第6話


ジェイクの下僕になることを約束したナナ
そして放課後、長かった授業が終わりうーんと背中を伸ばしていた彼女の机の上に鞄が放り投げられた
それはナナの物ではなくジェイクの鞄だった。隣を見れば持てよ、と目で訴えてくる彼にむぅとした表情で睨みつけてやった
しかしここで逆らえば大好きなピアーズが傷つけられてしまう
鞄を持とうとしたときピアーズがナナに声をかけてきた

「ナナ」
「ピアく…ピアーズ先生どうしたんですか?」
「職員室まで資料を運ぶのを手伝って欲しいんだが…いいか?」
「も、もちろ「駄目だ」

口を挟んできたジェイクにナナもピアーズも驚いて彼を見る
椅子から立ち上がると彼女に自分の鞄を持たせて二の腕を掴んで自分の方に引き寄せるとピアーズに口を開いた

「コイツは俺の鞄持ちっていう仕事があるんだよ、てめぇ一人で運べ」
「お前こそ女の子に鞄を持たせるなんてどういう「あぁいいのいいの先生!!!」
「ナナ!?」
「わ、私が好きで勝手にやってることだから…」

ピアーズを守るために嘘をつかなくてはならないことがこんなにも苦しいなんて
本当は彼の手伝いをしたかった、だけど断らなければならないのだ
ナナが止めに入ったのでピアーズは何も言えなかった、おとなしく手を引いたピアーズにジェイクは満足そうに笑うとナナの手を引いて教室を出て行く
教室から出て行った二人にピアーズは眉間に皺を寄せて見送った


「ハハッ!最高だったなあの野郎の顔」

ゲラゲラと笑うジェイクにナナは無言だった
何も返事を返さない彼女に舌打ちするとナナが声をかけてきた

「ねぇ…どこまで鞄持ちさせるつもりよ」
「あ?そんなの俺の家までに決まってんだろうが」
「い、家!!?」

ジェイクの家と聞いてナナは思わず声を上げた
彼女の頭の中では男の家に行けばそれらしい雰囲気になって身体を重ねてしまう好意に発展するのではないかと想像すると頭を抱え込んだ

(わ、私のキスも初めてもピア君にって決めてたのに…!こんな最低な男に奪われちゃうの!!?)
「………安心しろよ、入り口まででいい」
「え…よ、よかった」
「とっとと行くぞ!!」

先を歩き出したジェイクを慌てて追いかける
学校から20分ほど歩いた所でナナは一軒の店を見つけてパッと顔を明るくさせるとその店の入り口まで歩いていく
数歩歩いていた所でジェイクが彼女が着いてきていない事に気づいて一軒の店の前で足を止めている事に気がついて後ろから近づくと頭を小突いてやった

「何寄り道してんだ」
「いた……ジェイク知らない?ここのアイスクリーム屋さんのアイスすっっごく美味しいの!中でもアップルカスタード味ってのがもう最高なの!!」

店の中を覗いてみれば彼女の言う味がお勧めされているのかポスターも貼られてあり大きく宣伝されているようだった、他の客がそれを買う姿も見られた
羨ましそうに見つめるナナに目を細めるとジェイクは店の中に入っていった
彼の行動に驚いてその場に立ち尽くしていたナナはジェイクの姿を目で追うしかできなかった
数分後アップルカスタード味のアイスを買ってきたジェイクはそのまま彼女に渡した

「え…?」
「やるよ」
「で、でも…お、お金払うよ!」
「いらね、俺が勝手にやった事だからな」

さっさと行くぞ、とジェイクは先に歩き出す
手に渡されたアイスと買ってきてくれたジェイクの行動にナナはどうしたらいいのかわからなくて戸惑ってしまった
彼の後を追いかけると口元に先ほど買ってもらったアイスを突き出した

「一口食べてみる?」
「いらねぇよ」
「おいしいよ?」

更にアイスが近づかれてため息をつくとうっすらと唇を開けて一口食べると甘いリンゴの味がジェイクの口の中に一杯広がった
一口食べた彼の姿にナナは満面の笑みを浮かべた

「おいしいでしょ?」

彼女の微笑みはとても綺麗でジェイクはドキリと心臓の音を鳴らした
感想を求めてくるナナにジェイクは口を開いた

「ケッ!こんな甘ったるいもん二度と食うか!」
「えー!?こんなに美味しいのに」

文句を言うジェイクに不満そうな声でナナは世界一の味だよ、と訴え続けた

しばらく歩いていると一つのマンションの前にやってきた
見るからに高級そうなマンションにナナはすごい、と小さく声を上げて見上げていた
ジェイクは彼女から自分の鞄を取り上げた

「ここでいい……」
「あ…うん……ジェイクのお父さんって何してる人?どこかの社長さん?」
「……下僕なお前には関係ねぇだろ!とっとと帰れブス!」
「な…!!」

マンションの中へと入っていったジェイクにナナは唇を噛むと大声で叫んだ

「ちょっと聞いただけじゃない!ジェイクのバカーーー!!!」

大声で叫んですっきりしたナナは怒りながら自分の家に向かって歩き出す
手に持っていたアイスを舐めながら、ふと考える

「……アイス買ってくれたりなんなのよ」


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