グンナイスイートシープ


半年間連絡の無かったアイツが帰ってきた
ただ帰ってきただけじゃなく、一回り成長して帰ってきた




「よぉ」

うるさいバイクのエンジン音が消えて聞き覚えのある声にナナはそちらを振り向いた
見ればサングラスをかけていて一瞬誰だかわからなかったが自分と同じ傭兵仲間であるジェイクが帰ってきたのだった

「ジェイク…!?」
「久しぶりだな、お前生きてたのか」
「あ、当たり前じゃない!あんたこそ生きてたのね」

戦車並みに丈夫だからな、と言いながらジェイクはバイクから降りて一つの小さな小屋へと入っていく
ナナも同じように彼の後を追いかけて小屋へと入った

「今までどこで何してたの?」
「…お前、あの栄養剤打たなかったんだな?」
「当たり前じゃない、私はあいつらと違って簡単に何でも信用しないわよ。まぁ他の奴等は打っちゃって化け物に変わっちゃったけどねー……あんな妖しい女簡単に信じて馬鹿みたいよね。他人なんか簡単に信じちゃいけないのに」

ね、とジェイクに賛同を求めるように言うナナに彼は何も答えなかった
いつもとどこか違う…と彼女は思ったがすぐに口を開いた

「まぁ無事で帰ってきたんならいいわ、また二人で組んで稼ごうよ!今から仕事があるんだけどジェイクも来るでしょ?B.O.W倒すのに1体1000ドルで…」
「仕事ならさっきしてきた」
「え…?そうなの…で、報酬は?」

べらべらとしゃべっていたナナに向かってジェイクは赤いリンゴを投げる
それを受け止めた彼女は眉間に皺を寄せて彼を見た

「何よこれ…」
「リンゴだ、いい報酬だろ?」
「え…これが!?ちょっと…お金はどうしたのよ」
「もらってねぇ」
「はぁ!?これじゃあタダで仕事したようなもんじゃない……ジェイクあんたどうした……」

ジェイクを問い詰めようとしたのだが彼の姿はすでになかった
一体どこに行ったのか、と思っていたところ小屋の屋根がミシッと音を立てた
どうやら彼は屋根の上へと上ったらしい
半年振りに会ったというのに彼は変だ、とナナは内心混乱していた
信じられるのは金だけ、お互いそう言うところで気があって一緒に仕事をしてきたのに
今の彼にはその様な姿が見られない。目も随分と優しくなったような気がする
何があったのか彼を問い詰めようと屋根に続くはしごを上ろうとしたときだった

――Twinkle Twinkle Little Star……
「え……」

今まで聞いたことの無い歌にナナは呆然とした
そして今までに無いぐらい穏やかな表情で彼はその歌を口ずさんでいたのだ

「何よ、その歌……わたしそんな歌しらない……」

自分と一緒にいたときはそんな綺麗な歌を歌ってくれたことなどなかったのに
そしてその歌を歌っているとき彼はここではないどこかを見ている


その日からわたしは、その歌が大嫌いになった
彼の心がここではない別のどこかにあるから





成長したジェイクにたじたじのヒロインちゃん、ジェイクにとってシェリーは色々と自分の人生に影響を与えてくれた人物だし忘れられない人になるんでしょうね…
約30の嘘
121220


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