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病院へと駆け込んだナナは一応検査をしてもらうことになった
結果を待っていると看護婦に呼ばれて医師の元へと行く
医師は入ってきた彼女に微笑むとおめでとうございます、と告げた
あぁやはり自分は妊娠しているのだとわかると泣きそうになりながらふっと笑いが出てきた
レントゲンの写真を見てみれば自分のお腹の中に小さな命があることがわかった
まだ本当に小さかった

病院を出てからナナは嬉しそうに自分のお腹を撫でて家へと帰宅した
クリスに電話をしてもいいのだがやはり自分の口からちゃんと伝えたい
彼は一体どんな顔をするだろうか?



「ただいま」

クリスが帰ってきたのがわかるとナナはソファーから立ち上がって部屋に入ってきた彼に抱きついてキスを交わす
彼女のキスを受けてクリスはふと食卓の上に並べられている食事がいつもと違って量が多く豪華な事に気がついた
今日は何かの記念日だっただろうか?と考えるが思い当たる事はなかった

「どうしたんだ?今日の夕飯はすごいな…」
「クリス…聞いて、私妊娠したの」
「え……本当か!?」

ガシッとナナの両肩を掴んで聞いてくるクリスに目を細めて頷いた
自分とナナとの間にできた子供
クリスは堪らなくなってそのまま彼女を高く持ち上げた
突然持ち上げられてナナは悲鳴を上げたのだがクリスは気にせず嬉しそうに笑っている

「やったなナナ」
「うん…っ!」
「男か?女か?」
「ふふっ…それはまだわからないよ。クリスはどっちがいい?」
「どっちでもいいさ、元気に生まれてくれれば」

自分の方へとナナを引き寄せて力強く抱きしめる
ちょうどすぐ下にあるクリスの頭を優しく抱きしめてナナも頷いた
健康で、元気で生まれてくれればどちらでもいいのだ

「明日から色々と買わないとな…あ、まずは空いてる部屋を掃除しないと」
「クリスったら…」

気が早いクリスの言葉にナナは嬉しそうに微笑んだ


* * *

吸い終わった煙草を灰皿に押し付けてクリスは懐からもう一本煙草を取り出した

「クリス、それ何本目?」

隣に座っていたジルに言われて気がつけば二箱目の最後の一本だった
咥えていた煙草を箱に戻すクリスの姿にジルはため息をついた

「気持ちはわかるけど…大丈夫よ。元気な子供が生まれてくるわ」
「わかってるが…やっぱり色々と不安だ。ナナは大丈夫だろうか?」
「父親になるのよクリス!しっかりして」

バシッと背中を叩かれてクリスは心配そうに手術室の大きな扉を見つめる
今、この扉の向こうでナナは頑張っている
ナナが家で破水をしたときクリスは衝撃が走った、痛み出す彼女を抱き上げて病院へと車で飛ばしてきたがあの時は本当に怖かった
もしあのまま赤ん坊が出てきたらと思うと…
その時扉が開かれて医師が出てくる、クリスはすぐに立ち上がって医師に近づいた

「おめでとうございます。女の子が生まれましたよ」
「女の子……」

医師から聞かされたと同時に無事に生まれたことにクリスは安心して一息ついた
数時間後、病室に戻ってきたナナによく頑張ったな、と額にキスをして隣に寝かされている娘に目をやった
小さな手に人差し指を持っていけば力強く握り返された
ナナから抱いてあげて、と言われてクリスはそっと赤ん坊を抱き上げた
そういえばクレアが生まれたときもこうして抱き上げた事があったな、と遠い昔の事を思い出す

「名前…どうしようか?」
「クロエ…なんてどうだ?」
「クロエ…うん、素敵」

名前が決まってクリスとナナは何度も我が子に向けて名前を呼んでいた


130617


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