幸せの一歩先を行く


「うーん…っく…!!」
「頑張って!頭が見えてきたわもうすぐよ!!」

大きく足を広げて手すりの部分をしっかりと掴みながら大量の汗を流してナナは力んだ
今一つの命がこの世に生まれようとしているのだ
最後の力を振り絞ればようやく呻き声が聞こえて看護師が赤ん坊を抱き上げてすぐにナナに抱かせた
小さな身体を抱いてじっと見つめた
赤ん坊はすぐにナナの胸に吸い付いた

「元気な男の子よ」
「…男の子…」

元気に生まれてきてくれた我が子にナナはホッとして頭の天辺にキスをした


* * *

数時間後
1台の車が病院の前に止まる、レオンはすぐに扉をロックすると走って病院の中へと駆け込んだ
ナナがいる部屋の扉をノックすれば中から返事が聞こえた
ゆっくりと扉を開けてみれば彼女のベッドの横に我が子が眠っていた

「レオン…来てくれたのね」
「当たり前だろ、仕事をすぐに終わらせて駆けつけてきた……出産に立ち会えなかったのは残念だが」

よく頑張ったなとレオンはナナの額にキスをしてから寝ている赤ん坊に目をやった
そっと割れ物にでも触れるかのようにナナは赤ん坊を持ち上げてレオンの腕へと移した
妊娠がわかった日から今日まで会えるのをずっと楽しみにしていた

「男の子だって…」
「そうか…」
「きっとレオンに似てかっこよくなるわ」
「女に振り回されるような男にならなければいいが…」
「あら、私はレオンを振り回した覚えは無いわ」

少し頬を膨らましているナナにレオンはふっ、と笑った
ヘレナやエイダの事を言ったつもりなのだが、それが彼女にもわかったのだろう
自分以外の女の話が出て少しヤキモチを焼いているのかもしれない
赤ん坊をベッドの上に優しく降ろして口を開いた

「そうだな……君は俺に振り回されてるな」
「え…」
「一々俺の言葉や行動にドキドキして頬を赤く染めて…調子が狂ってるもんな」

そんな事無い、とは言えなかった
出会った頃から彼にはいつもドキドキさせられて反論できなかった
レオンの大きな手がナナの頬に触れる
唇が重なる、深く――…
ようやく唇が離されてそのまま抱きしめられた

「今日はよく頑張ったなナナ」
「レオン……」

優しい言葉にナナは嬉しそうに目を細めて思った
この人と結ばれて、子供が産めてよかったと





131027
誰そ彼


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