第8話 Hidden Truth


好きな男に抱かれるのはなんて幸せなのだろうか
情事を終えた二人はそのままベッドに横たわっていた
ナナはビリーに腕枕をしてもらいながら彼の体に引っ付くようにして天井を見つめていた
同じようにビリーも彼女の頭を撫でながら天井を見つめて口を開いた

「俺は…海兵隊にいたんだって話をしたよな?」

ナナはうん、と答えた
それを聞いてまたビリーは口を開いた

「ある作戦中の時だった……罪もない民間人23人を上司と部下が殺したんだ」
「殺した…?」
「あぁ、俺もその場にいて止めようとしたんだが無理だった……」
「……その事件、聞いたことあるわ……まさか、貴方…」

数ヶ月前のニュースの内容がナナの頭の中に思い浮かんだ
民間人23人が殺された事件を、そして逮捕された男の名前も…
ナナは驚いてシーツで胸元を隠しながら起き上がりビリーを見つめる

「…そうだ、俺の名前はビリー・コーエンだ」
「ビリー・コーエン……」

やはり聞いたことのある名前だった
彼が23人の命を奪った凶悪犯……だが彼から聞いた話と世間で報道された話が食い違う

「警察に言わなかったの?上司と部下がやったって…」
「奴らは丸め込むのが上手いからな…俺の話なんか聞いてくれなかった」
「そんな…」

なんて汚い人間達なのだろうか
ビリーにはなんの罪もないのに何故彼が殺されなければならないのだろう
しかしここでまたふと思い出す
確かビリー・コーエンは死んだと報道されていたはずだ
その事をビリーに尋ねてみた

「……あぁ、そうなのか…レベッカがそう報告してくれたんだな」
「レベッカ……?」
「まぁ、ちょっとした知り合いだ」

女性の名前にナナはかすかに反応したが、ビリーの反応を見る限り恋人というわけではなさそうだ
彼は手を伸ばしてナナの頬に触れた

「俺に抱かれたこと……後悔してるか?」
「……そんな事ないわ、確かに世間から見たら貴方は凶悪犯なのかもしれない。だけど本当は23人の人の命を救おうと行動したし、ピーターだって追い払ってくれた……私にとって貴方はヒーローよ」
「ナナ……」

初めて名前を呼ばれた
ドキリ、と心臓が鳴る。ビリーは彼女の後頭部に手をまわして自分の方へと引き寄せて唇を重ねた

「ずっとここにいていいから…っ、側にいてビリー」
「……あぁ」

ビリーは力強くナナを抱きしめた
もう自分は世間から死んだことになっているのだ、二人を邪魔する人間は誰もいない



* * *

「あの男…どこかで見たことがあるぞ…」

一方ピーターは父親の部屋に入ってファイルを漁っていた
彼の父親は警察官で昔の事件の新聞記事などをとってはファイルに保存していたのだ
ピーターは必死に自分の記憶を辿りながらファイルのページを捲っていく
そして1枚の記事が目に入った
"23人の民間人を殺害"と書かれた記事が、そしてビリーの顔写真も写っていた

「ビリー・コーエンなのか…あの男…死んだんじゃなかったのか…?」



120711


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