第XX話 Epilogue


ビリーが死んでから数ヶ月の月日が流れた
私はまだ生きている、ビリーがいないこの腐った世界で


Epilogue


虚ろな目をしてふらふらと街を歩くナナ
ふと一軒の店の前に来た、自分が気に入っているパスタの店だった

――ナナの笑顔が見れるあの店がいいんだ

あの後、本当ならもう一度二人でこの店に来て彼が好きな笑顔を見せるはずだった

店の前で立ちすくむナナを見た老婆が彼女に声をかけてきた

「貴方……ビリー・コーエンをヒーローだと訴えていた子よね…?」
「……」
「……愛していたのね、彼の事を……亡くなってつらいと思うわ、でもまた愛する人ができるわ」

元気を出してね、と彼女の肩を優しく叩いてその場を去っていく
彼以上に愛する人ができるとは思えない
それに自分がビリーはヒーローだと訴えたときにあの老婆は何かしてくれただろうか?
今更になって声をかけるなんてどういうつもりなのだろうか?

ここは彼との思い出が多くてつらすぎる
そのままふらふらと宛てもなく彼女は街から出て歩き続けた
もうこのまま死んでも構わなかった


* * *

彼女がたどり着いた先は海の見える小さな街だった
その海を見つめながらナナはビリーが海兵隊にいた事を思い出す
そしてふと、彼の幻が見えた
ナナは目を見開いて立ち上がる、ビリーが優しく微笑んだ後そのまま背中を向けて海に向かっていく

「待って…ビリー……私も今そっちに行くから…」

海に飛び込もうとした時だった

ドクンッ!!!

「うっ…!?」

思わず吐き気が催してきてその場に跪く
それはすぐに収まったのだが彼女は海を見つめればビリーの姿はなかった
そして信じられないといった様子で自分のお腹を撫でた

「まさか……?」
「おーいお嬢さん、そんなとこにいたら危ないよ〜」

後ろを振り返ってみれば釣りの帰りらしい老人がいた
ニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべている
そしてナナがいる高い塀へと上ってきた

「あんたもここの海を見に来たのかい?」
「ぁ…そ、の…」
「ここの海には伝説があってな、死んだ人間がこの海に帰ってくるっていうんだよ。そしてまた新しく生まれ変わってくるんだ……まぁたま〜に死んだ人間が幻として現れるとかいう話もあるが、そればっかりはわからんのぉ」

老人の話を聞いたナナは涙を流した
ビリーは死んだのではなく海に帰ったのだ、この海でいつでもビリーと会えることができるのだ

「素敵な街ですね……」


* * *

そして半年後……

一つの部屋で周りから頑張れ、と声が響き渡る
そう今まさに新しい命が生まれようとしているのだ

「おぎゃあああぁっ!!」
「頑張ったわね!男の子よ」

女から自分の子供を受け取り男の子と聞いた母親は涙を流した

「おかえりなさい…っ!ビリー…っ!!」



120715


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