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あのまま突っ立っていたら二度とナナと会えないような気がした
だから気がついたときには親父からナナを奪って、軽い体を抱き上げて
無我夢中で走った


学校から逃げ出したダンテとナナは森の中へと逃げ込んでいた
ダンテはナナの手を握って離さなかった、それはもちろんナナも同じだった
温かくて、大きくてとても安心する

「…ここまで来れば大丈夫だよな?」

ダンテが後ろを振り返る
後ろにはもちろん誰もおらず、緑の視界が広がるだけだった
無我夢中で逃げたためここがどこだかわからなかった

「にしてもふざけてるなあの校長、なんでナナだけ退学なんだよ」
「…仕方ないよ。私謹慎中にも関わらず男子寮に入ったんだもん」
「そんぐらい、いいじゃねぇか犯罪犯した訳じゃねぇし……とにかく俺はゴメンだ。ナナがいないまま学校生活を過ごすなんてよ」

ダンテの言葉に嬉しさを感じる
だが彼女の心の中に引っかかるモノがあった
それは両親たちの悲しそうな瞳だった。大切に育ててくれた両親を裏切った
その事がどうしてもナナの中で引っかかっていた

「でもさ…またこれで捕まったとしても俺も退学になるかもな」
「ダンテ……」
「いや、俺はその方がいいけどな。ナナといられるから」

申し訳ない、といった瞳で見つめるナナにダンテはふ、と微笑む
そしてその体を抱きしめた

「……どこにも行かないでくれよナナ」
「……うん」

ナナもダンテの体を抱きしめた


二人でしばらく森の中を彷徨っていると、やがて建物が見えた
それはどうやら廃墟となった教会らしくボロボロだった
とりあえずそこで二人は休む事にした
まずはダンテが先に扉を開ける、開けるときに古いのもあってかギギギ、と音がした
中は外からとは違って少し綺麗だった
もしかしたら誰か掃除に来ているのかもしれない

「教会…か、まだ使えるのにもったいねぇな」

ダンテが教壇の方に近づきふっ、と埃を払う
そしてナナの方を見てニッと笑うと

「今からここで結婚式しねぇか?」
「えぇっ!?」

驚くナナの腕を掴んで引き寄せる
そして二人で教壇の前に立った、ナナもおずおずとダンテの腕に自分の手を絡めた
ダンテが一つ咳払いする

「俺たちは式をあげられねぇ…誰も認めてくれねぇ……だったら二人で式をやろう」
「ダンテ……」
「ナナ。貴方はダンテを愛する事を誓いますか?」

ダンテに瞳を真っ直ぐ見つめられる
真剣な瞳に何も言えなくなるが、コクリと頷くと

「誓います」

それを言ってからナナは涙を流す
ダンテもその言葉を聞いて嬉しそうに微笑むと

「俺もナナを愛する事を誓います」

神に誓いをたてた二人
ダンテは涙を流すナナの頬をそっと優しく撫でる
そして二人は神の前でキスをした


「家はさぁ…やっぱり一戸建てがいいな」

誓いをたてた二人はそのまま床に座り込む
ダンテはナナに膝枕をしてもらいながら、彼女を見上げながらポツリと呟いた
彼の髪を撫でていたナナはクスリと笑う

「なぁに、もう家の話?」
「そうだよ、やっぱり住むんなら大きい家でのびのびと暮らしてぇじゃん。それで子供とかものびのびと育てるんだ」

子供、と聞いてナナは少し驚く
ダンテはニコニコと笑いながら続ける

「俺とナナの子供なら絶対かわいいって、俺子供と一緒に風呂入ったり一緒に寝たり……色々してぇな」
「私も…子供に色々とかわいい服とか着せたいなぁ」
「あぁ……あ!その前に働かねぇとな、ナナを食わしていかなきゃ」

慌てて思い出したダンテにナナはまたクスリと笑う
そしてふとダンテに聞いてみた

「ダンテって将来何かやりたいことってあるの…?」
「俺?んー…そうだな、音楽がやりてぇ。ロックバンド」

それを聞いてふとダンテの部屋を思い出した
そういえばよく色んな楽器を買ってきてはナナに聞かせていた
たまにうるさすぎてバージルとケンカをしていたこともあったが

そっか……ダンテには夢があったんだ

「でも簡単にはなれねぇだろうなー……」
「大丈夫だよ」

ナナはダンテの手を握った
ダンテは彼女の顔を見る、優しく自分を見下ろす瞳と目が合った

「ダンテなら夢が叶うよ、私信じてる。ずっと応援してるわ」
「ありがとな…俺ナナに一番に歌聞かせるぜ」
「うん…必ず聞くわ」

ダンテと小指を絡ませて約束した
そのままふあっ、とあくびをするダンテにナナは微笑むとそのまま優しく彼の頭を撫でた
すると魔法にでもかかったかのようにダンテは眠りについた


私は何をしているんだろう
両親にワガママを言ってあのフォルトゥナ学園に来た

だけど
その学校で問題を起こし、退学にまでなった
そして知られてしまった私とダンテの関係
悲しい瞳をしていた両親の顔が頭から離れない……

それに……
ダンテまで退学になってしまうかもしれない、私のせいで
本人はなっても構わないと言っていたけどそうもいかない…
ダンテには夢がある、大きな素敵な夢が……
それを壊してはいけないね

「私……ダンテの邪魔してるね」

ダンテの髪の毛をそっと撫でた
くすぐったそうにしている…かわいいな
小さい時にもそんな反応してかわいいと思ってたっけ?
愛しくて仕方なかった

「……ごめんねダンテ」

愛してる愛してる愛してる
それは変わらない
だけど……約束守れないかもしれない
ごめんね


「ん……」

ダンテはふと、目を覚ました
起き上がってうーんと背伸びをする。辺りを見渡してからここが教会だという事に気づく
そしてナナの事を思い出す

「ナナ……?」

側に彼女の姿はなかった
ダンテは立ち上がって教会の中を探し回るがどこにもいなかった
外に出て見るも、どこにも姿はなかった

「嘘だろ…?……ナナ――ッ!!」

私たちは子供だったんだ
大人になって再会したときにはもう姉弟と呼べるようになっていますように
姉と弟と見れるようになれるまで
その時までさようなら


一つのライブハウスが盛り上がっている
そうその中に居る客たちはみんな一人の男の登場を待っていた
その男は控え室で準備をしていた

「今日は初のライブだ!気合入れて行こうぜ!」

ダンテの言葉に他のメンバーたちも声をあげる
それを見てダンテは微笑んだ

あれから数年の月日が流れ俺は19歳になった
結局俺はフォルトゥナ学園で1ヶ月の謹慎を食らった後、そのまま3年間そこで過ごした
ナナがいない学園で3年間……
ナナとはあれ以来会っていない
バージルによればナナはあの後家に戻り、また寮の学校に入り無事に卒業
そのまま大学に行っているらしい

けどナナは一度も家に帰っていないらしい
俺は大学の場所はわからない、教えてもらえない
もう十分に大人になったのにな、結婚できないってわかってるのに…

「ダンテ…、お兄さんが来てるぜ」
「バージルが?」

仲間に言われてダンテは控え室の外に出る
兄がここに来るような性格ではないのに…外に出るとバージルが立っていた

「よぉ!なんだよもしかしてライブ見に来てくれたのか?」
「そんな訳ないだろ…」

バージルの言葉にダンテは苦笑いする
性格が全然変わっていない

「……一応お前に言っておく、"彼女"が見に来たいと言ったから俺はお前の居場所を案内しただけだ」
「彼女…って誰だよ?」
「それだけだ。失敗するなよダンテ」

バージルは用件だけ言うとその場を立ち去った
ダンテがちょっと待て、と叫んでももう彼の姿は小さくなっていった

「なんだよ…?励ましに来たのか…?」
「ダンテ!そろそろ始まるぜ!!」

仲間に言われてダンテは急いで戻った
ダンテの初のライブが始まる


「次で最後の曲だ!……これは俺がある女性の為に作った曲なんだ……」

ダンテはそれを言ってから歌い始める
歌っている時に思い出されるのはナナと過ごした日々、笑顔、声……
すべてが愛しくて仕方なかった存在……
ダンテが歌い終わるとたくさんの拍手が鳴った
それを受けてダンテは笑顔で何度も礼を言う
大体拍手が鳴り止んだ中、まだ拍手の音が聞こえた

ダンテがそちらを見る。心臓がドクリとなった
そこにいたのは間違うはずもないナナの姿があった

「よかったよダンテ!」
「っ……!」
「約束守ってくれたんだね……ありがとう。素敵な歌だった」

ダンテは舞台を飛び降りてナナの元へと駆け寄る
そして手を伸ばして力強く抱きしめた

「ありがとな姉ちゃん……いや、ナナ……っ」






ここまで読んでくださりありがとうございます。3ダンテ?というかまぁ年齢は3ダンテよりは前なんですけど、まぁそれはおいといて……
今回は今までにない近親相姦ものを挑戦して書いてみました。3ダンテで何か連載したいなぁ、と思って思いついたのがヒロイン(姉)の事が好き過ぎるダンテ(弟)っていうのが思いつきました。でも姉弟だから悲恋にはなるだろうな…って本当に悲恋になったんですけども
バッドエンドの長編はジョジョの時を越えて以来ですね。バッドエンドとか悲恋とかすごく切なくなるんですけどなんだか好きなんです私、そういうのが……
ダンテのライブをやるって知ったのはバージルのおかげですよ、バージルはなんだかんだ言いながらも二人の情報提供者になってるんです。バージル全然出せなかったけどこちらもいい弟ですよ、ヒロイン(姉)大好きさ!
この後の二人はきっと仲のいい姉弟としてやっていきますよ。もう大人になったしね…ということです
長い間ありがとうございました。3ダンテ連載完結です
今度は幸せな感じの3ダンテが書けたらいいな、と思ってます


090501

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