本当の意味など伝わらない詩


病院の前に一台の車が止まる
若い男が車を降りると続けて女も降りて来た
彼女は寂しそうな瞳でその病院を見上げた。「こっちです」男にそう言われて一緒に建物の中へと入っていく

病院の受付で面会するために説明を色々と聞いて最後に名前を書くことになった
書くのに一瞬戸惑ってしまった

「どうかしましたか?」
「あ、いえ……」

なんでもないです、と答えてペンを走らせた
ナナ・レッドフィールド、この病院に入院しているのは彼女の夫のクリス・レッドフィールドだ
そして彼女をここまで連れてきてくれた若者はクリスの部下のピアーズだった
ピアーズに促されてナナはクリスのいる病室へと向かう
彼に会うのが怖い、記憶を失くしていると聞いたからだ。知らないと否定されるのが恐ろしかった
クリスがいる部屋をノックして入ればベッドの上でぼーっとしている彼の姿が見えた

「クリス隊長」

ピアーズに声をかけられてクリスはこちらを見ると、ナナをじっと見つめて口を開いた

「…誰だ?」
「!」
「っ…貴方の奥さんですよ!!」

やはりクリスは自分の事を覚えていないようだった、思わず口元を押さえるナナの姿を見たピアーズはクリスに怒鳴るように言った
だが怒鳴られたクリスはそれを気にするまでもなく自分の妻だと聞いて少々驚いたようだった

「俺の…妻…?」
「……そう、ナナよ」
「ナナ………」

名前を呟いて何か考えているようだったが彼は覚えていない、と首を横に振った
再びピアーズが口を開こうとしたのだがナナはやめて、と目で訴えた
訴えられた瞳にピアーズは黙り込んだ。彼女はクリスに口を開いた

「また…明日来るから…」
「……あぁ」

無理して笑うナナはそれだけ言うとピアーズと部屋を出て行く
二人の背中を見送ってクリスは頭を抱え込んだ




「ナナさん!いいんですか!?」
「……仕方ないわ…無理させてはいけないもの…」
「けどもう少し粘れば思い出したかもしれない…!」

ピアーズはそこで口を閉じた
ナナの頬に涙が伝っていたからだ、彼の心臓が大きくドクッと音を立てた
こんな時に不謹慎かもしれないがとても綺麗で美しかったのだ
泣いているナナの背中へと手を伸ばし優しく慰めるように上下に擦った

「ピアーズ……?」
「…ナナさん、俺は…ずっと……!?」

バシッ!!

その時病室にいたはずのクリスがピアーズの手を振り払った
ナナもピアーズも驚いて目を見開く、クリスはピアーズを睨みつけた後自分の手を見た
何故今彼に手を上げたのだろうか?ナナに触れているところを見て何故か怒りが込み上げてきていた。クリスを探していたらしい看護婦が病室へと彼を連れて行く
クリスに何か声をかけようとしたがナナは何も言わずにその背中を見送る

「クリス…どうしたのかしら?」
「……」

ピアーズには何となくわかっていた
自分がナナに好意を抱き触っていた事を記憶を失っていながらも感じ取ったのだろう
叩かれた手を見つめて考える

「そういえば…さっき何て言おうとしたの?」
「……俺はずっと貴方の側にいます。隊長の側にもいます……だから俺は諦めません、って所です」
「ピアーズ……」

彼の優しさにはナナ嬉しそうに微笑んだ
そして彼女ももう泣かないと誓うと、明日もまた様子を見に来ようと決意した





バイオ6発売前に書いたので色々と変かもしれませんが……クリス⇔ヒロイン←ピアーズです。部下が上司の妻に惚れるっていうのが何だかツボでして、クリスが記憶を失ってから毎日お見舞いに行くヒロインとピアーズ。でもクリスの前でヒロインは絶対に涙を見せなくて車の中でピアーズの前だけで涙を見せるヒロインをピアーズはずっと慰めていく内に自分の中でヒロインに対して何かしらの感情が浮かんできてその内欲しいって思い始める。んでクリスが失踪してから行動開始……黒ピアーズの誕生ですwwピアーズで裏書くとしたらそんな感じです。ピアーズは黒+ヤンデレが似合います。何にせよバイオ6早く!!です

約30の嘘
120920


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