もう戻るから花を咲かせて待っていて


「ピアーズ何をしているんだ!ここを開けろ!!」

隊長、あなたはわかってるはずだ

「二人でここを出るんだ!時間はまだある!」

こんな俺にもう時間なんてない

何度も扉を叩いて叫ぶクリスを見つめ、レバーを押した
自分の名前を叫んでいるクリスの姿が段々と遠くなっていく
周りがどんどんと崩れていく、ふらふらとした身体を支えながら自分が守り続けていた憧れの存在でもある彼が無事に辿り着く事を願った
そして恋人の存在を思い出してはは、と苦笑した
必ず隊長を連れて帰ると約束した。もちろん自分も一緒でなければならないとナナに言われていた
だけどどうもその約束は守れそうになかった
クリスがきっと自分の死を彼女に伝えてくれるだろう
BSAAにとっては名誉の死だ。だがナナにとっては名誉でもなにもない

「……泣きじゃくるだろうな」

泣き虫で寂しがり屋で…しっかりしているかと思っていたら意外と抜けていて
何度自分が支えてやったか
これからはもう自分が支えてやる事はできない
どうか自分よりも素敵な男と出会って、その男が彼女を支えてやって欲しい

大きな地響きが聞こえて倒したはずのハオスがクリスの脱出ポッドに向かっていっている
ピアーズはありったけの力を込めてハオスに向けて撃ち放った


* * *

高台の上から先ほど摘んだ花を海に向かって投げた
ゆらゆらと揺れながら浮かんでいる花にナナは目を細めた
すると後ろから抱きしめられて見上げると彼女は嬉しそうに微笑んだ

「何やってるんだ、せっかく摘んだのに」
「ふふっ…何だか投げたくなっちゃって、また摘めばいいじゃないたくさんあるんだし」

抱きしめられた腕から一度離れると改めて彼に向き直ってナナは抱きついた
そうすれば左手で力強く抱きしめられた
そう、彼女を抱きしめている男はピアーズだ

「…海に花投げるのって…映画とかであるけどあれって誰か死んだときとかじゃないか?俺は死んでないぞ」
「一度は死にかけたくせに……ねぇピアーズどうして戻って来れたの?」
「……そんなの決まってるだろ。ナナの側にいたいと思ったからだ」

ピアーズはそのまま泣きそうになっている彼女の唇を塞いだ





2013年7月1日はピアーズの追悼の日ですね…ということで…本当はBADENDにしようかと思っていました
あのままピアーズが死んで数年後という話になりヒロインの横には新しい彼氏がいて一緒に彼が眠る海に花束を投げて終わる…というのもありました
けれどこういうのもたまにはいいですよね
約30の嘘
130701


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