テクニカルラヴァー


「戦に出られるんですってね」

自身の屋敷の庭で鍛錬をしていた左近に声がかけられた
左近が誰だと、そちらを見れば縁側に一人の女性が無表情で立っていた
彼女の名前はなまえ、石田三成の妹だ
左近は苦笑しながら己の武器を肩に担ぐ

「誰から聞いたんです?」
「兄上です、いつ帰ってくるかわからないとか…」

彼女は三成の妹というだけあって性格もそっくりだった。普段から無表情で冷静に事をこなす、三成から信頼されていることもあり左近の恋人でもあった
普通の男性なら彼女がいつも無表情で頭も賢い為、扱いには大変苦労するだろう
だが左近だけはなまえの扱いがうまかった

「なるほど…それであんたは心配して来てくれたってわけですか」
「!べつに心配なんてしていません。貴方にはお願いがあって来たのです」
「お願い…?」

左近が尋ねるとなまえは顔を少し俯かせた

「…兄上をちゃんと守ってください」
「…あんたに言われなくても殿はちゃんと命に代えて守りますよ。言いたいことはそれだけですか?だったら帰りな」
「!!ま、まだ…あります」
「へぇ…なんですか?」

それは…となまえは考える。左近はなまえの表情がだんだん変わってきたことに喉の奥で笑った、本当は兄の事だけで自分に会いに来たのではない。左近のことだって気になって会いに来たし、いつ帰ってくるかもわからないので一緒に過ごしたくて来たことぐらい左近は見抜いていた。だが彼女はそれを素直に言えないのだ、いつも何かと理由をつけては自分に会いに来る
左近は少し意地悪をしてやろうと思った

「ところでこの間女郎屋の女に会ったんですよ」
「!ま、まさかそんな所に…」
「安心してください、町で偶然会っただけです。…でだ俺が戦に出るって聞いたら女たちは口々に「無事に帰ってきてね」って泣きつかれましてね。可愛いと思いませんか?」
「っ…!?」

明らかになまえの表情が変わった。それが普通の女性の反応なのかもしれない
だけど自分はこの性格だ、泣いて抱きついて「行かないで」など言えない
以前城の中を歩いていると兵士と女官が話しているのを見た。その二人は恋仲のようで戦に行く彼に「必ず帰ってきてね」と声をかけているのを見た、彼もその彼女の言葉を受けて頷くと力強く抱きしめていた


「ま、あんたは俺の事心配してないんでしたよね。気が済んだら帰ってください」

左近は立ち上がって再び鍛錬を始めようとしたときだった
背中に温かい感触を感じる、そうなまえが背中から彼を抱きしめていたのだ

「死んだら許しません……だから無事に帰ってきてください」

なまえはそう言うと赤くなった顔が左近にバレないように急いで屋敷から出ていった
残された左近はしばらく呆然となっていたが、やがて大きな声で笑い出した

「まったく…あんたには敵いませんよ。なまえ殿」




(兄上…私らしくない事をしてしまいました)
(どうしたのだ?顔が赤いぞ)



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三成の妹で同じくツンデレ設定です。この兄妹のめんどう見れるのは左近ぐらいしかいないと思います。それにしても左近いい男です
淑女
120122


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