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クリスからスカウトを受けたピアーズはBSAAの入隊を決意した
というのも彼がBSAAの元へクリスの元に入る決意をしたのは数時間前の事だ


バーン!!

BSAAの本部に連れてこられたピアーズは射撃場で得意の銃の腕前をクリスや他の隊員たちに披露していた
といってもピアーズ本人がやりたいと言ったわけではなくクリスに言われてやっているのだが
彼の射撃の腕は確かだった上の人間も納得したように頷くとクリスに何か囁いてその場から出て行った。クリスはそれを見送るとピアーズに微笑む

「よかったな。お前の入隊を認めるんだそうだ」
「え…ま、待ってくれ!俺はまだ入るなんて決めてない」

BSAAの入隊がすんなりと決まった事に驚いたのもあるが彼はただ入隊するだけでは納得がいかない
このままBSAAに入ったところでピアーズに戦う目的がないと結局陸軍にいたころと何ら変わらなくなってしまう
ボリボリと髪の毛をかくクリスの所へジルがやってきた
ジルはクリスに用事を伝えると彼はちょっと待っていてくれとピアーズに伝えるとそこから出て行く
残されたのはピアーズとジルだけになった

「あなた…クリスがスカウトしてきた人かしら?」
「あ、はい…あなたは?」
「ジル・バレンタインよ」

優しく微笑むジルと握手を交わしたピアーズは彼女の名前も聞いたことがあった
クリスといいジルといい先ほどから有名な人物に出会ってピアーズは少し興奮していた

「BSAAに入隊できるんでしょ?よかったじゃない、クリスと同じチームでしょ?」
「いや…俺はまだ入るとは決めてない」
「どうして…?」
「……曽祖父の代から軍人なんです…だから俺もその道に進むんだって幼い頃から決めていました。だけど陸軍に入ってから結局自分は何のために戦っているのかわからないんです」

ピアーズの話を聞いていたジルはこっちへ来て、と部屋の扉を開けて出て行く
首を傾げていたピアーズだったが早く、と急かされて部屋を出て行く
長い廊下を進んで大きな扉を開ければ先ほどとはまた違った訓練所にやってきた
手すりにつかまって下を除いてみれば迷路のような構造になっておりそこに何人か訓練生が銃を構えて進んでいた

「前ばかり見るな!B.O.Wはどこから狙ってくるかわからないぞ!!」

聞こえてきたクリスの大声にピアーズもそちらを見れば厳しい顔をしたクリスが立っていた
どうやら下にいる訓練生たちはクリスと同じチームらしかった
協力して進んでいく彼らの姿にピアーズはずっと見続けていた
無事にゴールまで辿り着いた彼らの元へクリスは走ると一人ずつみんなの肩を叩き微笑んでいた

「クリスはね…隊員たちの事を家族って言ってるの」
「家族…?」
「そう、これからは若い世代たちの時代だって言っててね。自分が育てていくんだって言って自分の立場も捨てて部隊に行ったの」

ジルの言葉を聞いてピアーズは衝撃を受けた
自分がいた軍隊では上の人間は最低な奴もいた、自分が得た階級を捨てたくないために部下のせいにした上司もいる
若い芽を摘んでいくばかりの男たちに呆れていた

「今日の訓練はここまでだゆっくり休んでおけ、後…あそこにいる奴は今日から俺たちの家族になるからよろしく頼む」

そう言うとクリスはピアーズの方に向けて指をさした
その先を追った部下たちも同じように微笑んでピアーズを見た
こんな風に温かく迎えられたのは初めてかもしれない
なんとなくだが戦う目的が見つかったかもしれない
自分はクリスのようになりたい、そして今日から入るこの部隊のみんなの為にも戦いたいとそう感じた


* * *

「ただいまナナ」

クロエを腕に抱いていたナナが帰ってきたクリスの方に振り向いて優しく微笑んだ
彼女から優しく娘を受け取るとただいま、とクリスは微笑んで言った
いつもとどこか様子が違うクリスに気がついてナナは口を開いた

「クリスどうしたの?何だか嬉しそうね」
「あぁ…今日新しい部下が入ったんだ。射撃の腕も良くてな…それに」
「それに?」

一度口を閉ざしたクリスはピアーズの顔を頭の中で思い出す
これから彼がどのようにチームの人間と付き合っていくのか見物だが、きっと頼りがいのあって仲間にとっても重要な存在になることをクリスは何となく予感していた

「…きっと俺の代わりになってくれるさ」
「クリスったらまだ部隊に行ったばかりじゃない…まだまだ活躍してもらわないとね」

笑うナナにクリスも同じように微笑んだ


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