15


「待たせたねナナ」

扉の外で待っていたナナはヴィンセントを見て顔を明るくさせた

「あの人の手当は済ませたの?」
「あぁ…タフな男だよ。すぐに済んだ…今日は帰ろうか」
「えぇ……」

ヴィンセントに肩を掴まれてナナは歩き出す
ちらり、とレオンがいる部屋の扉を見てからだったのだが


車に乗り込みヴィンセントは車を走らせる
ナナはずっと黙り込んでいたその様子に気がついたヴィンセントは声をかける

「どうかしたのか?」
「え…?」
「…さっきからずっと黙り込んでいる」

その言葉にナナは少し考えてから口を開いた

「いえ…さっきの…ケネディさんだっけ?彼の恋人っていうのが気になって…だって私に"ソックリ"なんでしょ?」
「……そうらしいな」

そっくりとか似てるではなくナナがレオンの恋人だ
なんてことは言いたくはなかった
彼女に辛いことを思い出させたくはないというのもあるが、自分の元から離れるのが嫌だった

「ナナ…まだその"指輪"持ってるのかい?」
「あ……」

ヴィンセントはナナの首から下げてネックレスにしている指輪の事に触れた
この指輪は彼女を見つけた時から身に付けており離そうとしなかった
ナナはぎゅ、と握りしめる

「僕があげた指輪は気に入らなかったのかい?」
「そんな事ないわ…貴方のはちゃんと指につけてる。……けどこの指輪だけはどうしても捨てられないわ。私の記憶の手掛かりになるかもしれないし誰かこれを私にくれた人が見つかるかもしれない…」

ナナの話にヴィンセントは黙って聞いていたが内心腹が立っていた
その指輪もきっとレオンからのものだろうと思っているからだ
ヴィンセントは車を止めた

「いいかいナナ…僕は君を愛しているよ。記憶がなくてもだ、これからは僕と過ごした記憶だけでいいとか思ってくれないのかい?」
「ヴィンセント…んっ」

キスを交わす二人
ヴィンセントは唇を離して再び車を走らせた

ヴィンセントは私をとても大切にしてくれてる
正直記憶がなくても今はとても幸せ
だけど本当に過去の記憶を取り戻さなくても後悔しないのだろうか?
何かとても大切な事を忘れているような気がする……


「レオン。頼まれたとおり調べておいたわ」
「ありがとうハニガン」

レオンはハニガンから渡されたレポートを受け取る

ヴィンセント・グレイ(28)父親の名前はジュード
大学を出てすぐに父親の病院で医者となって活動し始める
過去のラクーンシティの事件で数少ない生存者たちの心のケアなどを経験

「おそらくナナがラクーンシティの生存者であることを隠したのも彼ね」
「だから生存者リストにナナの名前がなかったのか」
「でもまぁ他にもそんな人はいるだろうし…珍しくはないのかもしれないわ」

ナナが生きていた
それはとても嬉しいことだった
だが残酷なことに俺と過ごした記憶が一切ない
それにあの男の言ったとおり今の俺と一緒にいれば危険な目に合わせるかもしれない
このまま彼女の幸せを願って…俺は離れるべきなのか?

そして彼の脳裏にナナと過ごした最後の夜のことをを思い出した
彼女とした結婚の約束。守り続けること…

「…資料ありがとうハニガン」
「えぇ…レオン何か吹っ切れたわね…」
「あぁ…大事なことを思い出したよ」

レオンはハニガンに微笑んで部屋を出た


翌日
ナナはヴィンセントと一緒に来ていた
どうやら彼女もヴィンセントの助手として特務機関に入ったらしい
レオンはコーヒーを煎れているナナに近づいた

「おはよう」
「!え…あ、おはようございます…」

戸惑うナナにレオンは微笑んだ

「昨日はすまなかったな」
「い、いえ…」
「改めて自己紹介だ。俺はレオン・S・ケネディ、エージェントとしてここにいる……それから…俺は君に惚れている」
「!!」

レオンの告白にナナは驚いた顔をする


恋人がいようと関係ない
俺はナナが好きなんだ
記憶がないなら取り戻せばいい、戻らないならまた新しく作っていけばいい
君が俺を好きではないのなら惚れさせる
覚悟しておけよ?ナナ


奪うのではない、取り戻す。それがレオン
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