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2003年…
クリスとジルはロシアにいた
ロシアにあるアンブレラの工場に新たなB.O.Wが生産されていることに嗅ぎつけた二人は所属する私設対バイオハザード部隊が向かい、そこで開発されていた新型B.O.Wテイロスを無事に撃破した
一台のヘリが空へと旅立つのを見送るジルにクリスが口を開いた

「近いうちにケリはつく…奴らにとってもこれは致命的だからな」
「アンブレラ壊滅は時間の問題………でも」
「……あぁ、アイツが残ってる」

クリスは目を閉じてある人物を思い出す
かつて自分たちの上司であったアルバート・ウェスカーの存在を…ロック・フォート島で再会したのだが止めを刺すことはできなかった
このままウェスカーが黙っているとは二人には思えなかった
考え込むクリスの背中をジルが軽く叩いた

「帰りましょう……久しぶりに休暇をもらえたんだし」
「……そうだな」

彼女は微笑むと待機しているヘリへと向かう
山の隙間から覗かせる朝日に目を細めてクリスも同じようにヘリへと乗り込んだ


* * *

「これと…後これも包んでちょうだい」
「はい、かしこまりました」

お客さんに言われた花を一つずつとり少し待ってもらうように頼むとラッピングをするために奥へと向かおうとした時傍に置いてあった植木に足を引っ掛けて倒れそうになった
しかしすぐさまコーディが彼女を抱きとめる

「大丈夫か?」
「え、えぇ…ありがとうコーディ」

ナナはお礼を言ってそのまま奥へと向かう
その様子を見ていた主婦がニヤニヤと笑いながらコーディに声をかける

「本当仲がいいわねーコーディ」
「ハハッ…付き合ってもう数年になるんだ。当たり前さ」
「そろそろプロポーズとか考えてるんでしょ?」
「……まぁね、数日後彼女の誕生日なんだ」
「まぁ素敵じゃない!応援してるわ」

苦笑しながらコーディはお礼を言う
ナナに告白をしてから数年の月日が流れた、付き合って最初の頃はやはりクリスの事を思い出すのか時々切なそうな顔をしていた
コーディはなるべく思い出させないように常にナナの傍にいて一緒に出かけたり話をしたりと楽しい思い出をたくさん作った。それもあってか彼女は最近クリスの事を思い出す事が減っていたのだ
そろそろ男としてけじめをつけるため彼女と結婚する事をコーディは真剣に考えていた
そのときラッピングを終えたナナが奥から現れて主婦に渡す
受け取った主婦はコーディにウィンクをしてその場から立ち去った

「そろそろ夕飯の買出しに行かなきゃ」
「じゃあ俺も行くよ、店ももう閉める時間だしな」
「えぇありがとう」

閉店の準備をしてコーディはシャッターを降ろして鍵を閉める
ナナはすぐに彼の腕に自分の手を絡ませて近所のスーパーへと歩き出す
告白を受けてから1年後に二人は同棲を始めた、主に料理をするのはナナだが二人で一緒に作ることもあった

「今日は何が食べたい?」
「そうだな…まだ寒いからクリームシチューがいいな」
「ふふっ、ホント好きね」

2週間前も食べたというのにまたリクエストしてくるコーディにナナは笑った
二人はスーパーへと足を踏み入れた
その時1台の車がスーパーの近くへと止まる
車に乗っていた人物はクリスとジルだった。運転していたクリスは真剣な眼差しでジルを見つめた

「この街のどこかに…アイツがいる」
「えぇ…この街がまたラクーンの悲劇にならないためにも必ず捕まえないと」

平和に過ごしている街の住人を見ながらクリスとジルは固く決意をする
エンジンを切ったクリスはジルと共に車から降りてスーパーの中へと入っていく
1週間ほど前にロシアでの任務を終えた二人だったがアルバート・ウェスカーがこの街に潜んでいるという情報を聞き出してついさっきこの街に着いたばかりだった
何週間かこの街に滞在するためとりあえず何か口に含めるものを買うことになった

「これが休暇中なら良かったのにね」
「あぁ…本当にな…!!」

その時男と肩がぶつかる
クリスの肩にぶつかった男はコーディだった、彼はすぐにクリスに頭を下げた

「すみません!余所見してて…」
「あぁ…平気だ」

微笑んで言うクリスにコーディも同じように微笑むと向こうの棚から彼を呼ぶ女性の声が聞こえてコーディはすぐに向かう
そのままコーディを見送っていた二人だが再び彼が現れてレジへと向かうのが見えた
次の瞬間クリスの目が大きく見開かれる
コーディの後に続いて出てきた人物がナナだったからだ
クリスは思わず彼女に駆け寄ろうとしたのだがジルに止められてしまった

「駄目よクリス……これはあなたが望んだ事でしょ?ナナを巻き込みたくないから連絡も取らなかったんでしょ、B.O.Wとは全く無縁の男性と幸せに暮らす……それがあなたの考えるナナの幸せでしょ?」

コーディにぴったりと寄り添うナナの姿を見てクリスは胸を痛めた
ジルの言うとおり自分が望んだ事だ
他の男といる方がいい、アンブレラや生物兵器に関わっている危ない自分と一緒にいるよりは

「……ありがとうジル、お前がいなかったら行くところだった」
「……彼女たちが出るまで私たちはしばらくここにいましょ」

奥へと進むジルに続いてクリスはもう一度レジの方を見た
ナナがいる、間違いなく彼女がこの街にいる
抱きしめる事もキスをすることももうできないけれど、彼女がいるこの街を守る事が今の自分にできる事
クリスはウェスカーを必ず捕まえる事を固く胸に誓った


130327


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