ただその一言に愛を感じた


大好きな彼の背中につかまって、気持ちのよい風を感じながら目的地へと向かっていく
バイクの後ろ側はずっと乗っていると尻が痛くなってしまうが、これも少しの我慢だ

「見えたぞ」
「わぁ……っ」

ジェイクに言われてナナは思わず声を上げる
海が見えた、しかも夕日がもうすぐ海に沈みそうになっていてそれがまた綺麗に見えた
彼女が海に連れて行って欲しいと言ったのでジェイクは仕事を終わらせて急いで帰ってきた。そしてそのままバイクに彼女を乗せて海へと連れてきた
近くに止めるとナナはすぐに砂浜へと走り出す

「ジェイクもこっちに来てー」
「…わかったよ」

ナナに呼ばれてジェイクは渋々そちらへ向かう
彼女が何か見ているので覗き込めば綺麗な貝殻がそこにあった
小さな手でそれをすくい、綺麗と小さく呟いた
ロマンチストな男なら「お前のが綺麗だ」とか言うのだろうが、自分にはその様な台詞など言えない
背筋が寒くなってしまう
彼が考えた自分らしい行動といえば……

「きゃっ!冷たい、何するのジェイク」
「ボーッとしてるからだろ」

彼女の顔に水をかけてジェイクは意地悪く笑う
お返しにと水をかけるのだがあっさりと交わされてしまう
悔しくてジェイクの身体を叩こうとするのだがそれも敵わず脇に手を入れられて持ち上げられてしまった

「ジェイク…」

持ち上げられたナナがそのまま唇を寄せられたのでキスをしようとしたときだった

パシャッ

「え…?」
「あーごめんね!君達があまりにも素敵なカップルだったからつい、ね」
「誰だてめぇ」

ジェイクはナナを地面に降ろすとそのまま男に詰め寄った
詰め寄られた男は自分の懐から一枚の名詞を取り出した、ジェイクはそれをひったくる様にして取る
男はどこかの雑誌のカメラマンだった

「カメラマンなんですか…」
「そう!今度の雑誌の特集で素敵なカップルって特集をやるんだけど、君達の写真使ってもいいかな?」
「え…私達の!?そ、そんな私なんて可愛くないし…もっと他に素敵な子が…」
「えー!そんな事ないよ!君ものすごく可愛いよ。彼氏だってかっこよくて背も高いし…モデル事務所からスカウトだって来るかもしれない、君だってこれをきっかけに男性ファンがついて有名になれるかもしれないよ」

ジェイクは男の言葉に身体をピクリと反応させた
そして眉間に皺を寄せると男のカメラを取り上げて海に投げ捨てた

「あ、君!何するんだいっ!!?」
「お断りだバカ野郎」
「ジェイク!」

男に中指を立ててジェイクはナナの手を引いてバイクの止めてある場所へと向かう
自分の商売道具を壊されてカメラマンの男は残念そうに声を上げていた
ナナは自分の腕を引くジェイクにむっ、とした顔をすると彼の手を振り払った
振り払われたジェイクが彼女の方を見れば両手で頬をパチン、と軽く叩かれた

「いてぇな…」
「ジェイクったら駄目じゃない、どうしてあんな事したのよ」
「勝手に写真撮ったからだ」
「ちゃんと謝ったじゃない…写真ぐらいで「嫌なんだよっ!!!」

ジェイクの大声にナナは身体をビクリとさせた

「お前…雑誌に載ってもよかったのか?」
「え?」
「冗談じゃねぇぜ!他の男にお前を見られるのなんか死んでも御免だっ!!」
「あ……」

ヤキモチを妬いているのだ、とナナは思った
自分が雑誌に載ればそれを見た男が彼女に惚れることだってあるかもしれない
ジェイクはそれが嫌だったのだ
彼の気持ちがわかるとこちらまで頬が赤くなってしまう、ジェイクも照れているのか己の手で口元を覆っている

「ご、ごめんね…」
「…こんな事言わせんじゃねぇよ」
「うん…」

大きな背中に抱きついてナナは嬉しそうに微笑んだ



(心配しなくても私はジェイク一筋だよ?)
(っ…!)


ジェイクは若いから嫉妬もしやすいだろうなーと、でもその分彼女の事をものすごく大切にしそう
誰そ彼
121111


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