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泣き止むまでコーディはナナの側を離れなかった
ずいぶんと時間が経ってからナナはようやく落ち着きを取り戻した
その時にはすでに日も暮れていて店の閉店時間になっていた
黙々と後片付けをするコーディを手伝うナナだが今日は彼に迷惑をかけてしまったことに心を痛めていた
「コーディ…」
「ん?」
「……ごめんなさい、私のせいで今日あんまり仕事できなくて」
謝る彼女にコーディは首を横に振ると優しく微笑んだ
その優しさがまたナナの心を痛める
「どうして?怒ってくれてもいいのよ?」
「…俺もさ、彼女と連絡がとれなくなったときショックで数日店休んだ事があるんだ。だからナナの気持ちはものすごくわかるんだ。だから気にしなくていいよ」
「……コーディ、ありがとう」
泣きそうになるのを堪えながら彼女は手を進める
すべての作業を終えてからコーディに自宅まで送ってもらう事になった
一人で帰れる、と彼に何度も言ったのだが物騒だし泣いた後もあってか心配して送ってくれる事になったのだ
「私……諦めるべきなのかな?」
ポツリ、と呟いたナナの言葉にコーディは口を開く
「……ナナがまだ彼の事を忘れられないなら待っててもいいと俺は思う、けど君の兄が言うことにも一理あるんだ。君はまだ若いし…新しい恋人を見つけるのもいいと思う」
「……うん」
「さぁ、着いたよ」
ナナの住んでいるアパートの前に車が止まる
シートベルトを外してもう一度コーディの顔を見た
「…今日はごめんなさい、それと……ありがとう」
「気にしなくていいよ。ゆっくり休んで、おやすみ」
頷いてからナナは車を降りてアパートへと入っていく
彼はそれを見届けると車を走らせた
その日の夜
ナナは兄とコーディに言われた言葉を考えながらベッドの中にいた
クリスが連絡をくれないのは何か理由がある。だけどその理由は自分には教えられないこと
兄の言うとおり、女ができた線が一番大きいのだがどうも引っかかる
彼の突然の出張とどこか悩んでいた様子
だけどクリスは自分に何も話してくれなかった、ハッキリ言って自分は信頼されていないのだと傷ついた
「……私たち、そこまでだったの?」
頭の中でクリスの顔を思い浮かべてナナは問いかける
しかし当然答えてなどくれない
彼女は考えるのをやめて瞼を閉じた
翌日
いつものように支度を終えたナナが部屋から出て目を見開いた
コーディの車が止まっていたからだ
慌てて駆け寄れば運転席の窓が開いて彼が顔を覗かせた
「おはよう、よく眠れたか?」
「お、おはよう…どうしたの?」
「…昨日の事もあって気になったから迎えに来たんだ、乗って」
まるで彼氏のようだな、とナナはふと考えたがすぐにその考えを消した
彼はただ自分を心配して迎えに来てくれただけだ
親切心でやってくれているのだと自分に言い聞かせて彼女は急いで助手席に乗った
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