しばらく横に居ろ


「ははうえ〜ははうえ〜!」

着物を丁寧に畳んでいたなまえの元に息子―氏政が泣きながら入ってきた
どうしたのかとなまえが両手を広げてやればすぐに胸に飛び込んできた

「どうしたの氏政」
「うぇええぇっ!甲斐おねえちゃんがいじめるぅうう!!」
「まぁ…」

そういえば数時間前に甲斐姫と一緒に遊んでもらうといって外に出て行ったのだがどうやら彼女に泣かされたらしい
だが泣かされたといってもワザとではなくきっと何か理由があるのだろうけれど…

「あー!いた氏政様!」

そうこうしている内に甲斐姫がやって来た
氏政はすぐになまえの後ろに隠れた

「甲斐…何があったの?」
「あ…氏政様が嫌がるあたしに毛虫を押し付けようとしてくるんでちょっと怒っただけなんです」
「それは駄目よ、氏政」

ちゃんと謝らないと、と背中を押されて氏政は甲斐姫に謝った
そして謝った後また泣き出してなまえに抱きついた

「うえええぇぇっっ!!」
「うるせぇぞ、さっきから」

襖が開かれて不機嫌全開の氏康が奥から現れた
寝ていたところを氏政と甲斐姫の声に起こされたらしい、肌蹴た胸板に手を入れながら煙を吐き出し氏政の襟首を掴んで自分の方に向かせる

「ちちうえ…」
「たくっ…どうしててめぇはそんなに泣き虫なんだ」
「うぇ…」
「泣くんじゃねぇ、男だろ」

父親に怖くなってなまえに頼ろうとするが当然氏康がそれを許そうとしない

「いつまでも頼るんじゃねぇ、なまえはずっといねぇぞ…俺もな」
「氏康様…」
「泣いてばかりじゃ好きな女も守れねぇぞ、相模の獅子の子だろ。牙生やしてもっと噛み付いて生きろ」
「ちちうえ……ぼくつよくなる!ちちうえみたいに!」
「いい子だな」

氏康は息子の頭を撫でると甲斐姫に子守を押し付けて部屋から追い出した
二人を追い出すと氏康はすぐになまえの膝の上に頭を乗せた
彼女は微笑んで夫の頭を優しく撫でた

「珍しいですね…貴方があんな風に言うなんて」
「いつまでもビービー泣かれても困るだろ、それにお前を独り占めするのもな」
「まぁ…」

どうやら氏康は泣き虫の息子になまえを独り占めされて妬いていたらしい
くすくすと彼女は笑った

「何笑ってやがる」
「いえ…でも今だけですよ、あの子がなついてくれるのは」
「……ふん、そうかい。なら昼間はあいつに貸しといてやる…ただし」

氏康はなまえの後頭部に手を回して自分の方にぐいっ、と引き寄せた

「夜は覚悟してもらおうか」

それは夜の相手を毎晩させられるということ…
その意味を理解するとなまえは顔を真っ赤にさせた







氏康さんマジで好きですvv
淑女
120214


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