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数日後
コーディの葬式が執り行われた、彼のその人柄もあってか多くの人たちが最後の別れにやって来た
その中にはナナとそして彼女の兄がいた、コーディと親友だった兄は悔しそうに涙を流していた
「くそ…っ!コーディが何したっていうんだよ…っ!」
「兄さん……」
兄の大きな背中をナナは優しく撫でる、兄を宥めながら地面に深く埋められている棺おけに向かって花を投げた
「かわいそうに…まだ若かったのに……」
「残された恋人もかわいそうね」
周りから聞こえるヒソヒソ声にナナは黙っていた
これから自分は恋人を亡くしたかわいそうな女、として周りに見られるのだろう
変に気をつかわれて慰められたりするのだろう
そしてその度にコーディがこの世にいないのだと思い知らされるのだ
* * *
葬式を終えてからナナは病院へと戻った
家には警察が入っている為しばらく帰ることもできない、いや帰りたくもなかった
あそこでコーディは殺されたのだから。恐ろしい記憶が蘇る
食事も手につかなかった、今も彼女の手には点滴がされている
これからどうすればいいのだろうか?
「ナナ……引っ越さないか?」
「兄さん?」
「……嫌だろ?もうこの街にいるのは……」
兄からの提案にナナは天井を見上げて考える
確かにコーディを失ったこの街で過ごすのは辛い記憶を思い出すだけだ
兄も今回の事で非常にショックを受けているのは確かだ
その時だった部屋の扉がノックされてクリスが入ってきた
「誰だアンタは?」
「…クリス・レッドフィールドだ」
「クリス…!?」
クリスの名前を聞いて兄はナナがずっと探していた恋人だと気がついた
そしてすぐに彼に詰め寄る
「今更ノコノコ現れたのか?出て行ってくれ!」
「……今回の事件で話がある」
「話……?」
「……俺が、どうしてナナの前からいなくなったのか」
その言葉には兄だけではなくナナまでもが目を見開いた
驚く彼らを見つめてクリスは一つずつ語り始めた。ナナと最後に会った次の日に洋館事件に出くわした事、Tウィルス、Gウィルス、アンブレラ……そしてアルバート・ウェスカーの事を
信じられなかったがクリスが嘘をついていると思えないが、ここでようやくナナはクリスが何故何もいわずに出て行ったのか理由がわかった
黙って聞いていたナナの兄は信じられないという顔をしていた
「信じられない…が、全部本当なんだろうな……だがお前と関わっているとまたその男に狙われるんじゃないのか?」
親友の胸に穴を開けた男……許せないが恐怖でもある
クリスは頷いた
「そうかもしれないな…」
「……出て行ってくれ、もう厄介事はごめんだ」
「だが今回の事でようやくわかった……本当に大切なら離さずに側にいて守ってやるべきだったんだ」
ナナの方へとクリスはゆっくり近づく
そして彼女の小さな手を力強く握り締めた
「俺に…もう一度チャンスをくれ。今度こそ君を離したりしない、ずっと側で守っていく」
「クリス……っ」
「ふ、ふざけるなっ!お前のせいでナナは恋人を失った挙句、もう子供が産めなくなったのかもしれないんだぞっ!!お前のせいでっ!!!」
やり場のない怒りの篭った拳をクリスにぶつける
殴られたクリスは口から出てきた血を己の拳で拭った
二人のケンカにナナは涙を流す
「やめて…っ!兄さん…っ!!」
「出て行けっ!!出て行けっ…!!っ…くぅ…っ!!」
もう一発拳が飛んできたのだがクリスはそれを受け止める
放そうと兄はもがくのだが鍛えているクリスに勝つことはできずに悔しそうにその場に蹲った
そんな彼の肩にクリスは手を置くと口を開く
「あんたも疲れてる…今日は帰らせてもらう。また明日も来るから」
そのまま立ち上がるとクリスはナナの額にキスをして病室を出て行った
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