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疲れが溜まっていたのもあるのだがクリスはその日の朝はいつもより遅くに目を覚ました
時計を見てみれば10時半過ぎ、そんなに疲れていたのかと頭を掻きながら再びベッドに身を沈めた。その時キッチンから音が聞こえて再び目を開けて隣を見れば
ナナの姿がないことに気がついた。身体を起こしてクリスは一度背伸びをするとキッチンへと足を向ける
ちょうど焼きあがったのかベーコンエッグが皿に盛り付けられる、トーストも焼き上がり取り出しているところで壁にもたれてこちらを見ているクリスに気がついた

「おはようクリス」
「おはよう…朝早くから作ってたのか?」
「ん…何だか目が覚めちゃって……クリスは?よっぽど疲れてたみたいね」

その疲れの原因は自分のせいだが、とナナは思いクリスの頬を撫でると顔を俯かせた
顔を俯かせた彼女の頭にクリスは手を乗せた

「ナナのせいじゃないからな、休暇をもらえたのが久しぶりなんだ。今までの仕事の疲れもあるんだ」
「クリス……」

彼の顔が近づいてくるのがわかるとナナは目を閉じた
唇が塞がれるとちゅ、と音を立てて離された目を開ければクリスは優しく微笑んでおり食べよう、と彼女の背中を押して椅子に座った
ガツガツと昔と変わらず食べるクリスの姿にナナは目を細めた、変わっていない何も


朝食を食べ終えて食器を洗っていると誰かが来たらしく呼び鈴が聞こえる
自分が出る、とクリスは拭いていた皿をそっと籠の中に置くと入り口へと向かう
ナナも気になったので水の蛇口を止めて小走りで玄関へと向かった
扉を開ければジルがそこに立っていた

「おはようクリス、ナナ」
「ジル…どうしたんだ?」
「久しぶりの休暇でしょ、ナナを連れてショッピングにでもどうかと思って」

微笑んでジルはナナを見る
誘われた彼女はどうしようかと身体をもじもじとさせている
クリスはそんな彼女を見て背中を押してやった

「行って来るといい」
「クリス…」
「…荷物ちょっとしか持ってこなかっただろ?色々と必要なものも買わないといけないんじゃないか?」
「そうよ、気分転換に行きましょ」
「でもクリスは…?」
「俺の事は気にしなくていい、休暇はまだあるからまた一緒に出かけられるさ。今日は女同士で楽しんでくるといい」

優しく微笑むクリスにナナも嬉しそうに頷くとちょっと待ってて、とジルに告げてから部屋の奥へと入っていく
その背中を見送ってクリスは部屋の中で待つようにジルに言って彼女を中に入れてから扉を閉めた

ジルと出かける事によって少しでもナナが笑顔になって、少しでも早く事件の事を忘れてくれるようにクリスは心から願った
傷が癒えるのは相当な時間がかかると思われるが
準備を終えたナナの手を引いてジルは一緒にクリスの部屋を出た


130419


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