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あれからクリス達は何度も署長に話を持ちかけていたが進歩はなかった
周りの人間にも話したのだがみんな何故か彼らの話に聞く耳を持たなかった
喫煙室でクリスは重いため息をつきながら煙を吐き出した
みなどうすれば信用してくれるのだろうか?
証拠がないのが痛い、あの洋館は爆発してしまったから
「お疲れクリス」
「あぁ…」
喫煙室にジルが袋を持ってやって来た
近くの店でサンドイッチを買ってきたらしくクリスに一つ手渡した
焼きたてのパンの香ばしい香りがするのだが煙草の匂いが邪魔をする
灰皿に煙草を押し付けてクリスはサンドイッチを一口かじった
「昼からどうする?もう一度署長にかけあう?」
「いや…きっと同じだ」
首を横に振ってクリスはじっとサンドイッチを見つめる
そういえば初めてナナとデートをした時にもサンドイッチを食べたな、と思い出す
周りにも何人かカップルや家族連れなどがいて町全体が平和で賑わっていた
このまま放っておけばあの光景も見れなくなってしまうのだ
クリスは決意した
彼はサンドイッチを口の中に放り込んで飲み込むと立ち上がった
突然立ち上がった彼にジルは驚いたように彼を見つめた
「クリス?」
「ジル…バリーはどこにいるんだ?」
「え…オフィスだと思うけど……」
そのまま彼は喫煙室を出て行く、ジルも慌てて彼の後を追いかけた
* * *
「本気なのか…クリス?」
バリーとジルは驚いたようにクリスを見つめている
彼は二人の視線を受けてゆっくりと頷いた
そうクリスはアンブレラの調査を進めているうちにGウイルスの存在を知ったのだ
更にこのウイルスを調査するためクリスは一人ヨーロッパに旅立つ事を彼らに告げた
「アンブレラは必ず討たなければならない……だがここにいても埒があかない、俺はヨーロッパに行く」
「一人でなんて危険じゃないか…俺達も一緒に行こう」
「いや…二人はここで「何て言おうと俺は行くぞ」
力強くクリスの肩を掴んでバリーは口の端を上げる
友人の言葉に素直にお礼を言った
そして戸惑っているジルにクリスは口を開く
「ジルはここに残って調査を頼む、後で合流しよう」
「それはいいけど…ちょっと待って……ナナはどうするの?」
「………黙っていてくれないか」
ナナには何も告げずに旅立つというクリスにジルは首を横に振る
しかしそれは彼女だけではない、彼の妹クレアにも告げないつもりらしいのだ
「二人とも巻き込みたくないんだ……ナナには出張に出たと伝えておいてくれ」
「それでいいの…?彼女も連れて行くべきよ」
「駄目だ…絶対に、頼むジル」
彼の固い決意にジルは何も言えなくなり黙って頷いた
クリスは彼女の肩を軽く叩いて微笑んだ
翌日彼はナナに何も告げずにヨーロッパへと旅立った
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