41


空港でジルと再会したときには驚きと嬉しさで涙が零れ力強く彼女を抱きしめた
あのラクーンの悲劇で彼女は死んだと思っていたし二度と会えないと思っていた
久しぶりね、と声をかけてきたジルの声はあの時と何も変わっていなくて安心した
空港で出発準備の放送が流れるとクリスに背中を押されて3人は飛行機に乗り込んだ
飛行機の中で食事を済ませるとクリスは疲れていたのか腕を組んで目を閉じていた、自分を探しに来たときも相当な汗をかいていたことをナナは思い出し係員に声をかけて毛布を1枚貰うとクリスの膝の上にかけてやった

「クリス…毎晩ナナの事を考えてて眠れない事もあったみたいなの」

眠っているクリスを見ながらジルは言った
ナナが病院に運ばれてからクリスは毎日お見舞いに行っていた、時間が許されるまで彼は彼女の側にいた
しかし病院から戻った後クリスはナナの傷ついている姿にどうしたら元気になってくれるのだろうと悩んでいたのだ
自分の事を考えてくれていたクリスの想いを聞いてナナは胸が痛んだ
そこまで想ってくれていたのに自分が自殺しようとした時を見たクリスはどれだけ胸が痛んだのだろう、苦しかったのだろうか?

「でもまぁ…手放したクリスも悪いけれど……でもいいわ、こうしてまた二人が一緒になったんだから」
「ジル……」
「今度離そうとしたら噛み付いてやりなさい、意地でも離れるものかって…」

ジルの言葉にナナは頷くと眠っているクリスの肩に頭を預けて目を閉じた
自分ももう離れない、これ以上大切な人を失いたくないから
ウェスカーとの闘いが終わるまでは安心できる日は来ないのだろうが


* * *

クリスが住んでいる町に着くとここでジルと別れる事になった
また遊びに行くわ、と彼女と固い握手を交わして連絡先を教えてもらいタクシーに乗るジルを見送った
クリスもタクシーを止めると後ろのトランクに鞄を乗せて先にナナを乗せてから自分も乗り込んだ、運転手に行き先を告げて車は走り出す

「クリスはもうこの街にずっと住んでるの?」
「あぁ……俺の入ってる組織がここにあるんだ……といっても結局は仕事で飛び回ってる事が多いからあまり家にいる事は少ないが……」
「……そう」

家にいることが少ない、と聞いてナナは目を伏せた
きっとこれから先自分と暮らしても彼は家にはあまりいてくれないのだろうと思ったからだ
好きな人の側に入れる、しかし常に側にいる事はできない
仕事だから仕方がない子供のように駄々をこねるわけにはいかないのだ

ようやくクリスの住んでいる家にたどり着いた
荷物を降ろしてクリスの後に着いて行き彼の部屋へとたどり着いた、クリスは鍵を開けて扉を開けた。先に入るようにナナに促した

「さぁ……今日からここが俺とナナの家だ」
「うん……」

一歩部屋の中へと足を踏み入れる、今日から始まる二人の生活
後ろからクリスに抱きしめられた

「おかえりナナ」
「……ただいま…クリス」

抱きしめられた大きな手の上に自分の手を重ねて涙を流した
不安な事は色々とある、だけどクリスとなら乗り越えていけるだろう
自分ももっと強くならなければ
腕から抜け出て部屋の奥へと進むと…昔と変わらず散らかっていた
そういえば彼の部屋に初めて行った時もものすごく散らかっていた事を思い出す
クリスは慌てて鞄を置くとすまない、と謝って詰んであった雑誌を片付け始める
ナナはその姿に微笑むと同じように散らかっている服を拾い始めてクリスに口を開いた

「大丈夫…これからどれだけ散らかしても私がいるから大丈夫よ」
「!…あぁ、そうだな」

これからはナナがいる生活、二人の生活が始まるのだ
クリスも微笑むと彼女の手に自分の手を重ねた


130418


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -