寂しさと愛しさは紙一重


己の獲物を何度も上に振りかざしては下ろす、それを何度も繰り返していれば自然と筋肉がつくのも当たり前
毎日かかさずに鍛錬をしている男―島左近。ふぅ、と息をつくと獲物を壁に凭れかからせる様に置いて自分は縁側に腰を降ろした
空を見上げれば雲一つない青空が広がっておりとても綺麗で平和だ

「左近さま」

彼が休憩したのを見計らってなまえは握り飯とお茶を彼の所に持っていく
彼女は女官だ、いつも左近が鍛錬を終えた頃に食事を持ってきてくれる、彼女が持ってきてくれることが日課になっていた

「いつもすみませんね」
「いえ…鍛錬お疲れ様です」
「ん…うまい」

握り飯をおいしそうに食べる左近になまえも自然と笑顔になる、食べ終えた左近が湯飲みを手に取ればちょうどそこに1枚のさくらが入った
二人が上を見上げれば満開の桜が目に映った

「ほう…これはなかなか」
「綺麗ですね…今年も満開に咲いてくれたみたいです」

しばらく桜を見つめていた二人だがふと、なまえが口を開いた

「また戦に出られるんですよね…?」
「……えぇ、今度はちょっとばかし長くなるかもしれません」
「そう…ですか……」

寂しそうな顔をするなまえ、自分は戦場に行くことができずにただ無事に帰ってきてと祈るばかりだ。だが行かないで、と彼に言うこともできない
そうなれば自分ができることは笑顔で彼を見送ることだ

「左近さま…」
「なんです?」
「……また、来年も一緒に桜を見てくれますか?」

その言葉に左近は「いいですよ」と笑って答えた。これで心残りはない、彼はきっと帰ってきてくれる一緒にまた桜を見る約束をしてくれたのだから
左近は笑顔になったなまえの小さくて白い手を握った、握られたことにドクン、と小さく心臓が鳴った

「来年だけとは言わずに…この先もずっと一緒に見ていただけませんかね」
「さこ…んさま…」

言葉が詰まってしまった
左近はふと、優しく微笑んでいる
涙が零れた

「嫌ですか?」
「いいえ……私も…この先もずっと左近さまと一緒に桜を見たいです……お側にいたいです…っ!」
「えぇ居てください、ずっと死ぬまで俺の横で」

なまえの肩を引き寄せて左近は彼女を優しく抱きしめた






切なくなってしまった…
自慰
120512


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