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コーディに迎えに来てもらい車は走り出したのだが一向に店に着く気配がなかった
一体どこに向かって走っているのか、見慣れない景色に不安になったナナがコーディに声をかけた

「ねぇ…どこに行くの?」
「今日は店は休みだ、気晴らしに出かけよう」
「え…で、出かけるって…」
「店にいても辛いだろう?また恋人を待ち続けながら過ごすんだ……君には気分転換が必要だよ」

彼の言うことにも一理はあった
本当は店を休みたい気分だった、嫌な事や辛い事があったときに仕事に行きたくなくなるのは誰もがあることだ
信頼している兄もいつかは探す事を諦める日が来るだろうとは思っていた

ナナはコーディに頷いて出かける事に賛成した
それを見た彼もそうこなくっちゃ、と言わんばかりに微笑んだ


やってきたのは遊園地だった
平日だった事もあってか人は少ない方だった
チケットを買ってコーディと共に中に入る、遊園地なんていつ以来だろうか?とナナはメリーゴーランドを見ながらぼんやりと考える

「どれに乗りたい?」
「え?あー…特には……」
「じゃあアレなんてどうだ?」

彼が指をさした方向を見ればたくさんの人の叫び声が聞こえるジェットコースターだ
50メートルぐらいの高さからものすごいスピードで滑り落ち、その後も急なカーブなどが続くのだ
ゴクリ、とナナは唾を飲み込んだ

「え、えーと…ちょっとああいうのは…」
「大丈夫だ、俺がついてる」
「あ、あの!コーディ!?」

ナナの手を引いてコーディは乗り場へと走る
彼はジェットコースターが好きなのか少年のように笑顔になっている
その少年のような笑顔はまたもクリスを思い出させた


* *

「…大丈夫か?ナナ」

ジェットコースターに乗り終わった後ナナは近くのベンチに座っていた
酔ったとかではなく想像以上に怖かったので思わず座り込んでしまったのだ
そんな彼女にごめん、と謝りながら彼は缶コーヒーを渡す
涙目になりながら彼女は缶コーヒーを受け取る
コーディは突然ふ、と笑った。一体何に笑っているのかとナナは彼を見上げる

「いや…ナナがこの世の終わりみたいな叫び声を上げるから……思い出したら何だか笑えてきて…」
「…酷いコーディ……私本当に怖かったんだから…」
「ハハッ…だってギャアアアアアッッ!!って…ハハハハッ…!!」
「そ、そんなのじゃないわ…ふふふっ…!」

二人で思い出して大笑いする
大声で笑うナナを見てコーディも嬉しそうに目を細めた

「うん…やっぱり君は笑顔が一番いい」
「え…」
「笑っている方が可愛いって事」
「っ…!」

可愛い、と言われてナナは顔を赤く染める
そういえばクリスとデートをした時も言われたことがあるな、と思い出す
またもクリスの事を思い出したナナはハッとなって首を横に振った
今はコーディと出かけているのだから彼の事は思い出さないでおこう
また気持ちが落ち込んでしまうから

「よし行こう!」
「えぇ」

元気になったナナを見てコーディは彼女の手を引いて行く
その後も二人は強烈な乗りものに乗ったり、メリーゴーランドに乗ったりゲームをしたりなど色んなものをして楽しんだ
そして気がつけば夕方になっていた、人も帰り始めるころだ

「最後に何か乗っていく?」
「うーん……そうね観覧車かな」

ナナが指をさした方向を見ていいよ、と彼も答えると二人で乗り込んだ
ゆったりとした時間が二人の間に流れる
沈黙を続けていたが、ナナから口を開いた

「…今日はありがとう、コーディ。とっても楽しかった」
「そうか…よかったよ」

お礼を言うとナナは再び景色を見つめる
段々と頂上へとやってきていることがわかった、ふと上の観覧車を見ればカップルがキスをしていて切なそうに目を細めた
するとコーディが彼女の名前を呼んだ

「ナナ……もし君が今の恋人の事を諦めるのなら、俺とつきあってくれないか?」
「え…!?」

思いもよらなかった告白にナナは戸惑いを隠せない
彼はふざけている様子でもなく真剣な瞳で彼女を見つめている

「コーディ…私…」
「返事はすぐじゃなくてもいいよ。数年先になってもいい……俺は君に惚れてるんだ」
「……」
「考えてくれないか?」

どうしたらいいのかわからなかったがナナは俯いたままコクリと頷いた
その様子に彼もありがとう、と頷いた


車で送ってもらったナナはコーディにお礼を告げてすぐに家の中へと入るとシャワーを浴びる
ずっと告白の事を考えていた
コーディと付き合えばクリスの事を諦められるのかもしれない
だけどもしクリスの行方がわかったら…
そんな事を考えると今夜も眠れないかもしれない、とため息をついてシャワー室を出た


130321


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