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数十時間前にアフリカに辿り着いたクリスはアフリカ支部所属のシェバ・アローマと共に今回の事件を調査することになった
相棒、というシェバからの言葉に若干身体が反応してジルのことが頭を過ぎった
できれば案内だけしてくれれば後は自分ひとりで何とかできそうなものだったのだが見知らぬ土地ではやはりそういう訳にはいかなかった
そして二人はさっそく惨劇に巻き込まれる事となった


* * *

エクセラを追いかけて遺跡の奥へと辿り着いたクリスとシェバはこちらに背中を向けて立っていた彼女に銃を向けた

「そこまでよ!エクセラ!」

口の端を上げてふっ、と笑ったエクセラは手を叩きながら二人のほうへと振り向いた
その舐めたような態度にクリスは眉間に皺を寄せると口を開いた

「ジルの事についてしゃべってもらうぞ!!」
「ジル?そうね…教えてあげない事もないけど……どうしようかしら?」

彼女がそう呟いたときクリスとシェバの頭上からフードを被った人物が降りて来た
その人物はこれまでに何度も二人のジャマをしてきた人物だった
不意を突かれてしまった二人はすぐに体制を立て直し、シェバがその人物に向けて銃を向けたがすぐにその腕を捻られてしまいその隙に後ろにいたクリスの腕を足で蹴り上げ彼の右頬にも蹴りを一発入れると次にシェバに向けて回し蹴りを入れる
銃を構えなおしたクリスは一発打ち込み仮面に当てる事に成功した
仮面が取れたことに気をとられたのだが二人が銃を打ち込んできたので人間とは思えないほどの交わし方で距離をとった

「さっさと言え!!」
「相変わらずだな、クリス」

上から聞こえてきた忘れもしないその声にクリスは視線を向けた
S.T.A.R.S時代の自分の上司でもあり、そしてそれを裏切りナナの恋人と赤ん坊の命を奪った憎き男
ウェスカーはクリスを見ると口の端を上げて笑った
クリスはすぐに彼に銃口を向ける

「ウェスカー…!生きていたのか!」
「貴様とこうして顔を合わせるのはスペンサー邸以来か?久しぶりにあの時の3人が再会したんだ。もう少し嬉しそうな顔をしろ」
「3人?」
「やれやれ…鈍い男は嫌われるぞ?」

階段を降りて来たウェスカーはフードを被った人物の後ろに回りフードを握ると捲ってやる
するとようやく姿を見せたその顔は自分が探し続けていたジルだった
彼女は鋭い瞳でクリスを見つめていた
だがクリスは思わぬ再会に銃を降ろすと一歩近づいて彼女に声をかける

「ジル…俺だクリスだ」
「彼女がジル?確かなの?」

銃を向けたままシェバはクリスに問いかける
だが次の瞬間ジルは着ていたフードを放り投げるとクリスの胸板に向けて思い切り蹴りを入れるとシェバも投げ飛ばした。立ち上がってきたクリスの腕を押さえて首を掴んでいたのだがシェバに拳銃を向けられる、がウェスカーがすかさずシェバを突き飛ばすとクリスも同じように突き飛ばされた

「今日は気分がいい、相手をしてやろう……ちょうど2対2だ」

不敵に笑うウェスカーにクリスは銃を構えた


* * *

「ジル!!目を覚ませっ!!」

かつての相棒を押さえつけられながらもクリスは懸命に声をかける
残念ながらウェスカーには逃げられてしまった
彼を追いかけようとしたのだが操られたジルがそれを許さないし、彼女を放っていくわけにもいかない
逃げる前にウェスカーが手に持っていた装置でジルに何かをした。それと同時に彼女は苦しみだし胸元につけられた装置が姿を現したのだ
その装置を外せばジルが元に戻るかもしれない。シェバはジルを押さえつけるとその隙にクリスが装置を外した
ジルはそのまま床に倒れたのでクリスはすぐに駆け寄って抱き起こした

「ジル…大丈夫か?」
「クリス…ごめんなさい」
「いいんだ、気にしてない」
「シェバも……ごめんなさい。意識はあったけど逆らえなかったの」
「いいのよ。気にしてないわ」

申し訳なさそうに謝るジルにシェバは微笑んだ
その表情を見たジルも同じように微笑んでお礼を言った
クリスは彼女に肩を貸してやり立てさせるとジルは彼から離れてすぐに口を開いた

「私は大丈夫だから二人はウェスカーを追って」
「そんな事できるわけないだろ!」
「駄目よ!ウェスカーを止めないと…ウロボロスが世界にバラ撒かれたら世界は終わりよ!そしたらナナだって死んでしまう!」

ナナ…
自分がアフリカに行くときも冷静さを失っていた自分を取り戻してくれた、自分にとってはなくてはならない大切な存在
きっと今も自分の帰りを祈りながら待っているはずだ

「クリス!時間がないわ…相棒が信じられないの?」
「……わかった」

ジルに押されてクリスは先にエレベーターに乗り込んだ

「シェバ、クリスをお願い」

頷いたシェバはエレベーターに乗り込み扉が閉まった

「頼んだわよ、二人とも」

もうウェスカーを止めるのは二人しかいない、この先の世界の未来は彼らにかかっている
立っていることが限界だったジルはその場に倒れこんだ
二人が無事に世界を救うことを願いながら


130610


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