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ずっと君を手に入れられる事を待っていた
ようやくその時が来た


「なんとか見つからずに行けたな……」

ダンテは寮の入り口を見ながら安心して呟いた
あれからダンテとナナはネロの協力も借りながら見つからずに寮の入り口に出る事ができた
ネロと二人だけで出る、とダンテに言ったのだが
ダンテは自分の手でナナを逃がしたい、と言って聞かなかった
例え風邪を引いてようが怪我をしてようが自分の女が危険な目に合うのは嫌だった

「後はなんとか大丈夫よ…ありがとうダンテ、ネロくん」
「気をつけろよ……あー……」

ダンテはちらり、とネロの方を見る
それに気づいたネロがため息をついて寮の中に入っていく、自分は今はお邪魔だと気づいたからだ
ダンテはそれを見て小さい声でお礼を言った
そして再びナナの方を見る

「風邪なんて1日で治してやるよ、そしたら明日また学校でナナに会えるしな」
「……ダンテ、その事なんだけど…私3日間謹慎処分なの。学校には行けないの」
「ハァ!?マジかよ……」

ダンテは立ち入り禁止地区に入ったからか、と舌打ちをした
だったら自分に処分を与えてくれればよかったのになんでナナなんだろうと…
そんな事を考えているとナナがダンテに抱きついた

「ナナ……?」
「……変だね。3日間だけなのに、ダンテに会えないと思うとすごく寂しい……」

そう言ってダンテの胸に顔を埋める
彼女のその言葉と行動に嬉しくて思わず顔が赤くなるのもあるし、ニヤけてしまうのもある
ダンテはナナを抱きしめた

「ナナってそんな甘えたキャラだっけ?いつも俺が甘えてる感じだからなんか変だな……」
「長女って結構つらいのよ?甘えたりとかできないから……でも今はすごく甘えたい」
「……そうだな、俺もナナには甘えてほしいかも」

それを言ってダンテは軽く咳き込んだ。それに気づいて慌てて体を離す。そうだ彼は今熱を出しているのだ
名残惜しいがナナはニコリと微笑み

「じゃあ私帰るね……風邪治してね。また3日後……ね」

帰ろうとする彼女の腕をダンテが掴んだ
そしてそのまま引き寄せてナナの唇に自分の唇を重ねた
この時一人の影が見下ろしていた事に気づかずに……


「よかったな、ナナと上手くいって…」

食堂でのご飯の時間、隣に居たネロが呟いた
ダンテはそれを聞いて一瞬固まっていたが、やがてニコリと笑うと「あぁ!」と答えた

「……やっとナナを手に入れられる事ができたんだ、長かったけどすげぇ嬉しい。ネロもありがとな」
「は?」
「お前もいてくれたから、俺はナナを手に入れることができたんだと思ってる。ありがとな」

ネロはそれを聞いてふん、と顔を横に向ける
その顔はお礼を言われて照れているのか少し顔が赤い

「べつに、アンタがナナナナってうるさいからな」
「なんだよ照れてるのか?ツンデレか?坊や」
「うるせぇっ!さっさと食え」
「やっぱり照れてるのか、おもしろいな〜お前。あ、そうだ俺もお前とキリエの恋を応援してやるよ」

ぎゃあぎゃあ、と騒ぐ二人に周りのものは何事かと見ていた
ネロはダンテの頬を掴みギュウ、とつねっている
ダンテは痛い、と言いながらもどこか嬉しそうに笑っていた

嬉しくて嬉しくて仕方なかった
だってナナが俺の物になったのだから


「……で、ナナが悩んでいた原因は?」

部屋に戻って、キリエの帰りを待っていたナナはさっそく話す

「……私、ダンテが好きなの」

ドキドキしながらもキリエに自分の想いを打ち明けた
もうこれ以上キリエになんでもない、と嘘をつくことはできない
ダンテへの想いも隠す事なんてできない
引かれても構わない、弟が好きだなんて言われたら誰だって引くだろう
しかしキリエはニコリと微笑んでいた

「話してくれてありがとうナナ……ダンテくんにはちゃんと言ったの?」
「! う、うん……ちゃんと伝えた」

ナナの言葉にキリエは頷くとそのまま立ち上がり窓の景色を見る
キリエの視線の先には男子寮がある

「私ね……なんとなく気づいてた。ナナが元気がないのはダンテくんのことで、ダンテくんはナナが好きなんだって…」

キリエの言葉に目を見開く
彼女には何か力があるのではないかとさえ、思えてしまう

「確かにナナとダンテくんの恋は難しいと思う…だけど私は応援するわ、親友だもの!」
「キリエ……っ、ありがとう…!」

ナナは改めてキリエが友達でよかった、と実感した
泣きながらキリエに抱きつき何度もお礼を言った
その度にキリエはナナの頭を撫でながら励ましてくれた


3日後……

「おはようナナ!」
「おはよう!」

謹慎が解けたナナは教室に向かう
その途中で何人かの友人が彼女に挨拶してきた

「おはようナナ」

ピクリと体が反応した
言われなくったって誰だかわかる
ナナは振り返って見ると、そこには会いたかったダンテがいた

「おはようダンテ」
「へへっ、鞄置いてすぐに来たぜ」

ニコニコと笑うダンテにナナも同じように笑う
毎日迎える同じ朝でも想いを伝えあってからは何か違う
幸せとはこういう事なのかもしれない、とナナは心の中で思った


「なぁ……ナナ。放課後図書室に行こうぜ」

昼休みになり屋上で二人でお弁当を食べていると、ダンテが突然そう言って来た
図書室といえば、ここの学校の図書室はとても広く隠れる事だって可能だ
現に想いを伝えあうまではあそこで時々キスしたりしていた

「3日ぶりにナナにたくさん触れたい」
「ダンテ……」

その言葉にナナもコクリと頷いた
触れたいのは自分も同じだったから、ダンテに望んでいる
たくさん抱きしめて欲しい、キスして欲しい、愛を囁いて欲しい
ナナが頷いたのを見てダンテもまた嬉しそうに微笑んだ

「夏休みになったらさ…帰省が許されるだろ?その時は二人でどこかに行こう、な」
「うん」

夏休み……
その時がすごく楽しみになった


放課後

「ナナ。校長室に来なさい」
「え……?」

担任に告げられて聞き返す前に連れて行かれる
ダンテとの約束があるのに、と心の中で思った
でもすぐに済む用事かもしれない用事が済んだらすぐに向かおうと決めた

校長室に行くとダンテがいた
その横には何故か父スパーダと母エヴァもいた
どういうことなのだろうか?ナナは混乱した状態で周りを見る
それともう一人、ダンテと同じ学年の男の子だろうか?がいた
なにやら空気が変だ、と思ったときだった

「俺は見たんだ!この女が男子寮から出てきた上に、この男とキスしていたところを!」

男の子が突然そう声をあげて言った
ナナはその言葉に体が固まってしまった
あの時の事を見られていた、ダンテとキスをしていたところを……
それを親に知られてしまった……!

「ちょっと待ってくれ、キスといっても家族にするようなキスだろ?二人は仲がいい姉弟なんだ……」
「いいや違う!二人のキスは恋人たちがするようなキスだった、それに入学当初こいつは言ってたんだ!ナナを手に入れるためにここに来たって…」

スパーダがフォローしようと言葉を入れたが、それはすぐにその男の子によって消されてしまった
そう目撃した男はダンテにトップの座を取られてしまった男の子だった
ダンテは男を睨みつけるが、男はふん、と勝ち誇ったような笑みを浮かべている
聞いていた校長はため息をついた

「どうなんだね?ナナ。キスしていたのは本当なのか?」
「ぁ……」

どうすればいいのかわからなかった
ナナが混乱しているとエヴァが駆け寄ってきて彼女の両肩を掴んだ

「違うわよね…?頬にキスしてただけなんでしょ?」
「ママ……」
「違う」

何も答えられないナナの代わりに答えたのはダンテだった
みんながダンテの方に視線がいった

「キスしてた…家族のようじゃねぇ、一人の女として……俺たち恋人同士になったんだ」
「な!何を言ってるんだっ!ダンテ」

ダンテの言葉にスパーダが声をあげる
エヴァも悲しそうな顔をしてナナを見つめている
その瞳を見てナナの中に罪悪感が浮かんだ
話を聞いた校長が口を開いた

「……これは問題です。ナナ、君は謹慎中にも関わらず入ってはいけない男子寮に入った……君は退学です」
「たい……が、く?」
「そしてダンテ。君は1ヶ月の停学だ」
「な……ちょっと待てっ!!」

校長の処分にダンテは当然文句を言う
ナナは退学と言われて呆然となっていた

「俺もナナと同じ罪を犯したんだ!俺も退学にしろっ!!」
「ご両親もそれでよろしいですかな?」

校長はダンテの言葉を無視してスパーダとエヴァを見る
スパーダはコクリと頷いた
そしてナナの方へと来る

「荷物をまとめなさい##NAME1##」
「パパ……」
「ちょっと待てよ!親父!校長に言えよ、俺も退学にしろって!」

自分の肩を掴むダンテにスパーダはギロリと睨みつけた
その瞳にダンテは思わず息を呑んだ

「……お前は卒業するまで帰ってくるな。ナナに会うことは許さない、頭を冷やすんだ」
「っ…!!」

ダンテは唇を噛み締めた
ナナも泣きそうな表情で小さくダンテの名前を呼んだ
もうどうすることもできなかった……

せっかく手に入れたのに……
こんな事で離してたまるかよっ!!

「ダンテっ!?」

ダンテはナナを抱き上げてそのまま校長室を飛び出して行った


090430

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