幸せの重みを噛み締めて
事件の事後処理に追われてようやく片付いたのは次の日付になった頃だった
家に帰れる、と上司に挨拶をして警察署を出た斉藤はシトシトと聞こえる音に気がついて眉間に皺を寄せて暗い空を見上げた
「雨か…」
今日の天気では晴れだと言っていたのに、傘など当然用意していない
警察署から家までは20分ほどだ。濡れながら帰るしかない、としかし煙草が濡れてシケるのはかなり痛いが文句も言っていられなかった
数分歩いたところで斉藤は人の気配に気がついて刀を構えるがその人物の正体に気がつくと刀から手を放した
「一さん…」
「何故ここにいる」
傘をさした妻のなまえがそこにいた、夫を迎えに来た様子だが斉藤はお礼を言うまでもなく来たことに怒っている様子だった
「えっと…一さん傘持って行ってなかったなって…思って、それで迎えに来ました…」
「俺はそんな事は頼んでいない、夜は家から出るなと言ってるだろう」
「でも…」
何か言いたそうな様子のなまえの横を斉藤は黙って歩く
なまえは表向きは藤田五郎の妻だ、だが元新撰組の斉藤一の妻でもあるのだ。斉藤に恨みを持つ輩は多い。その矛先は斉藤だけではなく妻のなまえを狙ってくることだってあるのだ
斉藤はなまえを心配して夜は家から出ることを禁止しているのだ
「帰るぞ」
「あの…傘を…」
「俺を迎えに来たって割には俺の傘がないようだが?」
「あ…」
今自分用にさしている傘しか持っていない事になまえは気がついてしまった、というような顔をした。その様子に斉藤はくくっ、と喉の奥で笑うとそのまま歩き出す
すぐに自分の傘に入るように斉藤の横に行き傘を差し出すが彼は断った
「2人で入ったらお前も濡れるだろう、俺はいい」
「けど一さんが風邪を引いてしまいます…」
「大丈夫だ、そんなにヤワじゃないんでね」
そう言うと雨の中を先に歩き出す彼をなまえは見つめていた
数歩歩いて彼女の足音が聞こえないことに不審に思った斉藤は振り返って目を見開いた
傘を閉じて立っているなまえがそこにいたのだ
「何をやってる阿呆、風邪を引いたらどうするんだ」
「私だって同じ気持ちです、一さんが傘に入ってくれないのなら私も濡れて帰ります!」
強い瞳で言うなまえに斉藤はため息をつくと、彼女が持っていた傘を開いた
そして肩をグイッと自分の方に引き寄せた。斉藤に随分密着する形になるがなまえが少しでも濡れないようにと彼なりの気遣いなのだろう、その夫の優しい気遣いがまた嬉しいのだ
「まったく…お前には敵わんな」
幸せの重みを噛み締めて
(帰ったら一緒に風呂だ、わかったな)
(!うっ……はい)
奥さんに弱い斉藤さんw
自慰
120329