明しなければ大変な事になってしまう

「ち、違うのこれ「あーあバレちまったな」

説明しようとしたナナを抱きしめてジェイクが口を開いた
力強く抱きしめられているため肩の所に顔が埋まる形になり口も塞がったため説明する事ができなくなった
抵抗しようにも彼の力は強くて逃げる事ができなかった

「この女に押し倒されてキスされたんだよ」
「え…?」
(ち、違う〜〜〜っっっ!!!!!)
「好きだってよ俺のこと」

何も言えなくなったピアーズの顔を見てジェイクはニヤリと笑うとそのままナナを抱き上げて教室を出て行った
残されたピアーズは何も言えずにただ呆然としながら彼の背中を見送った

――ピアくん!

頭の中でナナが自分を呼ぶときのあの笑顔を思い出した後ピアーズは唇を噛んだ



「ハハッ!アイツのあのマヌケな顔最高だったな!」

大声で笑ったジェイクは何の反応もしないナナが気になって地面に降ろしてやった
すると彼女は大声で彼に怒鳴った

「どうしてあんな嘘ついたのよっ!!!私ジェイクにキスなんて一度もしてないじゃないっっ!!!!」
「アイツがボロボロになるためなら何だってやってやる、ついでにブスのお前の恋も邪魔してや」

そこでジェイクは口を閉ざした
ボロボロと大粒の涙を零しながらナナが唇を噛んでいたからだ

パンッ!!

頬が叩かれる音が響いた
ナナに叩かれたジェイクは叩かれた箇所を押さえながら彼女を睨みつけた

「何しやがんだてめぇ!!」
「アンタなんか大嫌いっっっっ!!!!!」

大声で言うとナナはその場を走り去っていった
叩かれた箇所がじんじんと痛んだ
あの女、とジェイクは唇を噛んだのだが先ほど泣いていた表情を思い出すとはぁ、とため息をついた

「……てめぇがアイツの事ばかりうるせぇからだろうが」


* * *

まるで死人のような顔をしながらナナが学校に登校していた
昨日の出来事がやはり彼女にとっては相当のダメージを食らったからだ
しかしこのまま誤解されたまま自分の恋が終わってしまうのは嫌だった
ピアーズにきっちりと説明して誤解を解いてもらおう
そう決意した時襟首を誰かに掴まれた
見てみればそこに立っていたのはジェイクだった

「ジェイク…!!」
「てめぇ昨日はよくも俺の顔を叩きやがったな…おまけに俺の鞄持ちの役目はどうしたんだよ」
「何よ!アンタが全部悪いんでしょ!!もう奴隷もやめる!ピアくんにも昨日の事全部話すから放してよ!」
「……行かせるか、てめぇなんか一生誤解されてろ」
「ちょっ…降ろしてよっ!!ジェイクのばかっ!!ハゲっ!!!」

肩に担がれてそのまま教室へと運ばれていくナナ
その様子を周りが見つめている中、職員室の窓からも見つめている男が一人いた
ピアーズだった
彼は二人の様子を見て昨日のジェイクの言葉を思い出した
ナナがジェイクを好き?
確かにあの二人がよく一緒に帰っているのを見かけたことはある
本当にナナはジェイクのことが好きで付き合っているのだろうか?
どうでもいいはずだ、彼女が誰を好きであろうと自分には関係のないことだ
なのにどうしてこんなにもイライラしている自分がいるのか

「……どうしたんだ俺は」


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