25


「ここが大学ね…」

ナナは人に道を尋ねながらなんとか来ることができた
大学と言ってもいくつもある、先程のエリーからは何という名前の大学か聞けなかったし、医学のある大学というのだけは聞いていたのでそれを手掛かりに探すことに決めた
ナナシは門に入ってふと、周りを見る

「………あそこは」

頭の中に映像が蘇る。寒い冬の日だ、壁に貼られてあるたくさんの数字
その中からドキドキしながら自分の数字を捜すナナともう一人の男……

「……映像が出たってことは、ここに何かあるのね…?」

ナナは痛みがなくなった頭を抑えるのをやめて建物の中へと入っていく
廊下を歩いてみるが誰とも出くわさない
今は授業中なのだろうか?とりあえず適当に教室の中に入ってみる
本人は適当だったが足は何故かわかったように進んでいた

「ここは……」

見覚えがある、とナナは思った
たくさん並んである椅子にナナは座り、前を見る

私……ここに座って授業を受けていたような気がする…

「誰かいるのかね?」

突然聞こえた声にナナはそちらを見た
白い髭を生やしメガネを変えた初老の男性がこちらを見ていた
ナナは慌てて立ち上がった

「勝手に入ってすみません…」
「君は……ナナかね?」
「え?」
「ナナなんだろう…?心配してたんだぞ…」

またもや自分を知っている人物に出会った
その男性は目に涙を浮かべていた
ナナはその男性の表情を見て今から告げることに胸が痛んだが、決意を固めて話すことにした

「ショックを受けるかもしれませんが正直に話します。私……記憶がありません」
「!?」
「ですが…この街に来てから何か思い出そうとしてるんです、知っていること何でもいいから私に話してくれませんか?」

ナナの言葉に教師は衝撃を受けてしばらく黙り込んでいた
だがやがて顔を上げ頷いた

「私の知る限りでいいなら話そう……1996年に君はこの大学に入学した、そして君は医学の勉強をしていたんだ」
「医学…」

確かに私は人の手当の仕方など何故だか自然と出来ていた
その腕を買われてヴィンセントの元で勉強していたけれど…

「どうして私は医学の勉強を?」
「…幼い頃両親が病気で亡くなったのがきっかけだったみたいだよ…自分と同じような思いをさせるのは嫌だと…」

そうだ…思い出した

ナナの頭の中に今まで忘れていた両親の顔が浮かび上がった
あの優しかった両親が死んだ日のことも思い出された
だけどまだ完璧に全部思い出されたわけではない

「あの……私がラクーンシティにいたって言うのは本当ですか?」
「いた……かどうかはわからないけれど"行った"のは確かだと思うよ。恋人がどうとかで…」

恋人…
エリーも同じことを言っていた

「あの…その恋人を貴方はご存知ですか?」
「あぁ…毎日君を大学まで送っているのを見たことがあるからね」
「誰ですか…?その恋人は…!?」

ナナの心臓が早く鳴るのが感じた

「レオン・S・ケネディだよ」
「ケネディさん…?彼が…まさか……だって彼が好きなのは私にソックリな人なんでしょ!?」
「?何を言ってるのかわからないが……レオンと君が恋人だったのは当時の人間はほとんど知っているよ。君しかありえない」
「え?」
「だって……幸せそうだったからね。君たちは」

教師はそう言って微笑んだ

守ってくれると言ったのも、好きだと言ってくれたのも
彼が私の恋人だったから……

ナナは唇を噛んだ
そして立ち上がり教師を見た

「ありがとうございます先生……大学のことと両親の事は思い出せました……だけど彼との思い出だけは取り戻せないんです……どうしたらいいですか?」
「……君たちが住んでいたアパートがある、そこに行ってはどうかな?」

教師は住所が書かれた紙をナナに渡した
それを受け取るとナナは頭を下げて教室を出ていった


110724

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -