第1話


春……出会いと別れが繰り返されるこの季節
そして幼い少女にも別れが告げられようとしていた
彼女の隣に住んでいた年上の幼なじみが引っ越す事になってしまったのだ
生まれたときから何かと面倒を見てくれた為、当然彼女も彼に懐き好意を抱くのは当然かもしれない

「ひっく…やだよ…ピアくん…いかないでっ…」
「泣くなよナナ」

自分が引っ越す事で泣き出す彼女の小さな頭をピアーズは優しく撫でる
そして目線を合わせるようにしゃがみこんで優しく話しかける

「大きくなったらまた会えるさ」
「…っく…ほん、と…?」
「あぁ…」
「…じゃあ…かえってきたら……ナナ、ピアくんのおよめさんになるっ!!」

驚いたように目を見開いていたピアーズだが目を細めると優しく頭を撫でた


* * *

数十年後――
バタバタと階段を降りてくる足音にナナの母親はため息をついた
そう、今日から新学期が始まるというのに彼女は寝坊してしまったのだ

「ナナ!!ちゃんと目覚ましはかけたの!?」
「ご、ごめんなさいお母さん…ちゃんとかけたんだけど二度寝しちゃって…」
「まったく!ご飯なんて食べてる暇ないわよ!さっさと行きなさい」
「はい!いってきますー!」

鞄を持って走っていくナナ
今日から彼女は高校2年生になる、新しいクラスと担任が発表されるドキドキと心臓がうるさい日だ
そのせいもあってか彼女は昨夜なかなか眠る事ができなかった為朝早く起きられなかったのだ
赤信号に早く変わって欲しいとバタバタ足ふみをしながら青に変わった直後に急いで走り出す、このまま走っていれば間に合うかもしれない
そう思いながら角を曲がったときだった、道端に落ちていた缶コーヒーを蹴り飛ばしてしまい少しだけ残っていた中身が運の悪いことにガラの悪そうな男の服にかけてしまった
男は舌打ちをするとすぐにナナの方へとやってきた

「おいおいどうしてくれんだよ姉ちゃん」
「ご、ごめんなさい…」
「まぁそう怒るなよ、よく見りゃ可愛い顔してんだし……謝罪の方法ならいくらでもあるじゃねぇか」
「そうだな…とりあえず俺たち全員に一発ずつヤらせてもらうか」
「え…!?」

人気の無い場所へと連れて行かされそうになりナナは危機感を感じた
自分の初めてのキスも身体を重ねる事も絶対にあの人でないと嫌だった
昔から思い続けているあの幼なじみだ
固く目を閉じてナナは足を振り上げると男の股間に命中してその男は前を押さえて地面に蹲る。その隙に彼女は逃げ出したのだが他の男たちが追いかけてくる

「てめぇ待てやコラッ!!!」
(ひぃ〜〜〜っ!!!)

泣きそうになりながらも必死にフェンスを乗り越えて飛び降りた時だった
下に人がいるのが見えた
ナナの叫び声に気がついたその男は咄嗟に上から落ちてきた彼女を抱きとめた
目を固く閉じていたナナがそっと目を開ければ坊主頭の男に姫抱っこされていた
しばらく見詰め合っていた二人だが彼女を追いかけてきた男たちが同じように上から降りて来た

「何だよてめぇ…そいつの男か?」
「ち、違いますっ!この人は無関係です…っ!!」
「ハッ!その体制で何言ってんだよ」

指の関節を鳴らす男たち
ナナを抱きとめた男は彼女を降ろすと同じように間接を鳴らす
そして飛び掛ってくる男たちをあっという間に倒してしまったのだ
そのまま男たちは捨て台詞を吐いてその場を去っていく、情けない男の姿に坊主頭の男はふん、と鼻を鳴らした

「(す、すごいよこの人!かっこ良かった〜!)あ、あの助けてくれてありがとうございますっ!!」

お礼を言うナナに坊主頭の男は彼女の両頬を摘んで引っ張った

「!?い、いひゃいいひゃいっ!!」
「…こんなブスが俺の女だなんていい迷惑だぜ」
「ブ、ブス!?何てこと言うのよ!!」
「ブスはブスだろうが、朝からくだらねぇ事に巻き込まれちまったぜ」

助けてくれた男にブスだと言われてナナはさっきのお礼を前言撤回したくなった
いい人だと思っていたのにまさかの口の悪さ…
そのまま男は片手を上げて去ろうとする、自分も急いで学校に行かなければならない事を思い出したのだが男の服装を改めて見れば自分と同じ学校の制服を着ていた

「ねぇどこに行くの?学校はこっちだよ…あなたもBSAA高校でしょ?」
「うるせぇ俺に構うなブス」
「っ!!…もういいわよブスで!何の理由で学校に行きたくないのかわからないけどこっちだからねっ!!」
「お、おい!!」

男の手を強引に引いてナナは学校への道を走り出した


130413


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