第4話


ジェイクがピアーズに喧嘩を売って数十分後
帰宅時間となった、ピアーズは挨拶をしてからすぐに教室を出て行った
彼が出て行ったと同時に生徒たちも立ち上がって帰宅の準備を始める

「はぁー新学期早々色々あったなぁ」
「あの転校生、先生に喧嘩売るとはねぇ」

先ほどのジェイクとピアーズの事を話しながら生徒たちは帰宅する
机の上に足を乗せていたジェイクにナナはもらった教科書の1冊を彼の頭に向かって投げつけた
投げつけられた教科書を手に取りジェイクは彼女を睨みつけた

「いてぇな…何すんだ」
「ちょっと!ピアくんを追い出すってどういうつもりよ!!」
「あ?そのままの意味だろうが」

教科書を彼女の机の上に放り投げるとジェイクは机から足を下ろしてナナの方を見つめた
青い瞳に見つめられて少し心臓がドキリと鳴った

「俺はアイツが気にいらねぇんだ、数ヶ月でこの学校から追い出してやる」
「き、気に入らないってどうして?今日初めて会ったじゃない…」
「ねぇねぇジェイク」

二人が話しているところに数人の女の子がやってきてジェイクに声をかけてきた
派手に化粧をした女の子たちでナナが苦手とするタイプだった
一人の女がジェイクの腕を掴んだ

「これからどっか遊びに行こうよ」
「……お断りだ」

女の腕を振り払うとジェイクは鞄を持って部屋を出て行く
振り払われた女は「つまんない男」とぼやいた
ナナも急いで鞄の中に教科書を詰め込むとジェイクの後を追いかけた
階段を降りて行く彼に声をかける、ナナの声にうんざりとした様子で足を止めて振り向いた

「まだ何か用か」
「ピアくんを追い出すなんて事はやめて」
「無理だな」

鼻で笑ったジェイクは再び歩き出そうとするのだがナナが先に彼の前に回りこんで両手を広げた

「…何してんだ?」
「わ、私を倒してから行きなさいよ」
「はぁ?」
「アンタがピアくんを追い出すっていうなら…私がピアくんを守るから」

ナナの発言にジェイクはきょとんとした顔で彼女を見つめる
自分を倒していけというがジェイクなら数秒でカタがつく
男の自分に敵うわけがないと彼女もわかっているはずなのにどうしてピアーズの為にここまでやるのか
ジェイクは唇を噛むとナナの手首を掴んで壁に押し付けた

「ちょっ…何するのよ!!」
「倒していけって言っておきながらこのザマか…ブス」
「っ!!…くっ…!!」

両手を上で一纏めにされているため自由になっている足をバタバタと動かすのだがなかなか当たらない
自分の無様な姿に泣きそうになるナナにジェイクは追い討ちをかける

「これじゃあアイツを守るなんて無理な話だな」
「っ…」
「何してるんだ!!」

ジェイクの肩がグイッと力強く引かれてその衝撃でナナも解放された
ピアーズが助けてくれたのだ、彼の登場にジェイクは舌打ちをする

「女子への暴力は許さないぞ」
「チッ!イチイチうるせぇな!!!」

ピアーズを殴ろうと拳を振り上げたジェイクだったがピアーズの前に身体を張って出てきたナナの姿が目に映りすぐに拳を下げた
ピアーズも彼女が自分を庇ってくれた事に驚いていたようだった
近くの壁を蹴ってジェイクはその場を去っていく
その背中を見送るとナナはピアーズに声をかけた

「ピア……ピアーズ先生、大丈夫ですか?」
「あぁ平気だ、君は?」
「私は大丈夫です」

ニコリと微笑むナナにピアーズは目を細めて頭を撫でた
撫でてきたピアーズに驚いたような顔をするナナ

「昔から無理するところは変わってないな」
「え…?む、昔って…」
「覚えてるよ。幼なじみのナナだろ、久しぶりだな」

昔と変わらない優しい微笑みにナナはボロボロと涙を零す
急に泣き出した彼女にピアーズは慌ててポケットからハンカチを取り出して涙を拭いてやると声をかける

「ど、どうしたんだ!?」
「だってだってぇ…ピアくん覚えてないって……」
「…仕方ないだろ、みんなの前でピアくんって言うし…今は色々と難しいからあの場ではああいうしか…」

ちゃんと覚えているから、とピアーズはガシガシとナナの頭を撫でた
確かにあの場で幼なじみといって理解するものもいれば、本当は恋愛関係にあるのではないかと考える人間だっている
教師と生徒の恋愛は禁止なのだから
まぁ彼女とそういう問題にはならないだろう、とピアーズは泣きじゃくる幼なじみを慰めながら思った


130510


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