きみの愛は苦いんだ




自宅に戻ったクリスは急いで部屋の中に入ってナナの姿を探す
しかし電気はついておらず人の気配など感じられなかった
唇を噛んで彼はソファーへと腰をかける

「…ナナ…」

どうして彼女は話してくれなかったのだろうか?
不満や不安があるのなら遠慮なく話してくれて構わないと言ったのに
クリスはイライラしながら煙草に火をつけた
そして何となくだが彼女の行き先を思い浮かべる
どこか友達の家か、ちかくの酒場にいるかもしれない
彼は灰皿に煙草を押し付けると再び車のキーを握り締めて家を出た



酒場で一日を過ごしたナナはキャリーバックを持って店を出る
朝日に目を瞑り、ガラガラと音を立てながら道路を渡る
酒場でマスターにクリスの愚痴を聞いてもらいながら出した結論は実家に帰ることに至った
確かに両親も居るし、子供の世話だって正直一人でやれる自信はない
色々考えて空港へと向かった

「……さよなら」


*****

空港に着いたナナは出発時間が来るまでロビーで過ごしていた
周りを見回していると新婚カップルだろうか?楽しそうに話しながらパンフレットを見つめている
そういえば自分も結婚したときはあんな時期があったな、と思いながらコーヒーを飲む
そして一人のサングラスをかけた男がナナの目の前に現れた

「探したぞ」
「クリス……」

サングラス越しでわからないがクリスは怒っている様だった
そのまま彼はナナの手を引いて自分の車へと乗せた、車を走らせている間も無言だった
そして行き着いた先は我が家だった
部屋の中に入ってクリスはサングラスを外すとすぐに口を開いた

「何故出て行ったんだ?」

彼の質問にイライラしてきた、ナナもイラついた態度で彼に答える

「貴方の無神経さにイライラしたの」
「…不満や不安があったら話してくれって言ってるだろ」
「貴方が話を聞いてくれたことがあったの!?」

怒鳴って言うナナにクリスは驚いたように目を見開いた

「いつも仕事ばかりで…家に帰ってきても私とは会わない時間だし……話したくても話せないじゃない…っ!仕事ばかりで私の事はほったらかし……っ!そんなんでいつ不満や不安を言えっていうの!?」
「……!」

とうとう泣き崩れたナナにクリスは自分が悪いということに気がついた
結婚した当初は早めに家に帰るようにしていたし、会話だってたくさんしていた
なのに段々と仕事は忙しくなりナナも何も文句を言わないのでそれに甘えていた
その結果夫婦の間に溝ができてしまったのだ
クリスは泣き崩れたナナを優しく抱きしめた

「すまなかった…ナナ……俺が悪かった」
「うっ…ふぅ…っ!」
「ごめんな……」

泣きじゃくりながらナナはクリスの背中を抱きしめた


*****

「で?ナナはどうしたの?」
「…子供が産まれるまで実家で暮らすことになったよ」

BSAAのオフィスでジルに聞かれてクリスは答えた

これからどんどんとお腹が大きくなってきてナナ一人では何かと生活する上で大変になることも多いだろう、クリスは常に側にいてあげることはできない
実家に居れば両親が何かとめんどうを見てくれるし、クリスとしても安心だった

「側にいてあげるって選択はできないのね…」
「…この仕事をしている以上それは無理だ、だけど子供が産まれたらまたこっちに戻ってくる。その時は……できるだけ側にいてやろうと思う」
「そうね……まぁ、離婚とかじゃなくてよかったわ」

もう泣かせちゃ駄目よ、とジルはクリスに釘を刺すとそのまま出て行く
残されたクリスは頷いて作戦の準備を始めた






クリスがこの仕事をしている以上結婚したらこういうこともあるんじゃないかなってお話です。ちょっとクリスが冷たい男みたいになってしまいましたね…
自慰
120610


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