第10話 Two people were cornered


授業が終わったナナは急いで荷物をまとめていた
すぐにでも家に帰ってビリーの安全を確認しなければ、追い詰められているのなら彼と一緒に逃げる準備をしなければならない
友達のリサが彼女の所へやってきた

「ねぇナナ、これから遊びに行ってもいい?彼氏見たいわ」

一瞬だがニヤニヤと笑ってくるリサを疑った
もしかして彼女がワザとこんな事を言ってくるのだろうか?
じっと自分を見つめてくるナナにリサは眉間に皺を寄せた

「何?どうしたの?」
「……あ、なんでもないわ…ごめん、今日はちょっと用事があって」
「そう?早く紹介してよね」

そう言うとリサは立ち去っていく
彼女は何でも話し合える仲なのだが今は誰も信用できなかった
こんな風にするからには犯人はビリーの事と事件を知っている
そしてビリーが実は生きているということももしかしたら知っているのかもしれない

そうなれば彼は今度こそ死刑だ……

泣きそうになる気持ちを抑えながら教室を飛び出す
しかし廊下でピーターが微笑みながらナナを待っていた
あぁ本当にしつこい男だ、と怒りを覚えながら横を通り過ぎようとした

「犯罪者と住んでるのかい?」
「え…!?」
「ナナ…君が一緒に住んでいるあの男は殺人者なんだよ」

どうして知っているのか…
ピーターはナナに悲しそうに眉を下げて言ってきた

「…机の中の写真は…貴方の仕業なの…?」
「…23人の民間人を殺した男だよ?どんな手を使ったのか知らないけど君は騙されているんだよ」

バチンッ!!!

廊下に音が響き渡った
ピーターの頬が赤く腫れる、ナナが彼に思い切り平手打ちをしたからだ
その顔は怒りに満ちている

「彼の事を何も知らないくせに…っ、事件の事なんて何もわかってないくせに…っ知った風な口を聞かないでっ!!!」
「な…っ!!僕は犯罪者から君を救おうとしてるんだぞっ!?僕は正義だっ!ヒーローだっ!!!」
「その正義の味方の警察が…彼を陥れたくせにっ!!!」
「目を覚ますんだっ!!」
「うるさいっ!!二度と私に近づかないでっ!!!!」

ナナはそのまま走り去ってしまう
その背中を見送ったピーターは携帯を手に取りどこかに掛け始める


* * *

家で洗濯物を干し終えたビリーは綺麗な澄み切った青空を見つめる
二度とこんな空を見ることなんて自分にはできなかったかもしれないのだ
そして大切な女ができることも…
もうすぐ昼だ、お腹を空かせた彼女がもうすぐ帰ってくるだろう

「ビリー!!!!」
「お帰りお嬢さん…ってどうしたんだ?」

慌てた様子で帰って来たナナにビリーは首を傾げる
彼の無事を確認した彼女は急いで窓を閉めて鍵をかけるとカーテンを閉めた
次に彼女は寝室に向かうので後を追いかける

「おいおいそんなに慌ててどうしたんだ?」
「荷物をまとめるのを手伝って!この街から出るわよっ!」
「何?落ち着け…ちゃんと説明しろ」
「貴方の事がバレたのよっ!!!!」

大声でナナは言った
ビリーは時間が止まったかのように動かなくなった
そんな彼を置いて彼女は再び大きな鞄をクローゼットから取り出してきて服を詰めていく
動かなくなっていたビリーはベッドに腰を掛けた

「言っただろ?俺といても幸せはないって…」

彼の呟いた言葉にナナは手を止めた
そしてゆっくりと振り返って彼を見つめた

「俺の事件は5年や10年経ったわけじゃない…まだ数ヶ月だ、世間からは完全に忘れられていなかったんだ…23人の人を殺した死刑囚だってな」
「いいから…いいから…手伝って…っ」

どこか覚悟を決めたようなビリーを認めたくなかった
まだ諦めたくなかった

その時パトカーのサイレンが響き渡った



120714


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