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あの少年が来なくなってから数ヶ月の月日が流れた
いつもの繰り返しでクリスの情報は全然入ってこなかった

「ナナ」
「コーディ?どうしたの」
「兄さんが来てるよ。一緒に昼飯でもどうかって…俺店番してるから行っておいでよ」

ナナの兄が迎えに来ている事を聞いて彼女は店の奥へと引っ込んでエプロンを外すと鞄を持って表へと出た
表へ出れば車に乗った兄が片手を上げたのでそれに微笑むと助手席に乗り込んだ


近くのファミレスへとやって来て注文を頼む
紅茶を飲んでいるナナを見ながら兄は口を開いた

「恋人の情報はない…残念だが」
「そう……」
「……なぁナナ、もう忘れたらどうだ」
「え……」

目を見開いて思わず兄を見つめる
彼はふぅ、とため息をついて再び話し始める

「恋人のお前に何も連絡を取らないなんておかしいだろ、きっとどっかで女作って仲良くやってるんだよ。お前も忘れた方がいい、俺はこれ以上お前が悲しむ顔をしてるのは嫌なんだ」
「でも……きっと何か事情があって…」
「何の事情だ?女がいるから連絡とれないんだろ。俺はお前の為を思って言ってるんだ、とにかく俺はもう探すのはやめる。お前も早く忘れて新しい恋人を見つけろ」
「兄さん……」

その時料理が運ばれてきて兄はそのまま無言になって食べ始める
彼が言ってる事もわからないわけでもなかった
ナナは複雑な感情を抱えたまま同じように食事に手をつけ始めた


* * *

食事を終えて店に送ってもらったのだが車の中でも無言だった
車を止めた兄は降りようとしたナナに「忘れろ」と一言だけ告げるとそのまま走り去った
彼女は唇を噛むとそのまま店の中へと入っていく
いつもなら何か一言ぐらい声をかけてくれるナナが、そのまま通り去っていく事に気がついたコーディは彼女の後を追いかけた
ナナはエプロンを握り締めるとそのまま床へと崩れ落ちていき堪えていた感情を溢れさせた
気がついたコーディは慌ててナナに駆け寄る

「どうしたんだ!?兄と喧嘩でもしたのか?」

彼女は泣きじゃくりながら首を横に振る
コーディはそんなナナを優しく抱きしめながら嗚咽をしながら泣く彼女の背中を優しく撫でる
彼に甘えてナナは全部話した

そろそろ潮時なんじゃないかと、心のどこかで思っていた
こんなにも連絡がないのだから兄の言うとおり自分の事などどうでもよくなっているのだと
だけどクリスと過ごした日々を言葉を、嘘だと信じたくない


黙って聞いていたコーディは胸を痛めながらナナが泣き止むまでずっと抱きしめていた


130314


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