まどろみに消えた涙


いつもの様に夕食を作って夫、斉藤一の帰りを待つ妻のなまえ
最近は特に大きな事件もないはずだから帰りが遅くなることはないだろう
そう考えていると玄関の戸が開く音が聞こえた、帰ってきたのだ
すぐに玄関へと向かった

「おかえりなさ……!?」

笑顔でそう言ったのだが帰ってきた斉藤の姿を見て言葉を失った
たまには制服に血の痕をつけて帰ってきたことは何度かある、だが今日はボロボロで帰ってきていたのだ
斉藤はそのまま靴を脱いで奥へと進んでいく

「一さん!?どうなさったのですか!?」
「なんでもない、風呂は沸いてるか?」
「えぇ…でも先に傷の手当をしないと…っ!」
「どちらにしろ血を流さんといかんだろ…心配するな」

安心させるようになまえの頭にぽん、と手を置いた
その手が離れた後、彼女はぎゅう、と自分の着物の裾を掴んで斉藤の後を追いかけた
そして彼の背中に抱きつく。力強く抱きしめた

「なまえ…?」

自分の背中に顔を埋めている彼女がこちらを見上げた、泣き出しそうな不安そうな瞳で自分を見つめている
斉藤はふぅ、と息を吐くと抱きしめている彼女の小さな手に自分の大きな手を重ねた

「昔の宿敵と少しやりあっただけだ…」
「宿敵…?」
「あぁ」

斉藤の頭の中には剣心と先程戦ったときの姿が思い出されていた
久々に熱くなれた戦いだったのだが大久保の邪魔が入り決着は着けられなかったのだが

「一さんをここまでする方なんですね…でも無事に帰ってきてくれてよかった…一さんが死んだら私…」
「阿呆」

彼女の手を離させて両手でなまえの頬に優しく触れた

「俺はお前を置いて先には死なん、俺が死ぬときはお前も一緒だ」
「一さん…」

こくり、となまえは頷いた
どちらかが先に死んで置いていくなど許されない、死ぬときは二人一緒だと…
彼女の頬から手を離して風呂へと斉藤は向かう

「飯の準備を頼んだぞ」
「ご飯の前に傷の手当ですからね」
「ふっ…そうだな」

ニヤリ、と笑って斉藤は答えた






剣心と戦ってきた後の斉藤さんの話です。初斉藤…難しい。でも好きです
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120322


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