02


「それじゃあ先生さようなら!」
「さようなら、気を付けて帰るんだよ」

女子生徒の声とそれに応える女性の声にレオンは目を覚ました
体を起こしてシーツをどける
そういえば頭痛が酷くて医務室で寝ていたことを思い出した
カーテンが開けられて一人の女性が入ってくる。彼女はこの学校の保健医だ
レオンが起きたことに気づいて微笑んだ

「気分はどうだい?」
「なんとか頭痛は収まりました…」
「そうかいそりゃよかった!もう下校時間だし帰りなさい」
「はい…」

レオンはシーツを整えてカーテンの向こう側へ出る
そこでふと気づいた
あの少女が居ないことだった

「先生…あの女の子は?」
「ん?……あぁナナの事かい?1時間ほど前に帰ったよ」
「礼を言ってないんだが…困ったな、どこのクラスですか?」
「確か3−Fクラスだったと思うよ。明日お礼を言いなさい」

彼女のクラスと名前を聞けただけでも今日はいいとするか、とレオンは帰ることにした


翌日
3−Fクラスへとレオンは向かう
教室の入口でナナの姿を探すが見当たらない、今日は欠席だろうかと考えたがもしかしたら医務室にいるのかもしれないとレオンは足を進めた
思ったとおり医務室に来てみれば彼女がいた

「やぁ」
「ん?あ、あなた昨日の…ケネディ君ね」
「レオンでいい。昨日はありがとう」
「わざわざお礼を言いに来てくれたの?私大した事してないわよ」
「いや、世話になったからな」

レオンはそう微笑んで彼女の向かい側の椅子に座る
ナナは読んでいた本を閉じてレオンに向き直る

「そういえば自己紹介してなかったね……私ナナ・ギルバート。3−Fクラスよ、よろしくね」
「あぁよろしく……ところで何の本を読んでたんだ?」
「ん?あぁ…これね……」

レオンはナナの目の前においてある本を指さす
彼に聞かれてナナは本の表紙をレオンに見えるようにする
それは医学系の本だということがわかった

「医学…?」
「そう、私将来人の命を助ける仕事がしたくて」

ナナはそう言ってふと、目線を下に下げた
先程までの明るい笑顔とは逆になってしまっていた

「私……父も母も病気で亡くしてるの。その時の医学では救えないって言われて、死ぬのを待つしかなかった。幼い頃の私は何もできなくて唇を噛み締めて黙ってみているだけだった……だから両親が死んでから思ったわ、私と同じような思いはさせたくない、私と同じような思いをしている人たちだっているはず……そうなる前に私は助けたいの」

彼女の言葉を聞いてレオンは目を見開いた
自分と似ている状況、目指しているところは同じなのだと
ナナはすぐに笑顔を取り戻した

「あ、ごめんね…なんか暗い話になっちゃって…」
「いや…俺も同じような者だからな」
「え?」
「…俺も警察官になりたいんだ。両親が殺されたから……同じような思いをする人がいなくなるように一人でも多くの人を救いたいってな」
「……そうなんだ、でも悪くないわ」

ナナは微笑んで立ち上がる
そろそろ休み時間が終わるからだ、レオンも同じように立ち上がった
二人で揃って医務室を出る

「卒業まで……後数ヶ月ね」
「そうだな……」

寂しそうな瞳をしてナナが呟く
そう、後数ヶ月もすれば高校を卒業してそれぞれの道へと進む
せっかく、同じものを目指すナナと会えたというのに

「なぁ…」
「ん?」
「また……医務室に行ってもいいか?」
「え……」
「あそこは静かだしな、勉強もはかどりそうだ」
「え、えぇ!いいわよ、全然来てくれても構わないわ」

ナナはレオンの医務室に来る理由を聞いて少しガッカリしている自分がいることに気がついた


110509

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -