反噬に揺らぐ逃亡者


この世界に飛ばされて姉の王異とずっと憎んでいた相手…馬超と組むことになった
王異と妹のなまえにとってはそれはとても屈辱だった…


馬超は一人酒を楽しんでいた
宴が終わってみんなが寝た頃に彼は一人で酒を飲んでいる様子だった
そんな彼を狙っている者がいた、懐に小刀を隠していつ飛び掛ろうかと機会を伺っている……
それはなまえだった
一族を彼に滅ぼされた、その恨みが消えることなど決してない
ああやって酒を飲んでいる姿を見ているだけでも許せない

「駄目だよ」

ビクリ、となまえの身体が反応した
彼女に注意したのは馬超の従兄弟である馬岱だった
まったく気配を感じなかった、彼が気配を隠すのが上手かったのかそれとも自分が馬超に気をとられて気づかなかっただけなのか…
なまえは懐から手を抜いた

「君のお姉さんは若と手を組むことに承諾したでしょ?君が裏切ってどうするの?」
「……姉は許しても私は許してない」
「復讐することをやめろとは言ってないよ、でもそういうことは元の世界に戻ってからでいいでしょ?」

あぁ、イライラする
彼が馬超の従兄弟だからだろうか?わかったような口で言うのはやめて欲しい
ここにいる仲間達もそうだ

「大切な人たちを殺されて…復讐に生きるのは悲しいことだってここにいる人たちは言うけれど……大切な人を失ったことがないからみんなそういう風に言えるのよ」
「そうだね…そうだと思うよ。でも君が負った悲しみを他の人間にも味あわせるのかい?」
「っ…!」

馬超が死ねば、悲しむ人間は大勢いるだろう
そして自分と同じように恨みを抱いて生きる人間が増える
だけど馬超を殺す生き方しか学んでいない自分達が復讐をやめてこれからどう生きろというのか

「この際復讐はやめたらどうかな?」
「あら、さっきと言ってることが違いますね」
「まぁ矛盾してるけど…やっぱり復讐に生きている君の姿って悲しいからねー」
「……これ以上言うなら馬超だけでなく貴方も殺すわ」

そう言うとなまえも寝ようとその場を去ろうとしたときだった
身体がビクッ、と反応した。馬岱の方を見てみれば先程まで人のよい笑みと優しい瞳は消えており無表情で冷たい瞳になっていた

「君が若を殺すってんなら……俺も君を殺すよ」
「…っ!?」
「今の君には若を殺すなんてできないよ、俺に背後を取られても気づかないようじゃね」

さっきのはやはりこの男が勝っていたのか、となまえは思った
近寄ってくる馬岱に彼女は一歩一歩下がっていく、とうとう壁際に追い詰められてしまった。彼の手が自分に伸びてくるぎゅう、と力強く瞳を閉じた

ぽんっ

だが彼はなまえの頭に優しく手を乗せた

「え?」
「話はここまで!さぁ明日も早いんだし、そろそろ俺は寝るよ!おやすみー!」

いつものひょうひょうとした態度に馬岱は戻っていた
彼はなまえにおやすみの挨拶をしてその場を去っていく、その背中を見つめながら彼女は思った
本当に恐ろしいのは一族を滅ぼした馬超ではなく馬岱なのではないかと…
だけど残されたなまえはおもしろそうに口角を上げた

「貴方の首は私がもらうわ…馬岱」






馬岱は普段の姿からは想像できないんですが若の事はとても大切な人だと思うんです、なのでその大切な人に手を出されるとなると、いつもひょうひょうとした感じの馬岱が誰よりも怖くなるんじゃねぇの?とか想像してできた話ですが意味不明でしたねww
亡霊
120421


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