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BSAAと書かれたいくつもの船がスペンサー邸の付近の海を漂っていた
その中に船の先頭に立ち荒れ狂う海を鋭い瞳であちこちと見つめていたのはクリスだった
ジルが自分を庇ってウェスカーと共に崖に落ちた後、クリスはすぐに本部に連絡を取ってジルの捜索を行った
しかしこの広い海の中、そしてあんなに高いところから落ちたのだ
誰もが彼女が生きている望みが薄い中クリスは諦めなかった
うっ、と辛そうに声を上げてクリスはその場に蹲った。ウェスカーとの戦いの後なのだ、彼に何度も殴られたりしたので無傷ではなかった
クリスの近くに隊員数名が集まり彼だけは帰す事になった。否定するクリスだったが強制的に帰らされることになった

その次の日
家の中からクリスの車が見えたのでナナはすぐに玄関へと走っていく
連絡がなかったので心配していたがこうして無事に帰ってきてくれたことは嬉しかった
ドアノブが動いたのを確認して微笑んで扉の向こうの先を見たときナナの笑顔は消えた
怪我をしたクリスの姿がそこに合ったからだ

「……ただいま」
「…おかえりなさいクリス…何があったの?」
「骨にヒビが入ってたらしい…1ヶ月ほどで治るって」
「ヒビって…どうしたの?」

ナナの質問に答えずにクリスは部屋の奥へと入っていく
玄関の扉を閉めて彼の後を追いかけていく
ソファーの上にゆっくりと腰掛けてクリスはふぅ、と盛大にため息をついた
声をかけようとしてもクリスは顔を俯かせて何か考えているようだった
彼に近づいて小さく声をかけた、クリスは彼女の顔を見ずに太股ぐらいまで顔を上げると腰に手を回して自分の方へと引き寄せた
ちょうど自分のお腹の辺りにクリスの顔が当たりナナは彼の髪の毛を撫でる

「ジルが……俺を庇って崖から落ちたんだ」
「っ…!?」
「ウェスカーがいて……奴を捕らえようと必死になった。だが返り討ちにされて…」

クリスが話している中で出たウェスカーの名前
忘れかけていたはずの過去の記憶がナナの中に蘇った
血だらけになっていたコーディの姿、そして首を掴んで持ち上げられている過去の自分
その姿がクリスとジルに置き換えられた
呼吸が荒くなっていきナナは身体を震わせた、震えている彼女の様子に気がついたクリスは顔を上げて彼女を見る
ボロボロと涙を流して身体を震わせているナナを見て目を見開くとクリスは立ち上がって彼女を力強く抱きしめた

「すまないナナ…落ち着いてくれ大丈夫だ」
「はぁっ…はっ…クリ…スっ…」

彼の腕の中でナナは徐々に落ち着きを取り戻していく
ナナの中でもクリスの中でもウェスカーの存在は思っていたよりも大きいのだ
彼女の背中を撫でていたクリスはゆっくりとナナの身体を離した

「数日経ったら…ジルの捜索を手伝うから、しばらくは家に帰れない」
「!けどクリス怪我してるんでしょ…?」
「あぁ…無理はしないようにする。だが…家でじっとしてられない」
「……わかった…、でもその代わり毎日連絡して?」

もちろんだ、とクリスは微笑んでナナに答えた


130516


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