隊長、BSAAやめるってよ


「ここのステーキすごく美味いんですよー隊長どれにします?」

お気に入りのステーキの店に上司であるクリスを連れ来てたピアーズは腹を空かせながらメニュー表を開いてクリスに見せる
だが何の反応もしない彼に気がついてもう一度声をかけた

「隊長?」
「ピアーズ……俺はBSAAをやめる」



* * *

BSAAの会議室にクリス率いるアルファチームの面々が集まっていた
彼らはピアーズから大事な話があるから死んでも来い、と言われて集まってきたのだ
扉が開かれてピアーズが鋭い目つきで入ってくると中央の椅子に腰をかけてゆっくりと深呼吸をすると口を開いた

「皆…緊急事態だ。隊長がBSAAを辞めると言っている」
「「「「え!!!?」」」」

クリスが辞めるという言葉に皆が動揺を隠せないでいた

「辞めるってどういうことだ?」
「そうか……ナナさんとついに結婚か!!」

隊員の結婚、という言葉に皆がそうか!と納得して嬉しそうに声を上げる
だがピアーズはきゃあきゃあと騒ぐ隊員たちに眉間の皺を寄せると拳を思い切りテーブルに叩きつけた
先ほどまで騒いでいた隊員たちは一斉に静かになった

「違う…隊長はナナさんに裏切られたんだっ!!!」
「「「「「!!!!」」」」」

クリスの説明によるとこうだ
ある日彼が街を歩いていたときに偶然ナナを見つけて声をかけようとしたのだが彼女の横に男が一緒に並んで歩いていたのだ
しかも二人が出てきた店はブライダルの店だった

「店員に聞き込みをしたところ二人は指輪のサイズなど選んでいたそうだ」
「そんな……」
「ナナさんは隊長の事を遊んでいたのか…!?」
「……信じたくないがそうとしか思えない」
「隊長はどうしてるんだ?」
「……ショックで寝込んでる」

大の男が仮眠室のベッドの上で頭からシーツを被って引きこもっていた
クリスにとってナナはとても大切な女性だった
大切な人に裏切られたクリスの気持ちがわからないわけでもなかった
そんな中チームの中でも唯一おとなしいフィンが口を開いた

「待ってください…まだナナさんが裏切ったと決めるのは早いのでは…」
「何を言ってるんだフィン!指輪のサイズも選んでるんだぞ!!」
「あんなに優しいナナさんが隊長を裏切るとは思えません…だって僕たちの天使なんですよ?」
「……そこまで言うなら徹底的に調べようじゃないか」

ピアーズの提案に隊員たちも力強く頷いた


* * *

「ふんふーん♪」

鼻歌を歌いながら料理をしているナナの家に数人の男たちが忍び寄る
玄関のインターホンが鳴る。包丁を握っていたナナはそれを置いて返事をすると玄関へと向かう、その隙にピアーズ率いる男たちが窓の鍵を開けて進入すると見えないところに盗聴器やカメラを仕掛けた

「戻るぞ!GO!GO!」

銃を構えながら入ってきた窓へと再び戻り、外へと出て行く
一方部屋に戻ってきたナナはいたずらでインターホンを鳴らされたようで首を傾げながらも再び料理を始めた

「こちらピアーズ、仕掛けは成功した。繋がりそうか?」
「了解………成功だ!部屋の音声も映像も映ったぞ!」

本部のパソコンに料理をしているナナの姿と声が無事に聞こえる事を確認するとピアーズたちはその場を去った

仕掛けてから数日後
モニターの前にピアーズたちが座りじっとナナを観察していた
特に彼女に変わった様子はなかったのだが彼女の携帯に電話がかかってきた

『もしもし……あ、ジョン!』
「ジョン…?こいつが新しい男の名前か?」
『次の日曜日?うん、全然大丈夫よ。楽しみにしてるね』
「デートの約束したぞ!?」

これはもう決定的な証拠だ、とみんなが肩を落とした
大好きなクリスの為に今までやってきたことがすべて水の泡だったのか
天使だった彼女は悪魔だったのだ
そんな隊員たちの元にクリスが来ていた。彼も今の会話を聞いていたようだった

「隊長……」
「……次の日曜日全員出動だ」
「え…?」
「…ナナを殺して俺も殺してくれ」

殺すという言葉に全員が息を呑んだ
すかさず隊員たちがクリスに詰め寄った

「何を言ってるんですか隊長!!」
「…ナナにフラれたら俺はもう生きていく価値がないんだ。だからといって裏切られたままも辛い…だから殺す……最低だが」
「隊長が死んだら俺たちはどうなるんですか!!」
「ピアーズお前にすべてを任せる……みんな、今までありがとう」
「……うわあああぁあぁんんんんんっっっ!!!!」

隊員たちは一斉に泣き出してクリスに抱きついた


* * *

ジョンと一緒に歩いていたナナの前にクリスが立ち塞がった
突然現れた彼の姿に彼女は目を見開いていた

「クリス!」
「ナナ……」
「すごい偶然だね、今日は仕事休みなの?」
「あぁ……」

チラリとクリスはジョンの方を見た
彼はニコニコと微笑みながら二人の様子を見つめている
人の女を取っておいてどうしてこんな顔ができるのか、とクリスは怒りに満ちていた
それは遠くの建物からライフルを構えているピアーズや、あちこちに私服姿で立っている隊員たちも同じ気持ちだった

「ナナ…一つ聞いていいか?」
「え?」
「俺の事……愛しているか?」

最後に聞きたいんだ……君の口から

「……ふふっ、恥ずかしいけどもちろん。クリスが一番好きよ」
「彼がナナの言ってた恋人かい?」

ジョンが口を開いたのでナナは目を細めて頷いた

(コイツ…いい所で…!!)
「あ、クリス初めてだよね?紹介するね。私の従兄弟のジョン」
「初めましてジョンだ」
「……従兄弟?」

恋人ではなく従兄弟だと紹介されたジョンにクリスも含めた隊員たちはあっけにとられた
しかしクリスはすぐに口を開いた

「け、けど指輪を選んでいたんだろ!?二人で!!」
「ジョンが結婚するの…彼女にどれを選んだらいいかわからないから私が付き合ってあげてたの」
「そ、そうなのか……」

全てがクリスの誤解だとわかった
呆然としている彼にナナもジョンも首を傾げていた
そろそろ行かなければ、と言うジョンにナナがクリスに口を開いた

「ごめんねクリス、そろそろ行くね」
「あぁ……」
「……今度また一緒におでかけしようね」

頬にキスをしてナナとジョンはその場を去っていく
すぐにクリスの元に隊員たちが駆け寄ってきた

「ピアーズ……こういうときどんな顔をしたらいいのかわからないんだ」
「隊長…………笑えばいいと思いますよ」
「そうだな…!」

大声で笑い出す男たちに街の人たちは目を見開いていた


BSAA

タイトルは例の映画からです、観た事ないですけど
130901


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