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ネロは自分の背後に居るダンテの姿をそっと盗み見た

あの後ナナを見つけたダンテは嬉しそうにしながら俺たちのところに帰ってきた
「見つかってよかったわ」とキリエが安心して微笑みナナに微笑んだ
しかし気のせいだろうか?ナナの様子がどこか変だった
落ち込んでいるのか、怯えているかのような表情をしていた
それよりも俺はキリエからの言葉を聞いて混乱している事がある
それはダンテとナナが血の繋がった姉弟だということだ
もしそうならどうしてダンテはナナの事を自分の女だと言うのだろうか?
姉が好きなシスコンにしては度が酷すぎる
彼女の事に関しては鋭い瞳になったりするのは恋人ならそうなるのかもしれない
だけどダンテはナナの弟ってだけだ、なのにどうして……

「なぁ」
「! な、なんだよ」

考え事をしていたネロに後ろからダンテが突然声をかける
ダンテはいつの間にかネロのCD(おそらく部屋に置いてある棚から取った)を手に持っていた

「これ聴いてもいいか?」
「あ、あぁ……」
「さんきゅー」

ダンテはニコリと笑ってCDを取り出し、セットして音楽を聴き始める
ネロはその様子を見つめて聞こうか聞くまいか悩んだ
だけど今の彼なら機嫌がいいから聞いてもいいかもしれない
そういえばあの後二人で帰ってきてから機嫌がいいような気もする

「……なぁ、聞いてもいいか……?」
「んー……?」
「その……間違いならいいんだけど……」

ネロはそれを言った後に黙り込んでしまう
やはりこんな事を聞くのは何か…いや答えが怖いのかもしれない

「アンタと…ナナって姉弟なのか……?」

ガシャンッ!

聴いていたCDの機会が床に落ち、中からCDが飛び出した
ネロはそれを見た後恐る恐るダンテの方を見た

「……キリエが言ってたのか?」
「……あぁ」

ダンテはそれを聞いてふっ、と笑った

ナナはキリエに俺たちが姉弟だと本当の事を言っている
俺はネロに好きな女だと言って、姉弟だとは言っていなかった
俺と##NAME1##は他人だと思わせたかったから、少しでも夢を見ていたかったから……
だけどいずれはどこかでバレるもんだな

「そうだ。俺たちは姉弟だ」

ダンテの言葉にネロは本当だったのか、と苦笑いする
床に転がったCDを拾いながらダンテはそのまま言葉を続ける

「…いつからかな、ナナの事がすごく好きになっていたんだ。幼い頃から一緒に育ってきて綺麗になっていくナナを見るたびに誰にも渡したくないって、自分の物にしたいって思うようになったんだ」

ダンテは幼い頃からの記憶を辿りながら語っていく
小さい頃からずっと暮らして、大きくなって、どんどんと綺麗になっていったナナの姿を思い出しながら
キラキラと輝いて眩しかった

「けど俺は家族とか姉弟とかそんなの関係ないぐらいナナが好きなんだよ。アイツの為にこの学校にだって来た、必死に勉強した。傷つけても泣かせてもアイツを側に置いておきたいんだ…っ!」

ダンテは自分の言いたい事を告げると、ヘッドホンを自分のベッドに投げて部屋を出て行った
残されたネロは何も言えずその場に立ったままいた
ダンテの想いを知ったネロは何も言えなかった

本当は姉弟なんだから間違っている、と言うつもりだった
だけどもし俺とキリエが同じ立場だったらどうするだろうか?
俺だってダンテと同じで多分諦められないと思う
好きで好きで側にいさせたいとも思う
ダンテはもしかしたらナナに嫌われても憎まれてもいいと考えているのかもしれない
それでも彼女が自分の側にいるのだから


「えらいえらい、逃げなかったな」

昼休みになり人気のない屋上に連れてこられたナナ
フェンス越しに追いやられダンテの両腕に挟まれて逃げられないようにされる
目の前を見れば自分を見下ろしながら楽しそうに見るダンテの顔がある

「ダンテ……もうやめよう、こんなの…」
「なんで?」
「ひっ…人が来たら、誰かに見られたらダメ…っ」

ナナの頬にキスをするダンテの体を必死に押すが、所詮適いはしない
ダンテは彼女の顎を掴んでこちらを向かせる

「見られたら見られたでいいんじゃねぇ?そしたら俺たち正式な恋人になれるじゃん…それにナナは俺のだ、って言えるしな」

ダンテはニヤリとそう言って楽しそうに笑う
そして怯えた目をして見つめるナナの唇を舐めると、そのままキスをした


「ネロってばダンテくんと同じ部屋で楽しそうにしてるみたいね」

キリエがクスクスと笑いながら話をする
ナナはぼんやりとしながら話を聞いているかいないのかわからない感じだった

「ナナ?…話を聞いてる?」
「! ご、ごめん…もちろんだよ!」

苦笑いして答えるナナにキリエは少し不安そうな顔をした
そして少し早歩きで先に歩いていく

「キ、キリエ…?ごめんね…」
「……ねぇ、私じゃ頼りにならないかしら?」

先を歩いていたキリエから突然聞かれた
ナナは追いかける足を思わず止めた、先を歩いていたキリエも少し悲しそうな顔をしてこちらを見る

「最近あなた様子が変だわ。ボーッとしていることが多いし、何かあるのかと聞いても何も答えてくれない……一体どうしたの?」
「それは……っ」

すべてはダンテの事、弟と近親相姦しているだなんて言えない
いや全部向こうが攻めてくるのだが、キスしてしまった事は事実だ
それも1回などではない何度もしている
そんな事を大切なキリエに知られたくない……だけど彼女は自分の事を心配してくれている
いっそ全部打ち明けてしまおうか?キリエなら軽蔑したりしないかもしれない、むしろ何かいいアドバイスをくれるかもしれない

「……今夜、部屋で話すわ……聞いてくれる…?」

ナナが恐る恐るキリエに尋ねる
それを聞いたキリエはニコリと微笑んだ

「もちろんよ、ゆっくりでいいからね…」
「っ…ありがとうキリエ」
「さぁ、ゴミを捨てたらさっさと部屋に戻りましょう!」

キリエの笑顔を見てナナは安心した
きっとこの親友なら自分の話を聞いて、何か言い答えを出してくれるだろう


ゴミ捨て場に来てナナはふと、気づいた
学校の裏にある大きな森についてだった
じっ、と見ていたナナにゴミを捨て終わったキリエが気づいた

「どうしたの?」
「……この森ってなんなの?」
「この森も一応学校の敷地にある森よ。でもすごく広くて迷うと危ないらしいから立ち入り禁止になってるの」

キリエの言葉を聞いてそうなの、と答える
そのままキリエと共に教室に戻って荷物を取って部屋に帰るだけなのだが、ナナはふと思った
寮の門限は18時
今はまだ16時だ。それまではダンテと過ごさなければならない時間だ
どうしよう…もしキスしている所を誰かに見られたら私もダンテも学校にはいられなくなる…
帰ろうと足を進めていたナナが足を止めた

「キリエ……」
「? どうしたの?」
「……さっきのゴミ捨て場に忘れ物したみたいだから、先に帰っててくれる?」
「うん…わかったわ」

キリエにそう告げるとナナはさっさと走っていく
向かった先はさっき言っていた森だ
あそこで門限ギリギリまで隠れていればダンテに会わずに済む
明日迎えに来た時には適当に理由をつけて誤魔化せばいい


「そろそろ門限だー!各自部屋に戻りなさい!」

学校の敷地にある噴水のある広場で教師の声が響いた
それを聞いた生徒たちは次々と寮に戻っていく
ここの噴水広場は男子寮と女子寮のちょうど真ん中にある場所だ
そこでいつもダンテはナナをここに呼び出していた。今日もそうだったのだが今日はナナが来なかった

「……逃げたのか?」

ダンテは眉間に皺を寄せて呟く
まぁ言う事を聞かないならお仕置きをすればいいだけだ、とダンテはベンチから腰を上げて部屋に戻ろうとした

「――先生っ大変なんです!ナナがまだ戻ってきてないんです!」

それを聞いたダンテがすぐにそちらを見た
キリエが泣きそうな顔をしながら教師数人に話をしている所だった
ダンテがすぐにそちらに向かいキリエの肩を掴む

「ナナがどうしたって!?どこで消えたんだっ!!?」

必死に聞いてくるダンテを教師たちが押さえつける
キリエは戸惑いながらも少しずつ話し始めた

「……放課後ゴミ捨て場に行ったときに、忘れ物したからってまたゴミ捨て場に戻っていったの……そしたらそのまま……」
「ゴミ捨て場……だな」
「おい、後は先生たちにまかせて君たちは部屋に戻りなさい」

教師一人がダンテの肩を掴むが、ダンテはそれを振り払い走って行った
雨が降り出した、それは一気にダンテの体を濡らした


090427

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