好きだ大好きだそれだけだ


いつもの蕎麦屋で昼食を終えた斉藤は人のよい笑みを浮かべて金を払った

「ごちそうさまでした」
「どうも、また来て下さいね」

店を出た斉藤は再びパトロールへと戻る
大勢の人々でにぎわっている町、だが人が多いからこそトラブルが起こりやすかったりするものだ
できれば何事もなく仕事は終わって欲しいものだがそうもいかなかった

「は、放してください!」

女の声が聞こえた
その声に斉藤の身体がピクリ、と反応する。すぐに声のする方へと向かえば一人の女が数人の男たちに囲まれていた

「だぁから、俺らが荷物運んでやるって言ってんだよ」
「そんなお腹じゃ大変だろ?親切に言ってやってるのによぉ」
「本当に大丈夫ですから…放っておいてください!」
「てめぇ…調子にのり「はい、そこまで」

女を叩こうとした男の手首を斉藤は掴んだ
警察の登場に男たちは動揺し、女はほっとしたような表情になった
手首を掴まれた男は慌てて弁解しようとした

「お、俺らは何もしてないぜ…ただこの妊婦さんが荷物持って大変そうだから手伝おうとしただけで…」
「でも、今手をあげようとしたでしょ?――私の妻に」
「え!?アンタの女!!?いででででっ!!

力強く手首を掴まれた、次の瞬間ニコニコと微笑んでいた笑みが一変して鋭い瞳に変わった
そして男の手首を離せばその男は地面に倒れた

「失せろ、今度手を出したらただじゃ済まんぞ」

ギロリ、と睨みつけられて男たちはその場を去っていく
残された斉藤の妻――なまえは安心して斉藤の側に駆け寄った

「一さん、助けてくださってありがとうございます」
「今日は早めに帰るから買出しには行くなと言っただろう」
「…でもそれじゃあ一さんの夕食が遅くなってしまいますし…」
「……阿呆」

ふぅ、とため息をつくと斉藤はなまえの手に持っている食料の入った袋を片手で持ってもう片方の手でなまえの手を握って歩き出した

「一さん!?」
「家まで送る」
「え!?いいですよそれよりお仕事は…」
「お前一人の身体じゃないんだ、もう少し気を使え阿呆」

あぁ本当に優しい人だなとなまえは目を細めた
そう今自分のお腹の中には斉藤と自分の子供の命が宿っている、子供ができたと言った時の斉藤の嬉しそうに目を細めたときの顔が忘れられない
買出しに行くな、と言ったのも自分が荷物を持つため…こうして手を握ってくれるのも自分が転ばないようにと気遣ってくれているのだ

ぎゅう、と彼の腕にしがみついた

「一さん…大好きです」
「ふっ…」






妊婦の奥さんの荷物持ってあげる旦那って見ていて微笑ましい
誰そ彼
120421


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